―― Androidを採用している一方で、見た目はあまり変わっていません。そのボディーにまったく異なるチップやディスプレイ、指紋センサーを入れて、なおかつ防水にするのは大変だったのではないでしょうか。
星川氏 NuAns NEOを2つのOSで提供するのがいいとお話しましたが、そこで全部変えてしまうと(後継機が)NuAns NEOではなくなってしまいます。同じ筐体(きょうたい)でいこうとは、最初から思っていました。できる限り、デザインやコンセプトのコアの部分は変えないようにする。ずっと使うカバーなど、手触りのところは変えずに、テクノロジーの中身だけを変えていこうとしていました。
これは、枠をあらかじめ決めていることになるだけに、難しかったですね。前のNuAns NEOはパーツがうまく入るように筐体とのバランスを取ることができましたが、今回は筐体が決まっている中に入れ込まなければならず、制約が多く、苦労しました。(2〜3年は筐体を大きく変えない)iPhoneはカスタムパーツでできているので自由が利くと思いますが、われわれは汎用(はんよう)パーツを使っていますからね。
ただ、下(本体底面)をよく見ていただくと分かるように、ヘッドフォン端子の位置だけは微妙にズレています。
―― よく見ると、高さも違いますね。
星川氏 やっぱり気付きましたか(笑)。寸法として表記する数字は同じですが、実は0.6mm違っていて、上下に0.3mmずつ厚みが増しています。ヘッドフォン端子の位置もそうですが、これは防水にすることでこうなりました。
本当はまったく同じにしたかったのですが、どうしても防水型のパーツが普通のパーツよりちょっと大きい。前は極限までヘッドフォン端子を端に寄せたぶん、どうしても少し内側に寄ってしまいました。初代のパーツ選定をするときに、将来のことまで考えていたわけではないですし、防水でここまで厚くなるというのは、当時分からなかったことです。
―― 逆に、コンセプトを維持にするために、横幅は死守したということですね。
星川氏 はい。カバーが使えなくなってしまうので、横はまったく同じにしなければなりません。
―― 差分という意味では、上下のパーツにシボ加工も入っています。これはなぜでしょうか。
星川氏 ここには、シャープなテクスチャーを入れています。もともとはコーティングされたサラサラのパーツでしたが、落としたりするうちにはがれてしまう。だったら、コーティングはせず、金型に放り込んで作れるテクスチャーにしようと考えました。傷はつきますが、コーティングがはがれるというような汚さはなくなります。このテクスチャーも、日本エッチングという日本の会社でレーザー加工しています。金型をそこまで持っていって、加工しているんです。
中国で同じことをやろうとすると、“鈍っている”というか、ここまでのシャープ感が出せません。よくよく見ると違いが出てきてしまうので、ここは日本での加工にこだわりました。といっても、やはり上下は薄く、落としたときに弱いので、ここに装着するバンパーも作りました。980円ぐらいのオプションになりますが、買っていただけば安心して使えると思います。
―― 前面は指紋センサーが追加になっていますが、あまり変わっているように見えないですね。むしろ、ディスプレイが狭額縁になったことの方が、デザインの差につながっているような気がします。
星川氏 指紋センサーは、各社とも金属のリングを付けていて、最初はあれが認証に役立っているのかと思いきや、調べてみると関係がないということが分かりました。そこまで「ここにある」ということを主張しなくても、使う人には分かっているのではないでしょうか。僕らは結果論として前にしか置けませんでしたが、この方がいいと思っています。
今は0.5mmぐらい表面から下がっていますが、存在感をなくしたいというのはあって、本当はここもフラットにしたいぐらいでした。ただ、ピッタリ合わせようとすると、逆に飛び出してしまうおそれもあり、歩留まりが悪くなってしまうため、へこませています。
―― 認証の精度は、どの程度上げていく予定ですか。
星川氏 今最終調整していますが、メーカースペックとしては0.3秒で、そんなに気になる感じではないと思いますね。
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