イヤフォンジャック廃止や防水対応――分解して理解する「iPhone 7」の変化バラして見ずにはいられない(3/3 ページ)

» 2016年11月10日 06時00分 公開
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タイミングデバイスに大きな変化

 スマホに限らずデジタル機器にはタイミングデバイスが搭載されている。さまざまな周波数で動く電子部品のタイミングを合わせる指揮者のような役割を果たす。また無線通信を行う際の周波数調整にも使用されており、モバイル通信に加え、Wi-Fi、Bluetooth、GPS、NFCなど無線通信機器の塊であるスマホには必須の部品である。この分野も日本メーカーが活躍しており、市場のほぼ半分を日本メーカーが獲得している。金属パッケージに覆われた独特の外観のタイミングデバイスの中身は水晶の石と制御ICである。

iPhone 7 タイミングデバイスのニュータイプとしてSiTime製品がスマホに登場した。Apple製品では2015年のApple Watchに続く採用例

 2016年のiPhoneではIntelチップ搭載モデル限定で、水晶に加え、シリコン製タイミングデバイスが1個搭載された。米国に本社を置くSiTime(日本のメガチップスが買収し、大真空が販売)の製品である。従来の水晶よりも衝撃に強く、シリコン上にICを作る要領で大量生産できるのが特徴だ。これまでは高い信頼性が求められる基地局や自動車に使用されていたが、モバイル機器にも採用が広がっているようだ。ちなみにApple初のシリコン製タイミングデバイスの採用はApple Watch初号機だった。

高速通信あってのiPhone

 最新プロセッサや新技術を満載するiPhone 7であるが、その能力をフルに発揮できるのは通信回線がLTEなど高速通信に対応している場合である。LTE環境が全国規模で整備されている国は少ない。日本はその数少ない国の1つだ。筆者が滞在したことのあるユーロ加盟国でOECDメンバーの先進国でも、国会議事堂近くなど政府中枢エリアでも接続されるのは3G回線で、日本でサクサク動く環境に慣れている人には応答が遅いと感じるかもしれない。

 実際、通信網の整備が遅れている国や地域におけるiPhoneの普及率は高くなく、地下鉄などはた目で見てもiPhoneユーザーは少なかった。姿から海外旅行者と思われる人でiPhoneを持っている人は多かったが、現地では256GBモデルが1199ユーロと超高額で、売り場にも特設コーナーはなく、中国Lenovo、Coolpad、Meizuなど150ユーロ前後でLTE対応する端末などと一緒に並べて売られていた。

分解者の視点から“バッテリー問題”を考察

 2016年9月にiPhone 7が発売されると、ほぼ同じ時期に、世界最大のスマホメーカーであるSamsung Electronicsの最上位スマホ「Galaxy Note7」がバッテリーの品質問題でリコールされた。販売再開後も問題が発生し生産停止となった。製品を分解している者の視点から、今回の問題を推察してみた。

 世界の大手バッテリーメーカーとしては、Samsung SDI、TDK傘下で香港に本社を置くAmpelex Technology Limited(ATL)、ソニー、LGなどが知られる。今回問題となった機種ではSamsung SDIとATLのバッテリーが使用されていたが、この採用傾向は以前からのもので今回特段変わったわけではない。

 バッテリーの中身は、ゲル化させた電解質をセパレータと呼ばれる膜で隔て、これを折り重ね、厚さ4mm程度の長方形のセルを構成している。これに加え、余り目に付かないが、バッテリー本体に制御チップが搭載されている。

 Samsung SDIとATLのバッテリーはSamsungの他の機種、またSamsung以外のスマホでも多用されているが問題が発生しているとの報道はない。このためバッテリー本体の問題である可能性は少ないと筆者は考える。

 お恥ずかしい話だが、筆者はスマホを分解している際に何度かバッテリーを傷つけ発火させてしまったことがあるが、これはいずれもiPhoneだった。筆者の分解がヘタなだけであるが、リチウムイオン・ポリマーバッテリーはどれも一様にデリケートで傷つきやすいのだ。

 現時点で不具合の原因の可能性が高いのは、バッテリーと一緒に搭載されているバッテリー制御チップのソフトウェアではないかと推測している。制御チップそのものは汎用(はんよう)性の高いものであるが、そこに書き込むソフトウェアはスマホの各モデルに最適化されている。さまざまなスマホで使用されているバッテリーメーカーの製品がNote7に限って不具合を起こしていることから、Note7用に作成されたソフトウェアに不具合があったのかもしれない。

5Gでバッテリー問題はどうなる?

 間もなく次世代通信規格5Gのサービスがドラフト版で開始される。3GHz以降の高い周波数帯と、数100MHz〜1GHz以上の帯域を使うことで、現在のLTEよりもさらに高速通信が可能になる一方で、端末の消費電力も増えてゆく。

 しかしバッテリーの高機能化は限界に達しており、技術革新によるバッテリー能力の向上は年10%に満たない。3Gサービスが始まった時もバッテリーの稼働時間が短い点を懸念する声があったが技術陣は見事に解決した。課題山積状態ではあるが、5Gでも安全に配慮しながら見事に解決されることを願いたい。

2017年のiPhoneはどうなる?

 2017年はいよいよiPhone誕生10周年だ。Appleは気合の入った新端末を投入すると予想されている。ユーザーが希望する能力や機能が一通り実現された今、2017年のiPhoneに早くも期待が高まっている。みなさんはどんなことを期待されるだろうか。

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