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» 2012年06月26日 00時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:“Retina”はMacだけでなく、Windowsでも普及するか (1/4)

「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」が発売され、ついにPCの世界でも超高解像度ディスプレイの普及が始まった。今回はRetinaディスプレイでMac OS XとWindows 8 Release Previewの見え方を確認したうえで、今後の高dpi表示環境を考える。

[本田雅一,ITmedia]

MacBook Proに搭載されたRetinaディスプレイの価値は?

tm_1206mbpr_01.jpg 2880×1800ドット表示の15.4型ワイド液晶ディスプレイを搭載する「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」

 「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」(以下、MBP Retina)を入手し、PC USERの編集長から「これからしばらくMBP Retinaの記事を数多く載せていくので、連載でもジックリ使った感想など……」なんて言われていたのだが、レビュー記事はあまりにたくさん出ているので、ちょっと視点を変えてみたい。

 とはいえ、MBP Retinaにまったく触れないのも何なので、簡単なインプレッションを箇条書きにまとめた。

  • パフォーマンスは大変よい(だが、同じプロセッサ使ってるものなら、他も同じだ)
  • バッテリーはディスプレイ輝度を半分ぐらいに落とせば6時間以上は使えそう(場合によっては7時間)
  • キーボードのタッチは少し変化し、MacBook Airに似たものになった
  • Airと同じタイプのフラッシュストレージを採用、起動時間などは従来のAir以上に高速

 MBP Retinaは「すんごい高性能で、その割には軽量で薄型なパソコン」と言える。世の中を変えるほどスゴイ製品というわけではないが、今あるパソコンの中で最も満足度の高い製品であることは間違いない。

 超高解像度のディスプレイについては、いろいろな意見が出ているが、実物を見て最初に思ったのは「あぁ、アップルが“Retina”と呼んでいるものは、単に高解像度なだけではないのだな」ということだ。

tm_1206mbpr_02.jpg RetinaディスプレイはIPSパネルの採用により視野角が広いのもポイント

 一般的なディスプレイの解像度に対し、縦・横2倍の解像度を持つディスプレイパネルを与えるだけでなく、広視野角のIPSパネルを用い、前面ガラスと液晶面の間を樹脂で埋めることでコントラストを高め、前面ガラスには反射を70%抑えるアンチリフレクションコートが施されている。色再現域もパッと見で広く、階調性も高い。

 このように、単純に解像度を高めるだけでなく、“見え味”というスペックに現れにくいポイントにキチンと配慮して、文字通り“画の質感を高めたディスプレイ”をRetinaと呼んでいるのだ。

 付け加えると、これら高画質化の要素技術はアップルだけが採用する最新技術というわけではない。反射防止コートにしても、液晶パネル面と保護パネルの間を樹脂で埋めて気泡を取り除く技術にしろ、いずれもすでに実績のあるものばかりだ。220ppi程度の液晶パネルも、決して最新技術ではない。

 では何が価値なのか、と言えば“印刷物のようにきれいに見える”ことだ。技術はそれを実現する手段にしか過ぎない。オーディエンスに訴求する部分では、シンプルに画素数が増えたと言っているが、本当に“解像度を上げただけ”の単調なアップデートでは、ここまでの体験は得られない。訴求はスペックで、しかし製品そのものは感性から訴える。

 そんなところにアップルの製品に対するよい意味でのコダワリを感じたが、今回の本題はそこではない。

 これまで200ppiを越える高精細な液晶ディスプレイをパソコンが採用してこなかった最大の理由は、パネル生産やコストといった問題ではない。前回のコラムでも述べたように、96dpiという解像度を前提に設計されてきた、過去のソフトウェア資産が高解像度化を阻んできたのだ。

 それに対して、どうMac OS Xが対応したのか。また、MBP Retinaと同等の解像度にも対応しているとされるWindows 8において、どのようにRetinaディスプレイが機能するのかを振り返ってみよう。

“画面の広さ”と“画素数”を分けて管理し、両者の間を自動的に最適化

 まずは、ちょっと堅苦しいが、今回の記事のスタンスについて書いておきたい。

 以下の話はMac OS Xの振る舞いについて観察したもので、用語も含めてアップルが開発情報として出しているものではないことを書いておきたい。筆者はApple Developers ConnectionのiOS版に登録しているが、Mac OS X版は購入していない。またWWDCのトラックも視聴していない。これらの情報には守秘義務があるからだ。よって、あくまで様子、振る舞いを見た上での推察ということでご容赦いただきたい。

 さて、Retinaディスプレイを組み込んだMac OS Xのディスプレイ設定を見ると、解像度で「Retina ディスプレイに最適」と「サイズ調整」が選べるのが分かる。

tm_1206mbpr_03.jpg Mac OS Xのディスプレイ設定は従来とガラリと変わったデザインになった。デフォルトでは解像度選択のメニューはなく「Retina ディスプレイに最適」に設定されている

 では「Retina ディスプレイに最適」とは何を意味しているのだろうか? それを知るためには、まず「サイズ調整」の意味を知っておかねばならない。

 技術的な言い方で説明するなら、Mac OS XのRetina対応とは“OS内におけるデスクトップ描画の解像度を任意の論理dpi値に設定可能にする可変dpiに対応した上で、可変dpi非対応のアプリケーションは拡大フィルタを通して、適切なサイズで表示する機能”である。

 しかし、これではエンドユーザーはいまひとつよく分からない。そこで、従来基準でいうところの解像度は“デスクトップの広さ”として扱い、画面上の画素数(MBP Retinaの場合は2880×1800ドット)とは独立して扱えるようにした。

 「サイズ調整」とは、デスクトップの広さを決める設定だ。従来はここで、画素数を直接指定していたが、サイズ調整を変更しても“表示に使われる画素の数”は変わらない。ここで変化するのは、Mac OS X内部で管理される画面の広さ、言い換えると“レイアウト用に使う方眼紙(レイアウトメッシュ)”の目の数だ。

 レイアウトメッシュは「Retina ディスプレイに最適」の場合、1440×900マスの方眼紙に相当するものが割り当てられる。これは実際に出力される物理的な画素数の縦・横ともに半分となる。物理的な画素数とレイアウトメッシュの関係が整数倍になり、互換性を取りやすく、きれいな表示を行いやすいので“最適”というわけだ。

 一方、画面上に表示要素を並べるレイアウトメッシュを変更することもできる。上記の比率が整数倍ではなくなるため、部分的には画質が落ちる場合もある。しかし、基本的にはレイアウトメッシュの方が、物理的画素数よりも大きくなることはないため、情報の欠損はなく表示を行える。きっちり割り切ることができないため、物理的な画素にアライメントを合わせて表示することになるが、画素が極小のため、おかしなレイアウトに見えることはないようだ。

tm_1206mbpr_04.jpg 「サイズ調整」を選ぶと、デスクトップの広さを調整できる。ただし、ディスプレイ出力の画素数は変化しない。ここが従来の解像度設定と一番違うところだ。デフォルトでは1440×900のマス目で区切られたメッシュにレイアウトするよう設定されているが、一番右、最も広い設定では1920×1200のメッシュも選べる

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