3Mbps定額プランを提供+Fonと提携した理由は?――ワイヤレスゲートの最新戦略MVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2016年05月23日 12時39分 公開
[石野純也ITmedia]

 Wi-Fiの利用を基本にしながら、その間を埋めるための通信経路として、モバイルをラインアップしているMVNOが、ワイヤレスゲートだ。公衆無線LANサービス(Wi-Fiスポット)とセットになった、月額480円(税込、以下同)のサービスを打ち出し、価格の低さが話題を集めていた。そのワイヤレスゲートが3月、速度を最大3Mbpsに制限した月額1680円(音声通話対応は2980円)の料金プランを発表した。同時に、従来のWi-Fiスポット(国内約4万箇所)とFonのWi-Fiスポット(国内外約1900万箇所)をセットにし、これを「Fonプレミアムプラン」と銘打った。

ワイヤレスゲート ワイヤレスゲートの新プラン。3Mbpsの通信が使い放題+FonのWi-Fiスポットが無料で使えるプランが加わった

 ただ、3Mbpsもきちんと速度が出ていれば、あえてWi-Fiスポットを使う人は減ってしまうかもしれない。Wi-Fiを基本にした同社の戦略に、何か変更があったのだろうか。また、同社はデータ通信の利用に特化したMVNOであることを売りにしていた。そのため、音声プランは手掛けない方針だったが、3Mbpsのプランと同時に、音声プランも開始した。こうしたワイヤレスゲートの変化や最新事情について、原田実CAOを直撃した。

動画も安心して定額で楽しめるサービスを提供したかった

ワイヤレスゲート ワイヤレスゲートの原田実氏

――(聞き手、石野純也) まず、速度を3Mbpsまで上げた「Fonプレミアムプラン」を新たに出した経緯を教えてください。

原田氏 もともと、定額という意味では、480円(で250kbps)のプランがありました。これがすごく好評で、ニーズが分かっている方は、毎月の料金を抑えて便利に使える。サービスインしてからも、評判はよかったですね。

 ただ、スピードがちょっと足りない。動画も含めて楽しめて、かつ定額で安心して使えるというニーズもありました。そこで、定額サービスに絞って提供することになりました。提携しているヨドバシカメラさんとしても、お客さまにお勧めしやすい。容量を超えてしまい、追加で払っていたら「こんなにかかってしまった」ということにならないので、安心して勧められます。

―― なるほど。定額を軸に、速度を上げたということですね。3Mbpsという速度は、どのようにして決めたのでしょうか。

原田氏 今時の方に関していえば、やはりYouTubeは必須です。特に若い方からある程度の年齢の方までは、日常で動画を見ています。そこで、YouTubeが問題なく使えるスピードを出そうとしました。一方で、われわれとしては帯域の問題があり、やはり抑えられるところは抑えたい。その結果が、YouTubeが十分見られる「3Mbps」という速度になりました。

―― その速度に対して、実際はどの程度出るようにしているのでしょうか。

原田氏 サービスイン後、お客さまがドッと増えたので、そこの分の帯域はきっちり確保しています。足りなくなれば増強するということも、常に技術部門とやり取りしています。われわれも、他社の定額プランはスピードが出ないという声を聞いていました。そこはしっかりやっていかないと、お客さまの声はシビアになりますからね。

―― 実際に出してみて、反響はいかがですか。

原田氏 以前より、いいペースで伸びています。他社は1GB、2GB、3GBとたくさん出されていますが、プランがありすぎると、どれを選んでいいのか分からなくなります。そういったプランとの差別化もできるので、ヨドバシさんとしても、売りやすいのだと思います。

―― どのような層の方々に選ばれているのでしょうか。

原田氏 今までより広い層に売れています。(MVNOは)普通の方々が使うにはハードルが高いところがありましたが、これだけ認知も上がり、浸透してくると、モバイルの知識がない方も選ぶようになります。複雑なプランより、初めてでも満足して使えて、しかも定額というプランが有効だったのだと思います。

