通信速度、サポート、消費者保護――「モバイルフォーラム2017」で語られたMVNOの課題(1/2 ページ)

» 2017年03月16日 22時58分 公開
[田中聡ITmedia]

 テレコムサービス協会MVNO委員会が、3月16日に「モバイルフォーラム2017」を開催。総務省、アナリスト、ジャーナリスト、サービス提供者というさまざまな視点から、MVNOの現状や課題について講演、ディスカッションを行った。

モバイルフォーラム

 MVNOサービスの契約数は順調に伸びている。M2Mなど組み込み型のSIMカードと、SIMカード型(いわゆる格安SIM)の両方を含む契約数は、2016年9月末時点で1427万契約で、約8.6%のシェアに上る。一方でSIMカード型のみの契約数は762万で、シェアは5.1%。携帯電話全体の中で見るとまだ小さな数字だが、契約数自体は順調に増えており、純増数も近年はMNO(大手キャリア)よりもMVNOの方が伸びている時期が多い。

モバイルフォーラム MVNOの契約数と純増数(総務省調べ)。契約数は右肩上がりで伸びており、純増数も2015年6月以降は、ほぼMVNOの方が多い

通信速度の問題点

 利用者の裾野が広がりつつあるMVNOサービスだが、現状はどんな課題を抱えているのだろうか。

 まずは、「料金」と並んで重要な指標といえる「通信速度」について。ジャーナリストの石川温氏が10以上のMVNOサービスの速度を比較したところ、11時台や13時台は大きな問題がなかったが、12時台は軒並み速度が落ちたという。月額1000円をうたう某MVNOの通信速度は「話にならない」レベルだったそうだが、「客層も違うし、独自端末なので仕方のない部分もある」とフォローした。

 一方で2つのサブブランド(Y!mobileとUQ mobile)は“爆速”で「本当にMVNOなのか、高市総務相にコメントを求めたいほど」と疑問を投げかけた(厳密にはY!mobileはMVNOではないが)。

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モバイルフォーラム 石川氏はユーザー目線でMVNOの問題点を解説
モバイルフォーラム MVNOの通信速度をアプリで比較

 とあるMVNOでは、11時台、12時台、13時台のどの時間帯でも「6Mbps」を計測していたが、同じ時間帯に動画のストリーミングが全く再生できなかったという。測定アプリと体感に大きな差があることから、「MVNO業界の信頼に関わる問題」とした。

 ちなみに、MNOは通信の実効速度を公開しているが、MVNOにはその義務はない。「総務省がMVNOの実効速度開示を2017年度中に求める」という報道があったが、テレコムサービス協会 MVNO委員会 消費者問題分科会主査の木村孝氏によると、総務省は実効速度の開示を求めたわけではなく、速度計測の環境を整備するための予算を確保した、というのが真相とのこと。

 これを受け、MVNO委員会でも「MVNOの実効速度に関するタスクフォース」を設置。「MVNOは規格上の最高速度が速いとは訴求しないが、最近は遅いというクレームが出てきている」(木村氏)ため、契約前の判断材料になるよう、実効速度について何らかの数字を開示する方針だ。MVNOの実効速度がしかるべき方法で測定されれば、石川氏が言う“体感との差”はなくなるはずだ。

モバイルフォーラム MVNOサービスの実効速度も何かしら公表する形になりそう

サポートの問題点

 石川氏は「サポート」の品質も比較した。12社の問い合わせ窓口に「(ソフトバンクの)iPhone 6を持っているが、そちらのサービスを使えるか」と問い合わせた際の対応をチェック。「SIMロックを解除できないので使えません」が模範解答だが、果たして……。

モバイルフォーラム 問い合わせ内容

 社名は伏せたが、「電話をかけてすぐにオペレーターが出た」「ソフトバンクのiPhone 6と答えたらすぐに『使えない』と答えてくれた」「電話の混雑カレンダーを表示してくれた」MVNOを「優秀だった」と評価。

 一方で、「そもそも電話番号がサイトに載っていない」「通話が有料だった」「電話をかけないで店に行くように指示した」「SIMカードを挿さないと分からない、ソフトバンクに聞いてほしいと答えた」MVNOは「不快だった」とばっさり。ちなみに“Y社”は「SIMロックを解除できれば」と答えたそうで、(運営元が同じソフトバンクということもあり)これには石川氏もあぜんとしたようだ。

 最近はチャットで問い合わせができるMVNOも増えており、「恥ずかしがり屋でも納得するまで聞ける」と評価。LINEモバイルはLINEで問い合わせできるのも便利とした。

モバイルフォーラム チャットで問い合わせに対応するMVNOも増えている
モバイルフォーラム LINEを活用したサポートはLINEモバイルならでは

 このほか、石川氏はSNSやコミュニティーサイトの品質もMVNOによって大きな差があること、差別化に走るあまりプランが分かりにくくなってしまうこと、MVNOにオプションが必要なのか、といった問題点も指摘した。

消費者保護の問題点

 消費者保護の政策も万全とはいえない。携帯電話の不正利用防止は、MNOとMVNOどちらも本人確認を義務化しているが、青少年フィルタリングのルールはMVNOでは徹底されていない。

 木村氏は「(MNOと同様に)MVNOもフィルタリングの提供義務があり、総務省が要請している」と話す。フィルタリングを提供していないMVNOもあるが、2017年2月に実施した15社の調査結果だと「法人専用やロボホン」などに限られる。一方で、近年は「親が契約して子どもが使うこともあるが、利用者を把握していない事業者もある。契約者とは別に利用者を把握する必要がある」と指摘した。

モバイルフォーラム テレコムサービス協会 MVNO委員会の木村孝氏
モバイルフォーラム MVNOにおける、青少年フィルタリングの提供状況
モバイルフォーラム 利用者の情報を把握していないMVNOも

 また、総務省と消費生活センターなどに寄せられた苦情相談のうち、7.4%がMVNOサービスに関するものだったというデータもある(ちなみにMNOサービスは29.1%)。総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部長の巻口英司氏によると「きちんと説明してもらえなかった、解約の方法が分からない、高齢者なのに過剰なサービスを契約させられた」といった問題がMVNOでも起きているという。

 上記の苦情を法令に照らし合わせたて確認したところ、契約前の書面にMVNOの連絡先や通信の利用制限、青少年フィルタリングサービスの記載がない事業者があり、速やかに改善するよう指摘したとのこと。

モバイルフォーラム 総務省の巻口英司氏
モバイルフォーラム MVNOサービスの苦情相談も一定数寄せられている
モバイルフォーラム 契約時の書面記載に不備があるケースも
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