MVNOの多くは、ドコモからネットワークを借りてサービスを提供している。この最も大きな理由は、ドコモのネットワーク利用料が、3大キャリアの中で一番安いからだ。
3社の料金を示したグラフから、10Mbps当たり月額30万円近くの差があることが分かる。この利用料は仕入れ値に当たるものなので、MVNOは自然と安いドコモのネットワークを使うようになる。また、ドコモが最も早くから現在のような形でネットワークを提供しており、体制が整っていること、ドコモが採用している通信方式は比較的シンプルで、幅広い端末を使えることもメリットだと内藤氏は分析している。
ネットワークの利用料は、「ルールによって」決められている。MNOはこれを原価+利潤を回収できる水準以下とする義務があると、電気通信事業法で定められている。MNOによってネットワークの整備にかかる費用は異なるので、原価もそれぞれ異なってくる。ネットワーク料金は構造的にどうしても異なってしまうものなのだ。
ただ、3キャリア間であまり差があるのは望ましくないということで、利潤の部分については、事業者によって差が出すぎないように、総務省が2017年2月に制度を見直した。それによって、最近のネットワーク利用料金は格差が少し縮小している。もちろん、引き続きドコモが一番安い状況は続いているが、こうした取り組みによって、1つのMNOにMVNOが集中せず、さまざまなMNOに広がっていくことを総務省は期待している。
SIMロックは、MNOが販売する端末が他のMNOでは利用できないように制限をかけることだが、最近注目されているのは、自社網を利用するMVNOでSIMロックを解除することなく端末を使えるかどうかだ。ドコモは自社網を利用するMVNOに対してSIMロックをかけていないが、KDDIは一部、ソフトバンクは全体的にMVNOに対してもSIMロックがかかるような設定をしている。
SIMロックの解除については、総務省がガイドラインを設けて、2015年5月以降に発売された端末について義務化したが、新ガイドラインでは大きく2つの内容で見直しをしている。
1つは、MVNO向けのSIMロックの禁止。MVNO向けのSIMロックは、そもそも必要ないという結論になり、2017年の8月1日以降に新規発売になる端末について適用される。同じネットワークを利用するMVNOでは、SIMロックを解除せずに端末を利用できる。今のドコモ端末と同様の扱いだ。
また、SIMロック解除に応じるまでの期間が短縮され、割賦払いの場合は、割賦の1回目を支払いを確認できる「100日程度以下」の期間となる。これについても8月からの適用。一括払いの場合は、事業者が支払いを確認できた時点で速やかに解除可能にする。こちらはシステムの対応の関係で、2017年の12月以降から適用される。
内藤氏は総務省の役割について、「MVNOに対しては、MNOからネットワークを借りやすくすることで競争を加速させ、ユーザーに対しては、他の通信事業者のサービスを選びやすくすることをサポートする」ことだと語る。
今後は、「大手キャリアではできるのに、MVNOではできないことを減らしていき、ユーザーにとってMNOとMVNOで差がないという認識を広めていきたい」とした。例えば、IIJのHLR/HSSの導入もその一例だ。
また、大手キャリアが、特定のMVNOを優遇、あるいは不利にすることを防止していく。競争を促進するためにMVNOの参入を促していたが、一部を優遇したり、不利にしたりすることで、「MVNOを含めた一種のグループ化が進み、市場が3社の寡占的状況に戻ってしまうことを総務省としては懸念」している。
さらに、MVNOにおける消費者保護と不適正利用防止を充実させていく。MVNOのユーザーが増えたときには、設備増強に合わせてサポートのキャパシティーも高める必要がある。「消費者問題は、消費者のサービスに対する理解と、事業者が提供している情報のミスマッチから発生することが多い」と内藤氏は指摘。MVNOに関する深い知識が少ないユーザーも増えていく今後は、より分かりやすい情報提供が必要だとし、「総務省もモニタリングして、不備があれば改善を個別に図ってもらうようにしていきたい」と語った。
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