そもそも、「Android」って何?EvAndroidに聞くAndroidのキモ 第1回(2/2 ページ)

» 2010年03月19日 07時00分 公開
[ITmedia]
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Androidの歴史

 Androidが誕生する経緯をたどると、アンディ・ルービンという人物にいき当たります。ルービン氏は2003年10月にモバイル端末向けソフトウェアを開発するAndroid社を設立し、同社は2005年にGoogleに買収されます。そして、2007年11月、OHAからモバイル機器向けプラットフォーム“Android”が発表されました。ルービン氏は現在、GoogleでAndroidのプロジェクトを率いています。

 同氏は光学機器メーカーのCarl Zeiss AGのソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートし、1989年にAppleに入社。その後、1990年にAppleからスピンオフする形で設立されたGeneral Magicに転職し、Magic Capと呼ばれるOSを搭載した無線機能付きPDA「Motorola Envoy」の開発に携わりました。Magic Capは、Desk(机)、Hallway(廊下)、Downtown(街)といった、機能がメタファー化された仮想世界の画面をタッチパネルで操作するというユニークなユーザーインタフェースを採用していたほか、同社の開発した通信言語「Telescript」によってネットワークに接続し、チケット予約などの高度な作業をユーザーに代わり実行する“エージェント”機能を備えた先進的なOSでした。「Google Developer Day 2008」で来日したルービン氏へのインタビュー記事では、クラウドを活用したエージェントとしてのAndroidの姿が語られていますが、こうした思想の原泉はGeneral Magicでの経験にあるのかもしれません。

 Magic Capの事業は失敗に終わりましたが、その後、ルービン氏はQuickTimeを手掛けたスティーブ・パールマン氏が1995年に設立したアルテミス・リサーチ(後のWebTV)に転籍し、2000年には携帯機器向けソフトウエアを開発するDangerを創業、T-Mobileの人気端末「Sidekick」のソフトウェアを開発しました。そして、長年モバイルデバイスのプラットフォーム開発に関わってきた同氏が2003年に設立したのが、Android社だったのです。

 ちなみに、前述した来日インタビュー記事では、ルービン氏がロボットやハードウェアをこよなく愛していることや、Androidがロボットより人に近い“アンドロイド”のような存在になることを期待している様子がうかがえます。Google自身が販売する端末として話題を集めている「Nexus one」の名前は、SF映画「ブレードランナー」の原作としても有名な、フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に出てくる人造人間「ネクサス6型」(Nexus six)に由来しているという説もあります。

モバイルプラットフォームとしてのAndroidの特徴

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 では、モバイルプラットフォームとしてのAndroidの個性はどんなところにあるのでしょう。NTTドコモのHT-03Aを使ってみると、まずGoogleアカウントの作成、もしくは既にある自分のアカウントとの同期から端末のセットアップが始まります。GmailをはじめとするGoogleの各種インターネットサービスと端末が連携し、例えばGoogleマップのアイコンをタップすれば、現在地と連動した地図画面が表示されます。このように、クラウドサービスと連携・同期するための“窓”として端末を利用できるのが標準的なAndroidの特徴と言えます。もちろん、Googleのサービスを取り除いてカスタマイズすることも可能で、例えば中国の通信事業者・中国移動が開発するAndroidべースのプラットフォーム「OPhone」は、Googleサービスとの連係機能が取り除かれ、代わりに独自開発したサービスを組み込んでいるといいます。

 アプリ開発者にとっては、短期間での開発や公開が可能になる点が1つの特徴です。例えばiPhoneのApp Storeでは、Appleの審査を受けなければアプリは公開できません。審査を通過する基準や期間が不透明で、この点に多くの開発者が不満を持っています。一方、Googleが提供するAndroidマーケットでは、開発者登録を行えばアプリをすぐに公開できます。2月28日に行われた東京マラソンでは、同イベントのためにAndroid アプリ「トーマラ」が配信されましたが、こうしたイベントアプリの公開もAndroidでは比較的容易に行なうことができます。また、個人の開発者においては、思い立った瞬間、他人のアプリに触発された瞬間の熱量をアプリに注ぎ込み、すぐさま公開できることがモチベーションのアップにつながることもあるでしょう。(ただし、審査のないAndroidマーケットでは、アプリの安全性に対する不安が残ります。悪質なアプリに対する報告機能が設けられ、ポリシーに違反するアプリはGoogleが削除することになっていますが、一方でキャリアなどが独自に審査・管理するマーケットを展開する動きもみられます)

 Android SDK(ソフトウェア開発キット)の中にはフレームワーク(アプリケーションを作る際に頻繁に使われる機能をまとめたもの)があらかじめ含まれており、開発の短期化に貢献します。また、Androidの大きな特徴である「Intent」という仕組みも、使い方次第で素早い開発を実現します。

 Intentは、端的に言うとアプリケーション間の連携やデータの受け渡しを行う機能です。連携する相手(アプリケーションやWebサービス)をあらかじめ指定する“明示的Intent”に加え、連携する相手の条件のみを指定して、その条件に合ったアプリが自動的に名乗りを挙げる“暗黙的Intent”の2種類があります。

 いわば、Android端末という会社の中で、アプリという社員が互いの能力を持ち寄ってサービスを作るイメージです。「○○君にこの作業を任せる」というのが明示的Intentであり、「うちの会社に△△がしたい人はいないかな?」とチームメイトを募るのが暗黙的Intentです。開発者が「こういう依頼が来たときは協力しろよ?」とアプリにあらかじめ言い聞かせておくことで、すでに端末内にあるアプリはもちろん、将来的に“入社”してくるアプリとのマッシュアップが可能になります。

 このIntentを活用すると、他のアプリと連携することで自分のアプリを積極的に使ってもらったり、必要な機能を他のアプリに肩代わりしてもらったりと、さまざまな相乗効果が見込めます。例えば「QR2Tweet」というアプリでは、QRコードで読み取った文字列をGmailなどのテキストを扱うアプリに受け渡す機能が提供されていますが、このアプリ自体には“QRコードを読み取る”という機能は実装されていません。Intentを発行し、端末内にあるQRコード読み取りアプリに処理を肩代わりしてもらい、読み取った文字列を再びIntentで任意のアプリに受け渡します。こうしたIntentの活用により、同アプリは数時間で開発されマーケットに公開されました(参考記事)。また、米Adobe Systemsはオンライン画像編集アプリ「Photoshop.com Mobile for Android」の機能をサードパーティー製Androidアプリでも利用できるようにしましたが、これはIntentを使って実現しています。

 多くのEvAndroidがIntentの機能に魅力を感じており、さまざまな活用方法を模索しています。次回は、このIntentを使ったアプリやサービスの可能性などを、EvAndroidとともにひもといていこうと思います。


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