圧倒的な薄型軽量を誇るVAIO Xだが、気になるのは省電力を重視したCPUのAtomとチップセットのIntel SCH US15W(グラフィックス機能のIntel GMA 500を統合)が、パフォーマンスにどのような影響を与えているかだろう。
まずはWindows 7標準の性能評価機能であるWindowsエクスペリエンスインデックスを実行した。各モデルのスコアは以下の通りだ。
WindowsエクスペリエンスインデックスはWindows Vistaから導入されたが、Windows 7ではスコアの基準が見直され、最高点がこれまでの「5.9」から「7.9」へ引き上げられた。同じスペックのPCでもWindows 7ではVistaよりスコアが全体的に低くなる傾向にあり、Vista搭載PCとスコアを横並びで比較することはできないので、注意してほしい。
結果は3台ともプライマリハードディスクが最も高いスコアだった。64GバイトUltra ATA SSD搭載の標準仕様モデルで「5.3」、128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSD搭載のVAIOオーナーメードモデルでは「6.3」にスコアが跳ね上がっている。
一方、ゲーム用グラフィックスの値は一番低く、「2.5」という結果になった。次に低いのがプロセッサで、Atom Z 540(1.86GHz)搭載時で「2.7」、Atom Z 550(2.0GHz)搭載時でも「2.8」にとどまる。
残るメモリは「4.3〜4.4」、グラフィックスは「4.4」というスコアだ。グラフィックスはまずまずの値に思えるが、実際はVAIO XでWindows Aeroをオンにするとパフォーマンスが低下するため、ソニーはAeroをオフにした状態で出荷しており、そのままでの使用を推奨している。したがって、Windows 7で強化されたAeroの恩恵は得られない。
次に総合ベンチマークテストのPCMark05とCrystalMark 2004R3(ひよひよ氏作)を実行し、システム全体のパフォーマンスを調べた。各テストはACアダプタを接続し、Windows 7の電源プランは「高パフォーマンス」に設定している。
Atom ZとIntel SCH US15Wチップセット搭載のノートPCとしてはハイスペック寄りなVAIO Xだが、テスト結果を見ると、やはり全体的なパフォーマンスは控えめだ。注目すべきはHDDのスコアで、標準仕様モデルの64GバイトUltra ATA SSDと、VAIOオーナーメードモデルで選べる128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDとでは大きな差が生じている。64GバイトUltra ATA SSDに比べて、PCMark05のHDDスコアで約3.4〜3.5倍、CrystalMark 2004R3のHDDスコアで約1.8〜2倍もの性能アップが見られた。
256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成はCPUも少し速いので、厳密な比較とはいえないが、これくらいの動作クロックの差であれば、HDDテストに与える影響はごく少なく、HDDスコアの差はそのまま受け取っても問題ないだろう。
ちなみに、レビュー前編とインタビュー記事で触れた通り、Intel SCH US15WチップセットはSerial ATAインタフェースをサポートしないため、64GバイトUltra ATA SSDの場合のみチップセットと直接接続し、128G/256GバイトSSDではSerial ATA/Ultra ATA変換アダプタのボードを介して接続する。
したがって、128G/256GバイトSerial ATA SSDはUltra ATAへの変換処理が性能面でのボトルネックになり、本体の重量がわずかに増えるが、それでもテスト結果からは速度と容量の両面で大きな効果があることが分かる。パフォーマンスを少しでも高めたいならば、真っ先に128G/256GバイトSerial ATA SSDの搭載を検討すべきだ。
CPUのスコアについては、標準仕様モデルからして高クロックのAtom Z 540(1.86GHz)を採用しているため、わずかに高速化したAtom Z550(2.0GHz)を選択してもパフォーマンスの差は大きくない。テスト結果からはクロックアップしたぶんの性能向上を確認できるが、128G/256GバイトSerial ATA SSDより優先順位は低くていいだろう。
性能の差が目立つSSDの違いをより詳しく調べるため、PCMark05のHDD関連テストとCrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)も走らせた。
PCMark05のHDD関連テストは、実際の利用シーンを想定したデータの読み書きを行うものだ。テスト内容は、XP Startup(Windows XPの起動をトレース/データのリードが中心)、Application Loading(アプリケーション6種類の起動をトレース/リードが中心)、General Usage(WordやIEなど標準的なアプリケーションの使用をトレース/リード60%、ライト40%)、Virus Scan(600Mバイトのウイルススキャン/データのリードが中心)、File Write(680Mバイトのファイル書き込み/ライト100%)の5つで構成される。
CrystalDiskMark 2.2はシンプルにディスクのデータ読み書き性能を調べるテスト。シーケンシャル/ランダムのリード/ライト速度を計測できる。今回はデフォルトの設定でテストした。
結果はやはり128G/256GバイトSerial ATA SSDが、64GバイトUltra ATA SSDを大きく上回った。64GバイトUltra ATA SSDはデータのライト速度、特にランダムライトの速度が遅いが、128G/256GバイトSerial ATA SSDによって大きく改善できることが分かる。
テストした機材に搭載されていた128GバイトSerial ATA SSDと256GバイトSerial ATA SSDは同じモデルの容量違いで、SSDとしてのスペックはいずれもシーケンシャルリードが220Mバイト/秒、シーケンシャルライトが200Mバイト/秒となっている。テスト結果を見ると、やはりUltra ATA変換のボトルネックにより、ドライブ自体のパフォーマンスは最大限発揮できていないが、ここはチップセットの限界として受け入れるしかない。
なお、SSDの個体差なのか、今回のテストではCPUがわずかに高速な256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成より、128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成のほうがディスクパフォーマンスがやや優勢だった。この傾向は、何度テストしても変わらなかった。
次のページでは、3Dグラフィックステストの実施や、Windows 7の起動や終了にかかる時間の測定を行う。
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