「縛りをなくして、端末とSIMを別に買ってもいい」――ヨドバシカメラに聞く 格安SIMの売り方(1/2 ページ)

» 2015年08月27日 19時38分 公開
[石野純也ITmedia]

 特定のMVNOとタッグを組むのが一般的な家電量販店の中で、ヨドバシカメラの取り組みは異色といえる。同社もワイヤレスゲートとタッグを組み、ヨドバシカメラオリジナルをうたうSIMカードは出しているものの、同社のカウンターにはそれ以外のMVNOのSIMカードが多数並べられている。カウンターも設けられており、MNPの即時転入が可能になっているなど、MVNOの総合カウンター的な特徴を出している。

 家電量販店ということもあり、SIMロックフリー端末の品ぞろえも豊富だ。回線は回線、端末は端末と分離された形で販売が行われており、印象としては欧州などの家電量販店での売り方に近い。では、なぜヨドバシカメラでは複数のMVNOのSIMカードを取り扱っているのか。また、特徴のあるサービスを打ち出しているMVNOだが、全体を見ると、似通った料金プランも少なくない。それらを、ユーザーに対してどう売り分けているのか。こうした疑問を、執行役員 事業本部長の渡辺哲也氏にぶつけた。

今のキャリアビジネスは、四角いテーブルを丸く掃除しているようなもの

photo ヨドバシカメラの渡辺氏

―― MVNOのコーナーを充実させた経緯を教えてください。ここまでの数を取り扱い、なおかつカウンターで即時契約も可能というのは大変珍しいと思います。

渡辺氏 基本として、当社の品ぞろえに対するスタンスがあります。お客様を固定してお店を作っているわけではなく、できることなら、どんなお客様にもフレンドリーになれる体制を作りたい。そのために何をしなければいけないのかです。一番のポイントは、大切なお客様に来ていただき、満足していただくことだと認識しています。

 そうすると、まずは品ぞろえになります。カメラもそうですし、白物家電もAVも、そのほかのものもそうですが、品物がたくさんあって、ご自分に合ったものをチョイスできる。その関係を作ることが重要だと考えています。そのために、いろいろと考え、行き着いたところが、「携帯電話なんでも相談カウンター」です。1つのキャリアの、1つの商品だけをアピールしても、それ以上のものにはならないですからね。MVNOにはいろいろな会社があり、いろいろな特徴のある商品を出しています。自分に合ったものが欲しいというお客様がいて、そのサポートをできることが重要です。

 我々が真っ先に考えたのは、キャリア(MNO)と同じことをやっても意味がないということです。今回のカウンターでもSIMと一緒にして、分割払いで月々いくらということもやってはいますが、端末は端末、SIMはSIMで選んでもらえるようにしています。抱き合わせで売ってしまうと、今のドコモさん、auさん、ソフトバンクさんと何が違うのか。ただ単に安いだけというふうには、ならないようにしたいですね。

photo ヨドバシカメラの携帯電話なんでも相談カウンター。写真はマルチメディアAkibaのもの。取り扱っている格安SIMはワイヤレスゲート、FREETEL SIM、Y!mobile、NifMo、UQ mobile、OCN モバイル ONE、U-mobile、BIGLOBE LTE・3G

 キャリア(MNO)が悪いと言いたいわけではありませんし、私たちもキャリアの商品を売っていますが、今のキャリアビジネスは、四角いテーブルを丸く掃除しているようなものです。角の方には、いろいろな不満を持たれている方もいます。2年縛りだったり、ちょっと前に問題になったオプションの抱き合わせや、料金プランの強制、ほかにも端末だけを買えないなど、挙げていけばキリがありません。最近だと、音声定額が基本になっていますが、あまり音声通話を使わない方が想定されておらず、そういった方々にとっては値上げになってしまう。

