勢いを増すY!mobileに対し、UQ mobileも端末、料金、サービスを拡充し、正面から対抗していく方針だ。目標とする年間の契約者数は90万。UQコミュニケーションズの野坂章雄社長は「世の中的にはMVNOが年間300万ぐらい伸びるといわれている。その30%が見えてきた」と自信をのぞかせる。10月から端末のラインアップを拡充しているのが、その要因の1つだ。
auのネットワークを利用するUQ mobileは、“端末の少なさ”が足を引っ張っていた。auのネットワークは3GがCDMA2000 1Xのため、SIMロックフリー端末のほとんどがこれを使えず、VoLTEに対応する機種も限られていた。そのため、同社はSIMロックフリー端末を開発するメーカーにau VoLTEへの対応を働きかけ、ASUSの「ZenFone 3」「ZenFone 3 Deluxe」や、Huaweiの「P9 lite PREMIMUM」などがこれに対応。端末のラインアップを一気に拡充させた。
これと同時に、家電量販店での販売も強化。「周回遅れのところもあったので、一気にアテンション(注目)していただき、UQもあるんだよと印象付けたかった」(野坂氏)というように、テレビCMも開始した。その結果として、2016年には24%しかなかった知名度が11月から急上昇し、12月には71%まで上がった。満足度調査でも88%と、高い数値をキープしている。
対Y!mobileという視点で見ると、料金プランの選択肢が少なく、音声定額も提供できていなかった。春商戦では、このギャップを埋めるため、データ量が月7GB、キャンペーンで14GBの「プランL」を導入。音声通話についても、5分間の通話が定額になる「おしゃべりプラン」を導入する。既存の料金プランは無料通話がつく形だったが、2月22日以降はこのおしゃべりプランを前提としつつも、以前のぴったりプランも残し、月ごとに変更可能な選択制となる。また、学割にも追随し、Y!mobileと同様、24カ月間1000円の割引を提供する。
春商戦に合わせ、端末も拡充する。SIMロックフリースマートフォンもそろえたUQ mobileだが、端末の売れ行きにはバラつきもあった。野坂氏によると、iPhone 5s、P9 lite PREMIUMに加え、「AQUOS L」の人気が特に高く、12月はこの3機種で総販売数の62%を占めたという。この3機種はUQ mobileが取り扱う専用機という位置付けで、「キャリアとして、パッケージで見せたのが効いているのではないか」というのが野坂氏の分析だ。
こうした分析を踏まえ、春モデルでは自社ラインアップを強化した。新たに登場するのは、ボディーソープで洗える京セラの「DIGNO W」と、ドルビーオーディオに対応したZTEの「Blade V770」、Androidベースのフィーチャーフォン「DIGNO Phone」の3機種。野坂氏が「2万、3万とお手頃なもので、その中でもプレミアム感があり、特色があるものを探し出していきたい」と述べていように、どの機種もミッドレンジながら、一芸に秀でた機能、仕様を備えている。
自社ではAndroid Oneに集中し、脇をSIMロックフリースマートフォンで固めるY!mobileとは真逆の方向性だが、UQ mobileはネットワークの仕様ゆえに、いくら端末を増やしてもバリエーションはどうしても見劣りしてしまう。独自端末を増やさなければ、Y!mobileはもちろん、他のMVNOにも対抗できないというわけだ。端末に関する戦略の違いには、こうしたネットワーク事情が表れているのかもしれない。
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