iPhoneがそばになくても便利に使える――「Apple Watch Series 3(GPS + Cellularモデル)」を速攻レビュー

» 2017年09月13日 17時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 Appleは9月12日(現地時間)、「iPhone X」「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」と合わせて「Apple Watch Series 3」を発表した。

 素材やバンド、ブランドとのコラボレーションなど、多彩な組み合わせが存在するが、大きく分けると通常モデルの「Apple Watch」、ナイキとコラボした「Apple Watch Nike+」、エルメスモデルの「Apple Watch Hermes」、筐体にセラミックを使用した「Apple Watch Edition」の4ライン構成となる。ここは従来シリーズと同様だ。

Apple Watch Series 3 Apple Watch Series 3。左が38mmモデル、右が42mmモデル
大きく4ラインを用意 全部で4ライン存在し、組み合わせは多彩だ

ついにLTE・3G(W-CDMA)に対応!

 Series 3の最大の特徴は、LTEと3G(W-CDMA)に対応する「GPS + Cellularモデル」(以下「LTEモデル」)を用意したことだ。LTEモデルではiPhoneを持ち運ばずに単体で通話やデータ通信を行える。VoLTEにも対応している。

 発表会では、ランニング時にApple Musicでクラウド上にある音楽を聞いたり、スポーツしながら電話をしたりといった利用シーンが紹介された。より身近なケースでは、単体で通信が可能になったことで、コンビニなどの近場に出かける際に、iPhoneを持つ必要がなくなる。Apple Watch Series 2と同様、FeliCaにも対応しているため、Apple Payを使った決済も行える。

 実機を見てまず驚いたのは、GPS + CelluarモデルであってもサイズがこれまでのApple Watchと変わっていないことだ。BluetoothやWi-Fiで接続するスマートウォッチとしてはごく普通のサイズ感だが、LTEのモデムチップが入った“電話”だと思うと、見方が変わってくる。通話やSMSに機能を絞った薄型のシンプルな携帯電話よりもさらに小型で、「これで本当に電話ができるのか?」と思ったほどだ。

通話もできる LTEモデルはLTEや3Gを使った通信に対応しており、通話も可能だ

 小型化できた(大型化せずに済んだ)大きな理由の1つは、アンテナにあるという。Series 3はディスプレイ全体がアンテナになっており、LTEや3Gの電波を受ける仕組みとなっている。ディスプレイがアンテナになっているため、ボディーの切り欠きなど、デザインを損なうような処理も施されていない。見た目だけでいえば、従来のApple Watchと遠目では区別がつかないかもしれない。

 ただし、アナログ時計の竜頭(りゅうず)をモチーフにした「デジタルクラウン」の先端がLTEモデルのみ赤くカラーリングされている。LTEや3G通信機能のない「GPSモデル」については、従来モデルと同じ色となっている。

LTEモデルのデジタルクラウン
LTEモデルの右側面
LTEモデルの背面 デザインやサイズ感は従来モデルを踏襲している。LTEモデルはデジタルクラウン(竜頭)が赤いので見分けが付く

実際に発信・通信してみる

 試しにダイヤルキーを押し、AT&TのSIMカードを入れた筆者のiPhone 7に発信してみたところ、他の携帯電話と同じように電話をかけることができ、普通に会話もできた。マイクの感度が高いのか、Apple Watchは口元に近づける必要もなく、胸の下あたりまで腕を上げれば声もきちんと拾われる。Apple Watch側のスピーカーから出た声が周囲の人に聞こえてしまうが、「AirPods」などのBluetoothヘッドセットを使えばこの問題を解決できる。

ダイヤル Apple Watchから筆者のiPhoneに発信して……
通話画面 当たり前のように通話できた

 単体でのデータ通信できるかどうかも試してみた。マップを開いたところ、GPSで取得した現在地が表示された。Apple Musicも再生できた。

 LTEでの通信に対応したことによって、サードパーティのアプリにもより価値が出るだろう。例えば日本では、LINEなどのメッセンジャーアプリで簡単な返信ができたり、音声通話ができたりすれば、Apple Watch Series 3だけで外出するということが、より現実的になりそうだ。

マップを使う図 iPhoneが近くになくてもマップはもちろん……
Apple Musicを使う図 Apple Musicも利用できる

あくまでも「iPhoneと連携利用」が基本

 LTE・3G電波の強度は丸印で表示される。ウォッチフェイスの中央よりやや上にさりげなく表示されている他、コントロールセンターを呼び出した際には、左上に表示される。

電波強度表示 LTE・3Gの電波強度(アンテナピクト)は丸印で表示される

 ちなみに、LTE、3Gはコントロールセンターのボタンを押すだけで、簡単にオン・オフを切り替えることができる。Series 3の公称連続使用時間はSeries 2と同じ最大18時間となっているが、LTEで直接接続した際の連続通話時間は約1時間程度。Bluetooth経由では最大3時間であることを踏まえると、やはりLTEを使うとバッテリーは消費しやすい。LTEモデルのLTE・3G通信機能は単体利用を想定したものではなく、普段はiPhoneと連携しつつ、どうしても母艦であるiPhoneが近くにない時にだけ単体で使うというのが基本的な考え方となる。

LTE・3Gのオン・オフ LTE・3G通信機能はコントロールセンターからオン・オフを切り替えられる

 Appleによると、Apple Watch Series 3には、従来比で70%高速化されたデュアルコアプロセッサの「S3」が搭載されている。そのおかげもあってか、アプリの起動や各機能の呼び出しは非常にスムーズだった。

プロセッサの高速化 プロセッサが高速化したこともあってか、動作もスムーズだった

 LTEに対応し、単体でのデータ通信や通話が可能になったことで、Apple Watchの利用シーンがさらに広がった印象を受けた。ディスプレイ全体をアンテナにしたり、eSIMを採用したりと、技術的にも見どころも多く、ガジェット好きからスポーツ好きの人まで、幅広い層から注目される1台になりそうだ。

取材協力:アップルジャパン

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