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» 2010年06月15日 16時00分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:進化しすぎたXeonの憂うつ (1/3)

インテルとAMDが2010年3月の末に相次いで発表したサーバ向けCPUの新モデル。今回はXeonの新モデルからインテルのジレンマを解説する。

[元麻布春男,ITmedia]

Gulftownとよく似たWestmere-EP

 少し前の話になるが、年度末となる2010年3月の末に、インテルとAMDが相次いでサーバ向けCPUを発表した(AMD、最大12コア搭載の4P対応「Opteron 6100」シリーズ発表32ナノ、6コアモデルも登場──Xeon 5600シリーズ発表EXなXeonもNehalemへ──Xeon 7500番台/6500番台発表を参照のこと)。そのときに登場したインテルのXeon 5600番台(開発コード名Westmere-EP)は、基本的には同年3月に概要が発表されたCore i7-980X(開発コード名はGulftown)と同等のスペックだった(インテルの社長が6コア搭載「Core i7-980X」で自作するを参照のこと)。その違いを簡単にまとめると、主に次の4点になる。

  • サポートするメモリ
  • 2ソケット構成のサポート
  • 物理メモリアドレス
  • 提供される製品のバリエーション


 まず、サポートするメモリだが、クライアントPC向けのCore i7-980Xが公式にサポートするのはDDR3-1066(unbuffered DIMM、ECC対応なし)までであるのに対し、Xeon 5600番台は最大DDR3-1333を公式にサポートするほか、unbuffered DIMMに加えてRegistered DIMMにも対応する。とはいえ、Core i7-980X Extreme Editionも非公式にDDR3-1333をサポートしている(JEDEC仕様のDDR3-1333/PC3-12800 DIMMをインストールするとDDR3-1333として認識される)ことから考えると、それほど大きな違いがあるわけではない。

 Xeon 5600番台のメモリサポートとして新たに加わったのは、動作電圧が1.35ボルトの低電圧版DIMM(LV DIMM)だ。LV DIMMによりサーバの消費電力を削減できるが、システムに組み込む場合はLV DIMMの動作をマザーボードがサポートしている必要がある。Core i7-980X Extreme Editionが従来のマザーボードと互換であったように、Xeon 5600番台も既存のXeon 5500番台とプラットフォームレベルでの互換性を持つが、既存のサーバでLV DIMMの動作検証を行った製品はほとんどないと考えられる。なお、JEDECの仕様では、LV DIMMも1.5ボルトで動作することが必要とされているため、仕様上は既存のプラットフォームにLV DIMMを組み込んでも動作するはずだが、サーバベンダーの動作保証はまた別の問題になる。

 2ソケット構成のサポートは、Xeon 5600番台が2ソケットサーバ向けであることを考えれば当然だ。そして、物理アドレスが36ビット(64Gバイトのメモリエリアを扱える)のCore i7-980X Extreme Editionに対し、Xeon 5600番台は物理アドレスが40ビット(1Tバイトのメモリエリアを扱える)に拡張されている。ただし、Xeon 5600番台と同時に発表されたワークステーション向けのXeon W3680は、Core i7-980X Extreme Editionと同じくシングルソケット対応であり、物理アドレスも36ビットだ。

 こうした仕様上の違い以上に大きいのは、提供される製品バリエーションの種類だろう。Core i7シリーズでデスクトップPC向けには今のところ1モデル、Core i7-980X Extreme Editionしか提供されていないのに対し、サーバ向けのXeon 5600番台は6コアに加えて4コア版、低電力版(TDP40〜60ワット)などバリエーションが用意される。

 ただし、発表時のOEM価格(1000個ロット時)を見る限り、デスクトップPC向けに提供されている65ナノメートルプロセスルールのLynnfield(Core i7-800番台、およびCore i5-700番台)に比べて割高な印象も受ける。12Mバイトの3次キャッシュメモリ、AES-NIのサポート、低電力版の存在など、デスクトップPCにとっても魅力的な機能はあるものの、もう少し価格がこなれるまで、4コア版を含むデスクトップPC向けCPUでは32ナノメートルプロセスルールへの完全移行はないようだ。

 従来のXeon 5500番台と比較すると、Xeon 5600番台は、プロセスルールが32ナノメートルへ進化し、コア数が増えたこと、LV DIMMに対応したこと、AES-NIをサポートしていることに加え、TDP 130ワットのモデルがサーバ向けラインアップに登場したこと(従来、TDP 130ワット版はワークステーション向けラインアップのみ)、Trusted Execution Technologyをサポートしたこと、といった違いもある。だが、TDP 130ワットをサポートするにはサーバ(のシャシー)の熱設計を変更せねばならない。従来はクライアントPCでのみサポートされてきたTrusted eXecution Technologyは、セキュアな仮想マシンをサポートする技術としてXeon 5600番台から対応することになったが、既存のサーバプラットフォームにはTXTに不可欠なTPM(Trusted Platform Module)が実装されていないことが大半であるため、やはりプラットフォームの変更が必要になる。

 こうした既存のプラットフォームで利用できない技術は有効ではあるものの、オプション的な存在で既存のXeon 5500番台プラットフォームに対してXeon 5600番台はピン互換性を有する。Xeon 5500番台をXeon 5600番台に置き換えた場合、消費電力あたりの性能で最大40%アップ、同じ性能なら30%の消費電力削減が可能だとインテルは述べている

kn_xeon_01.jpg 32ナノメートルプロセスルールを採用するXeon 5600番台は、前世代に対し省電力あたりの処理性能が大きく改善された

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