 縛りをなくして、端末とSIMを別に買ってもいい。そういったことを、もっとたくさんできるようにしたいというのが根底にあります。たくさん商品があって、そこに対応できる店員がいてという状況は、何とか作っていきたいですね。私どものお客様は、商品を好きな方が多い。PCなどがいい例ですが、新しいものが出ると、どんどん買っていただけます。正確なデータがあるわけではありませんが、通常の買い替えサイクルよりは短いのではないでしょうか。

―― 確かに、自分も仕事の一環ではありますが、買い替えサイクルはものすごく短いですね(笑)。

渡辺氏 そういう方は、PCも1年、2年で買い増ししていたりします。でも、IT系だとそれが自然ですよね。携帯電話は縛りがあるから買い替え期間が2年に集中していると認識していますが、そのサイクル自体、商品特性から考えるとちょっとおかしいのではないかと思います。

―― 携帯電話といっても、スマートフォンはIT機器ですからね。

渡辺氏 そうなんです。私どもの店にも、そういう方がたくさんいらっしゃいます。そこにお応えするには、今のビジネスモデルだけではダメなんです。例えば、タブレットはいちいちテザリングで接続したり、ルーターを使ったりするのではなく、立ち上げたらすぐにつながっているというのがいいですよね? そこがPCとタブレットを分けている、大きな違いだと思います。ただ、LTE版が少ない。なぜとメーカーさんに聞くと、キャリアに卸さないと商売にならないというのです。

―― とはいえ、そこは徐々に変わってきていますね。

渡辺氏 そうですね。そして、その先には家電製品でIoT(インターネット・オブ・シングス)があり、SIMカードを使えるようなものもあります。そこで端末を縛ってしまうのは、もったいない。SIMカードを安い料金で利用でき、そこに対していろいろなメーカーさんが端末を作っていけば、当社も当社らしいビジネスができます。

SIMロックフリースマホの扱いは激増

―― ヨドバシカメラではSIMフリーのスマートフォンも取り扱っていますが、伸びはいかがでしょうか。

渡辺氏 去年(2014年)の今ぐらいから考えると、ものすごい勢いで伸びています。

―― 風向きが変わった商品は、何かありますか。

渡辺氏 やはりASUSさんの「ZenFone 5」ですね。最近だとHuaweiさんの「P8lite」、あとはFREETELさんも頑張っています。

photophoto 特に人気が高いという「ZenFone 5」(左)と「P8lite」(右)

―― 何か、きっかけがあったのでしょうか。

渡辺氏 少しずつSIMフリー端末が認知されてきたのと、あとはスペックがこなれてきたことですね。

―― カウンターについては、実際に始めてみて、手ごたえはいかがでしょうか。

渡辺氏 今のところは順調ですね。名前が「携帯電話なんでも相談カウンター」なんですが、予想外だったのは、意外とドコモさん、auさん、ソフトバンクさんに関する質問が多かったことです。我々も(MNOの端末および回線の)販売をやっている中で、一括○○円、実質○○円など、いろいろな言葉を使いますが、あんなものはお客様にはまったく伝わっていなかったということです。これは、大いに反省したところです。

―― MVNOに関する相談は、少なかったということですか。

渡辺氏 いえいえ。それもたくさん来ました。もちろん、相談の中心は格安SIMです。

―― どのような相談が多いのでしょうか。音声プランが多いなど、ユーザーの傾向があれば教えてください。

渡辺氏 基本的には、通信費用を安くしたいというものが多いですね。今のところは、データプランを買われる方も、音声プランを買われる方もいます。ただし、まだたくさんデータを使う、高い商品には踏み込めていません。

 ワイヤレスゲートさんの480円のプランがあり、あれはあれでご支持いただいていますが、あちらではなく3GBのプランを選ばれる方もいます。その辺は、ほかの会社さんも傾向は同じですね。

 また、ワイヤレスゲートさんなり、FREETELさんなり、一緒に取り組んでいる会社にお客様の声を反映して、支持されるものを作ってもらえることも重要です。そのためには、さまざまなSIMカードを扱っていないと、声を届けられないということもあります。

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