インタビュー
» 2010年02月10日 19時36分 UPDATE

MWC出展の大きな目的は海外進出――京セラがLTE事業で目指すもの

京セラが「Mobile World Congress 2010」で、LTE基地局を用いたデモンストレーションを実施する。同社が「世界最小クラス」とうたう基地局を導入するメリット、そして同社が描くLTE事業のロードマップとは。

[田中聡,ITmedia]

シールドボックスで無線通信を実施

 2月15日から18日にスペインのバルセロナで開催される「Mobile World Congress 2010(以下、MWC)」で京セラが、3.9G通信規格「LTE」向け基地局のデモンストレーションを実施する。同社は2009年の「ワイヤレスジャパン2009」や「CEATEC JAPAN 2009」でもLTE基地局を紹介するパネルを展示していたが、実際に動作する基地局を披露するのは初となる。

 同社が開発しているLTE基地局は、1〜2キロメートルの広範囲をカバーするマクロ基地局と、数100メートルをカバーするマイクロ基地局の2種類があり、MWCのデモではマクロ基地局を用いる。マクロ基地局のサイズは420(幅)×230(高さ)×210(厚さ)、重さは約18キログラム。マイクロ基地局のサイズは世界最小クラスとなる420(幅)×230(高さ)×130(厚さ)ミリ、重さは12キログラム。

photo 京セラ 機器研究開発本部 横浜R&Dセンター所長 山本高久氏

 京セラ 機器研究開発本部 横浜R&Dセンター所長の山本高久氏によると、「ライセンスの問題をクリアするのが難しいため、今回は電波を遮断した、冷蔵庫ほどの小さなシールドボックスにアンテナを設置して無線通信を行います」とのこと。デモでは、ハイビジョン映像のストリーミング再生や、(上りと下り双方の)テレビ電話、ブラウジングなどを行う。通信速度は、10MHzの帯域幅で2×2 MIMOを用いて下り最大75Mbps、上り最大21Mbpsとなる見込み。

小型化と低消費電力化でコストを低減する

 今回のLTE基地局のコンセプトは「運用コストと設置コストの低減」。山本氏によると、京セラ独自で高効率のパワーアンプを用いることで低消費電力化と小型化を実現できたという。「今回のLTE基地局は、20数キログラムのPHS基地局よりも小さく、カバンに入れて1人でも持ち運べます。メンテナンスもしやすく、運用コストの低減につながります」と山本氏はアピールする。

photo 京セラ 執行役員 通信機器関連事業本部 副本部長 兼 通信機器統括営業部長 勝木純三氏

 低消費電力化で節電できるのはもちろん、小型化によって基地局の設置コストを削減できるメリットも生まれる。京セラ 執行役員 通信機器関連事業本部 副本部長 兼 通信機器統括営業部長の勝木純三氏は「これまで2人や3人で運んでいた基地局が1人で運べるようになるのは(人件費の面で)大きい。これはトータルコストを考える上では重要なこと」と話す。

 無線干渉を回避する技術も採り入れていることも特長だ。「マクロセルだけでは、エリアを構築しても高速通信の提供は難しく、(通信事業者は)マイクロ基地局を加える必要があります。ただ、マイクロセルやマクロセル、将来的にはフェムトセルなどが混在すると、無線干渉が問題になります。それを回避するために、3GPPの中で標準化されたSON(Self Organizing Network※初期設置時の環境設定などを自動化する技術)を採用しています。ヘテロジーニアスな(異種間の)ネットワークの中でも、基地局間通信をうまく使って干渉を回避できるので、積極的に標準化を進めていきたいと考えています」(山本氏)

まずはKDDI向けにLTE事業を展開、海外は北米で導入予定

 LTE事業のロードマップについて、勝木氏は「一緒に開発している経緯もあり、基本的にはKDDIさんとの取り組みを優先していきます」と説明。あわせて、海外市場への進出も目指す。「MWC出展の主な目的は海外進出。やはり海外の方が“数”を期待できますし、現在いろいろなキャリアさんと話を進めています。今は北米での商用サービスに向けて動いていますが、将来的には、より規模の大きい中国やインドも視野に入れています。京セラが部品事業で全世界のキャリアさんとお付き合いがあることも強みになるでしょう」(勝木氏)

photo 京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング推進部 責任者 藤本英明氏

 LTEサービスは日本でも2010年中に開始される予定だが、京セラ製の基地局が使用される時期は、サービス開始当初よりも後になる模様。「ほとんどのキャリアさんは、既存の基地局に併設か増設をする形でLTEエリアを構築するでしょう。その後、対応エリアを拡大する際に、京セラの基地局を増設するといった流れを想定しています」(山本氏)

 2009年に開発したプロトタイプから大幅な小型化に成功したという新しい基地局は、商用サービスに導入できる“完成形”に向けて一歩前進したと言える。とはいえ、山本氏は「パワーアンプの最終的な調整など、まだ課題はいくつか残っています」と話す。京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング推進部 責任者の藤本英明氏も「今回は動作サンプルを初めて公開する、いわば最初のステップです。商用サービス向けに導入するまでは、まだステップはたくさんあります」と話した。MWCの展示を通して得た通信事業者の声を、今後の開発に生かす構えだ。

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