VAIO史上、最薄最軽量モバイルノート「VAIO X」を徹底検証する(後編)3台のXを横並びで比較(3/5 ページ)

» 2009年10月12日 17時45分 公開

3DMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコア

 主にビジネスユース向けのVAIO Xでは3Dグラフィックス性能を重視していないが、3DMark05とFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3も一応実行した。

左が3DMark05(1024×768ドット)、右がFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果

 Intel SCH US15Wチップセットに統合されたグラフィックスコアは、Netbook標準のIntel GMA 950より性能が低いIntel GMA 500なので、当然テストの成績は振るわない。DirectX 9.0c対応テストの3DMark05はもちろん、DirectX 8.1世代の今となっては少々古いテストであるFF XIベンチ3の結果を見ても、解像度が低いLow設定で700台にとどまり、プレイは困難だ。CPUやSSDを強化した構成でも、3Dグラフィックス性能については効果がほとんど見られない。

Windows 7の各種動作時間

 定番のベンチマークテストプログラムを一通り実行したことで、VAIO Xが高クロックのAtom ZとSSDの採用により、Atom Z搭載PCとしてはなかなかのパフォーマンスを確保していることは分かったが、やはり気になるのはWindows 7がどの程度快適に動作するかだろう。

 そこで、実際にWindows 7の各種動作に要する時間をストップウォッチで計測した。計測したのは、Windows 7の起動、スリープへの移行と復帰、休止状態への移行と復帰、シャットダウンの動作にかかる時間だ。

 Windowsの起動時間は電源ボタンを押してから「ようこそ」画面が出るまでの時間と、デスクトップ画面が表示され、あらかじめスタートアップに登録しておいたテキストファイルが起動するまでの時間の2段階で計測した。なお、これまでにWindows Vista搭載ノートPCで同じようなテストを実施した際は、ウェルカムセンターが起動するまでを起動時間としていたが、Windows 7では起動時にウェルカムセンターが表示されなくなったので、テスト方法を変更している(Windows 7のテスト方法のほうが起動時間が短い傾向にある)。

Windows 7の各種動作時間

 VAIO Xの設定は基本的にデフォルトで、ACアダプタを接続した状態だ。各動作時間にはバラツキがかなりあるので、計測は10回以上行い、異常な数値が出た場合はそれを排除してから平均値を算出した。購入直後に近い状態でテストしたため、Windows 7のアップデートやアプリケーションの追加などで、各動作時間は大きく変わってくる。

 テスト結果には右のグラフに示した通りで、全体的にVistaより高速だった。特に休止状態への移行と復帰が速くなっているのはモバイルシーンでうれしいところだ。

 3台の比較では、SSDの差が目立つ。高速な128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成はすべてのテスト項目で64GバイトUltra ATA SSDより高速で、特に休止状態への移行と復帰、シャットダウンの時間で大きな差を付けた。

 CPUをAtom Z550(2.0GHz)に強化した構成では、テスト結果にわずかな高速化が見られた程度で、体感速度はさほど変わらない。グラフの数値は平均値を採用しているので、1回ずつの計測ではAtom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSDを備えた構成のほうが高速な場合も少なからずあった。

 ちなみに、起動からデスクトップ表示(スタートアップに登録しておいたテキストファイルの展開)までにかかる時間は40秒前後だが、そこからウイルス対策ソフトを含む常駐ソフトやデスクトップガジェットが完全に起動するには30〜40秒程度かかる。

Windows 7の使用感は意外にも……

 さて、実際にVAIO Xを数日間仕事用に使ってみたが、「意外にWindows 7が動く」という印象を受けた。VAIO Xと同じAtom ZとIntel SCH US15Wチップセットを採用した「VAIO P」(当時はVAIO type P)は、特に低スペックな標準仕様モデルにおいてWindows Vistaの動作が緩慢で、ガマンが必要だったが、VAIO Xでは標準仕様モデルでもWindows 7が実用に耐えうる速度で動き、Windowsの基本動作にストレスを感じるシーンは少ない。これは、いい意味で予想を裏切られた。

 さらに、高速な128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成では、Windows 7の使用感がワンランクアップし、長時間使っているとAtom Z搭載機であることを忘れるほどだった。さすがに、Core 2 DuoやデュアルコアCeleron搭載のモバイルノートPCと比較すると軽快さは物足りず、フォトレタッチや動画編集、オフィススイートでも重いデータを日常的に扱う用途などに使うのは困難だが、Webブラウズやメール、出先でのプレゼン、ちょっとしたビジネス文書の作成や閲覧といった作業であれば、不満なくこなせるだろう。

 こうした背景には、Windows 7がWindows Vistaより低スペックのPCでも動作が軽くなるように設計されている点に加えて、Windows 7向けにインテル製グラフィックスドライバの最適化が進んだ点、VAIO Xが標準仕様モデルでも高クロックのAtom Zを採用する点、映像と音声のコンテンツ解析といったシステムに負荷がかかるVAIO独自アプリケーションが省かれている点など、複数の要因がある。

Vistaとは一部異なる動画再生支援機能

付属ソフトの「PMB」はAVCHDのハードウェアデコードによるHD動画再生に対応する

 Intel SCH US15Wチップセットに統合されたグラフィックスコアのIntel GMA 500は、Windows Vistaに対応したハードウェアデコードによる動画の再生支援機能を備えているが、Windows 7では変更が見られる。現状でインテルが提供するグラフィックスドライバはWMV(VC-1)の動画再生支援が含まれていないのだ。ただし、MPEG-4 AVC/H.264やMPEG-2のハードウェアデコードには対応する。

 ソニーによれば、VAIO Xにインストールされているアプリケーションでは、「PMB」(Picture Motion Browser)でハードウェアデコードによるAVCHDのHD動画再生が可能だという。実際にAVCHDビデオカメラ撮影したHD映像(1440×1080ドット/約12Mbps)をPMBに登録して再生したところ、コマ落ちすることなく再生できた。

 Windows Media Player 12でのWMVファイル再生については、ハードウェアデコードが効かないため、VAIO PのWindows Vistaモデルで再生できた1080pのWMVファイルがコマ落ちしてしまう。ただし、SD解像度のWMVファイルが再生できるのはもちろん、720pのWMVファイルでもソフトウェアデコードにより実用レベルで再生できる場合もあった。

 YouTubeニコニコ動画といった動画共有サイトのコンテンツ視聴も試してみた。YouTubeではノーマル画質のコンテンツならば問題なく視聴でき、高画質コンテンツはものによって再生できたり、できなかったりといった具合だ。ニコニコ動画については、標準的なコンテンツならばコメント数が多くても意外に視聴できる(たまに再生がつかえることもあるが)が、やはり高画質のコンテンツでは再生が厳しいものも多い。

 次のページでは、バッテリー駆動時間、ボディの発熱や騒音に迫る。

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