さて、実際にアプリケーションを動かしてみると、Retinaの体験レベルは4段階に分けることができる。
最もよいケースは、Retinaを意識した実装が行われている場合だ。
アプリケーション内で使われるビジュアル要素が、従来の縦・横2倍の画素数を持つビットマップ画像(画素レイアウトが固定されている画像)で用意され、文字やベクター画像(描画手順が記述された画素レイアウトが固定されていない画像)もRetinaでの動作を意識した作りになっているものは、きちんと高解像度を生かした表示になる。Mac OS X本体とそのバンドルソフト、それにiLifeのiPhotoとiMovieはRetina対応。さらにFinal Cut ProやAperture、Logic ProもRetina対応だ。
ユーザーは純粋に高解像度を楽しめる上、レイアウトメッシュと物理的な画素数が整数倍の関係になっていなくても、ほとんど画質面での不満を感じないと思う。これがベストケースだ。Safariは特にきちんと対応しており、HTMLの書き方次第で画面解像度がフルに生かせるよう作られている。もちろん文字のきれいさは言うまでもない。
次にRetina対応のアプリケーションではないが、Mac OS Xが提供している標準的機能を使っているため、結果的にRetinaディスプレイを生かせているものがある。
筆者が使っているものの中で当てはまるのは、TwitterクライアントのEchofonだ。アイコンやボタンなどはビットマップ画像なので、拡大フィルタを通した表示になるが、文字は物理的な画素数に合わせて描画される。さらに読み込んでいるアイコン画像が高解像度だと(アプリケーション内で管理している画像の画素数が多ければ)、利用者アイコンまできれいに見える。
その次の段階が、文字はきれいに見えるが、ビットマップで表示される要素は、すべて拡大表示となるパターン。「Retina ディスプレイに最適」の場合は、2×2画素を1画素とみなして表示されるので、ガタガタとした画像になるが、非Retinaに比べてガタガタが大きいわけではない。非整数倍の場合はそれらしく見える補間フィルタが間に入る(ややボケる)。
筆者の使うアプリケーションの中では、Pixelmatorがこれに相当する。Pixelmatorはご存じのようにPhotoshopライクな画像レタッチソフトなので、文字がきれいでもあまりお得感はないが、それでも小さな文字が見やすいのはうれしい。ただ、編集エリアを含めてビットマップ要素はすべて拡大表示される。
Pixelmator上では「このくらいかな」と画素等倍表示で確認して保存すると、Retina上のプレビューでは小さく見える、といったギャップに慣れるまで少し時間がかかった。確かにRetina非対応だが、あまり困りはしないだろう。Retinaに対応してほしいのは確かだが、AdobeのCSシリーズを含め、意外に対応アップデートの時期は早そうとのうわさだ。
しかし、Retinaの体感レベルにはもう1つある。最悪なのは、あらゆる表示がすべて拡大フィルタを通して行われるケースだ。この場合、従来とまったく同じ画素配置を拡大表示するだけとなるため、Retina上ではきれいどころか、かえってきたなく見えてしまう(情報量としては変わらない)。
複數OSにまたがったクロスプラットフォームで作られているアプリケーションに多いようで、Googleのアプリケーションはインストーラを含め、すべてダメだった(Chromeを含む)。日本マイクロソフトのOffice for Mac 2011も同様。ブラウザではFirefoxもこの分類に入るし、実はアップルのiWorkも拡大表示になってしまう。
これらはバッファ内に描画しておいて転送しているだけのように見える(そのため、全要素が拡大表示になる)が、実際にはさまざまな振る舞いがあるため、原因は1つではないのだろう。
ひとまず、Safari以外のブラウザが非対応なのは気になるが、すでにChromeは実験バージョンのChtome Canaryに高dpi時の処理が機能として加えられており、Safariと同様の美しい表示が得られている。FirefoxやiWorkの対応も時間の問題だろう。
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