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» 2010年03月31日 17時11分 UPDATE

ケータイSIMロックの解除、LTEでも課題あり――KDDIの古賀氏

携帯電話のSIMロック解除に関する議論が再燃する中、KDDIがSIMロックの現状と解除に向けた課題を解説する説明会を開催。携帯キャリアがそろってLTEを採用しても、SIMロック解除に向けた課題は多いという。

[後藤祥子,ITmedia]

 携帯電話のSIMロック解除に関する議論が再燃する中、KDDIがSIMロックの現状と解除に向けた課題を解説する説明会を開催した。

 3.9Gの通信方式については、携帯電話の通信キャリアがそろってLTEを導入すると決めたことから、SIMロック解除に向けた検討が再開しつつあるが、LTEの時代になってもキャリア間の周波数帯の違いや音声通話技術などの問題があり、“ことはそう簡単ではない”というのがKDDIの見方だ。

Photo SIMロックの現状と解除に向けた課題を説明するKDDI 海外・広報本部 渉外部長の古賀靖広氏

2007年のモバイルビジネス研究会から3年、議論再び

 そもそもSIMロック解除の問題は、総務省が2007年に開催した「モバイルビジネス研究会」の議題の1つとして取り上げられていた。

 日本の通信キャリアが販売するSIMカードと携帯電話端末は紐付けされており、例えばドコモのSIMをauのケータイに差し込んでも利用できない。これは端末にSIMロックがかかっているためだ。

 欧米では、SIMカードと端末を自由に組み合わせて使える場合がほとんどで、KDDI 海外・広報本部 渉外部長の古賀靖広氏によれば「SIMロックは販売奨励金を通信料金で回収するための手段として、一定期間ロックをかけるのが一般的」だという。

sa_sim03.jpgPhoto 日本は通信キャリアのSIMカードと端末が紐付けられているが、欧米では自由に組み合わせて使える

Photo 各携帯キャリアのSIMカードの状況。3Gではauのみ通信方式が異なり、ドコモやソフトバンクモバイルの通信方式と互換性がないため、SIMロックを解除しても端末は使えない

 2007年、モバイルビジネス研究会では、ユーザーメリットや端末メーカーの国際競争力などの観点からさまざまな議論が交わされたが、日本では通信キャリア独自のサービスに対応する端末をメーカーが開発するのが一般的で、1台の端末で複数キャリアのサービスを使うことを想定されていなかったことや、キャリア間でEメールやWeb、アプリの互換性がないこと、3GについてはNTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMA方式、KDDIがCDMA2000方式を採用するなど通信方式が異なり、SIMロックを解除しても端末を使えないケースが出てくることなどから結論は先送りされ、総務省は2010年に市場環境をふまえて再度検討すべきとしていた。

※お詫び:初出時に「NTTドコモとKDDIがW-CDMA方式」と記載されていましたが、正しくは「NTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMA方式」です。

 その後、日本で携帯事業を展開する通信キャリアが、相次いで3.9Gの通信方式としてLTEを採用すると発表し、携帯キャリアで唯一、異なる通信方式を採用していたKDDIも3.9GではLTEを採用すると発表。“3.9GはLTE”ということで足並みがそろい、4月2日には総務省がSIMロックに関する公開ヒアリングを行い、再度SIMロックの解除に向けた検討が始まることになっている。

通信方式は同じでも、周波数帯や音声技術が異なる

 モバイルビジネス研究会でも、LTE時代になれば、同じ仕様に標準化されて、SIMロックを解除しても使えるようになるのではないかという声が挙がっていたが、古賀氏はさまざまな問題があると指摘する。

 1つは周波数帯の問題だ。LTEは携帯4キャリアが導入を予定しているが、利用する周波数帯が異なり、どのキャリアでも使える端末を開発するためにはすべての周波数帯に対応させなければならない。2つ目は音声通話の仕様の問題。LTEの音声通話は、LTEのデータ通信の上に載せる方法もあれば、3Gネットワークを使う方法もあり、全キャリアが同じ方式にするとは限らない。異なる方式になった場合には、音声通話が使えない可能性もあるという。

 そして一番大きな問題は、端末に搭載された通信キャリアの独自サービスが、事業者間の競争につながっている点だ。日本では、通信キャリアが端末からサービス、通信料金までをパッケージで提供しており、メーカーはそれに合った端末を開発している。例えばauの子供向けケータイ「mamorino」は、防犯ブザーを鳴らすと自動的にセコムに通報が入り、現場に緊急対応員が駆けつける機能を備えているが、これはサービスと端末、ネットワークを連携させたサービスであり、SIMを差し替えて使えるようにしても、他キャリアに同様の仕組みがなければ、同じような使い方はできない――といった具合だ。

 事業者ごとに通信方式や周波数帯、サービス仕様が異なる中、すべてに対応する端末ができればSIMロックを解除する意味もあるが、現状ではそれは難しく、端末開発は市場の競争にゆだねるべきというのが古賀氏の見解だ。「端末メーカーが、それぞれのキャリアのサービスに対応する端末を作らなければならないのはハードルが高い。エリアや運用時期の問題などもあり、ユーザーに不便なく使ってもらえるようになるのはいつなのか」(古賀氏)

 ただ、KDDIとしては「絶対(SIMロックを)外すのはいやだ、という立場ではなく、また、積極的に外していく考えがあるわけでもない」(古賀氏)というスタンスで、課題に対する検討を進める方針だ。

Photo 3.9Gの展開計画。キャリアごとにサービス開始時期やエリア展開、利用する周波数帯が異なる

 SIMロックの解除に向けた課題については、VoIP技術の進化やマルチモード端末向けチップセットの登場など、技術で解決できる部分もありそうだが、ビジネスモデルや企業間の競争に関わる課題については慎重な検討が求められそうだ。

sa_sim08.jpgsa_sim09.jpgPhoto 各国のSIMロックの概況。米国ではSIMロックの解除を義務化する規制はなく、キャリアの自主判断にゆだねられている。英国でも2002に、SIMロック解除を強制するガイドラインが廃止された

SIMロックフリーのメリットを享受できるのは、メーカー主導型モデル

 携帯端末の開発モデルは多様化しており、通信キャリアの仕様に合わせてメーカーが端末を開発するモデルのほかにも、iPhoneやKidleのように1メーカーが統一仕様の端末やサービスを開発・提供するモデルや、Android端末のようにオープンなプラットフォームの上に通信キャリアが独自のカスタマイズ領域を付加するモデルがある。

 今後、メーカー主導型モデルでSIMロックフリーの端末が登場すれば、ユーザーがメリットを享受できる環境になることもある、というのが古賀氏の見方だ。

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