―― 音声プランも出しましたが、プランごとの比率はいかがでしょう。

原田氏 データプランが多いというのはありますね。スピードでいえば、250kbpsのものと3Mbpsのものは、同ぐらいの比率ですね。低速の方は2台目需要や、何かあったときのためというように、いわゆるモバイラーのような方々が選ばれています。このサービスを作ったときも、そういう見方をしていました。

FonのWi-Fiスポットは海外でも利用できる

―― もともと、ワイヤレスゲートはWi-Fiの利用を基本にしていた会社ですが、3Mbpsも速度が出れば、その必要もなくなるような気がします。

原田氏 ただ、Wi-Fiがあった方がいいことはいい。より大きなファイルをダウンロードするというニーズもあるからです。ですから、Wi-Fiを強化するということは、われわれとしては継続的にやっていきたい。本当にWi-Fiが広がれば、ユーザーさんが利用の仕方を選べるようにもなりますからね。

―― そこでFonとの提携につながるのだと思いますが、こちらのメリットをあらためて教えてください。

原田氏 海外に行ったときに使えるのは、1つの大きなメリットです。日ごろ使っているスマホをそのまま持っていき、高いローミングサービスなしで使えます。また、日本国内でもスポットを増やしていくのは、大前提です。今は浅草に力を入れていますが、その後も続々と発表できると思います。

 Fonさん自身も、これまではルーターを販売して、家庭のWi-Fiをシェアするという考えでしたが、それを転換しつつあります。全国のアパマンショップや、塚田農場さんのようなチェーン店との提携も発表されていて、飲食店にも増やしていくようです。Fonさんにエリアを広げる取り組みをしていただければ、われわれのSIMカードユーザーがWi-Fiを使える場所も増えていくことになります。

―― 家庭のWi-Fiをシェアするというのだと、プロバイダーの規約に引っ掛かる問題もあったかと思います。そういう点では、どこかと組んで、一気にエリアを広げていくのはいい考えかもしれませんね。

原田氏 家庭のプロバイダーの話も、ほぼほぼ解決して問題が起きていることはありません。Fonさん自身の戦略として、店舗向けのソリューションを提供したいというのも、そちらに転換している理由です。

―― そちらの方が、広がりは速そうです。

原田氏 広がりやすいのもそうですが、本当に使いたい場所に置かれるということもあります。

Wi-Fiインフラを使って人の流れを解析する

―― Fon以外で、Wi-Fiに関する取り組みがあれば、そちらも教えてください。

原田氏 Wi-Fiネットワークをベースに、いかにマネタイズしていけるかも考えています。銀座や秋葉原では、われわれのWi-Fiインフラを使い、人の流れを解析するというようなこともやっています。どういうふうに街を歩いているのか分析するサービスで、浅草などでは、広告と連動しています。どこに人がいるのかを分析しながら、街頭ビジョンに広告を映すというようなこともやっています。単純にWi-Fiが使えて便利というよりも、その地域の方が活用できるソリューションを作っていきたいと考えています。

―― 銀座も秋葉原もそうですが、ワイヤレスゲートさん自身がWi-Fiを設置しているというわけではないと聞きました。

原田氏 はい。われわれが置いているわけではなく、銀座と銀座商店会をお手伝いしている形になります。秋葉原もそうですね。導入をお手伝いして、広告から得られる利益をみんなでシェアする。そういうビジネスモデルになっています。

―― そういったエリアは、これからもっと増えていくのでしょうか。

原田氏 順次増えていきます。観光地という意味だと、北海道のニセコもありますが、ここはインバウンドがメインで、海外からのお客さまが7割、8割程度です。200カ所、300カ所とWi-Fiを打っていて、今後は広告ビジネスも考えています。

 また、全国の「道の駅」にも、広げています。今は30カ所弱ですが、ここも、随時広げていければと思います。

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