予想以上に、通信事業者としての流儀を踏まえたサービスだったLINEモバイルだが、やはりその知名度の高さは群を抜いている。10月1日まではあくまで「ソフトローンチに近い」(嘉戸氏)形で、契約者数も2万に限定しているが、本サービスが始まればその勢いを増すはずだ。MVNO市場では、楽天モバイルやU-mobile、イオンモバイルなど、既存事業のブランドを生かした事業者が伸びているが、LINEモバイルもその一角に食い込むことができるかもしれない。
ただし、そのためには、乗り越えなければならない壁がいくつかあるようにも感じた。もっとも大きな課題が、販路だ。「チャネルは増やしていきたい」(嘉戸氏)というものの、現状では、まだWebのみの提供で、独自ショップもなければ、家電量販店での取り扱いもない。一部の流通はLINE側に接触しているようだが、実現にはまだまだ時間がかかる。LINEモバイルのサービスを始めた理由の1つに「スマホの比率を上げていきたい」(舛田氏)というものがあり、フィーチャーフォンユーザーも大きなターゲットになっているが、そうであれば、よりリアルな販路の重要性が増すはずだ。
販路とも関連するが、端末も現状では一括販売のみとなっており、5万円を超えるAQUOS miniなどを購入するハードルは高い。舛田氏も「オフラインであれば、割賦のようなものはあった方がいい」と述べており、こうした販売の仕組みは、販路を拡大する際に導入される可能性は高そうだ。
また、LINEモバイルの話を聞く限り、通信品質は重視しているようだが、ユーザー数の増加とのバランスをどう取っていくかのかじ取りも、まだ見えていない部分だ。現状では、MNOとほぼ変わらない速度が出ているが、これはユーザー数が少ないため。MVNOは借りている帯域をユーザー同士でシェアする仕組みのため、同じ属性のユーザーが集まりすぎると、特定の時間に通信が極端に遅くなってしまうことがある。現状では、ビジネスマンが多く、お昼休みにあたる12時台が、MVNOにとって頭の痛い時間帯だ。
LINEのMVNOということで、ユーザーの属性が既存のMVNOよりも多様になれば、トラフィックが分散され、速度が安定する可能性もあるが、現時点ではそれも断言できない。ユーザーが殺到して、混雑しすぎる可能性もゼロではないため、本サービス開始まで、予断を許さない状況といえる。逆にいえば、こうした課題が1つ1つクリアになっていけば、LINEモバイルの存在感はさらに大きくなりそうだ。
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