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» 2010年10月15日 12時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:スマートフォン戦線拡大中――「GALAXY S」「GALAXY Tab」を投入するドコモ (1/2)

2010年冬商戦を前に、注目のスマートフォンが各キャリアから発表された。ドコモは“iPhone追撃の象徴”ともいえるSamsung電子のGALAXY Sを投入し、布陣を厚くする。

[神尾寿,ITmedia]

 2010年冬商戦を前に、キャリア各社が相次いでスマートフォンの発表を行った。KDDIがシャープ製の「IS03」、NTTドコモがSamsung電子製の「GALAXY S」と「GALAXY Tab」の記者会見を実施。ソフトバンクモバイルは記者会見は行わなかったものの、先日ロンドンで発表されたHTCの「Desire HD」を発売すると発表した。ドコモとソフトバンクモバイルは冬商戦向けにさらに多くのスマートフォンを投入する計画であり、今回の発表は両社のスマートフォン戦線の先兵ともいえる。

 2010年も大詰めになり、日本でも本格化してきたコンシューマー向けスマートフォン市場。冬春商戦を前に、すでに混戦模様となりつつあるこの新市場の動向をリポートしたい。

Samsungの旗艦モデルで好調iPhone/iPadを牽制

 “スマートフォン”が注目の今期。業界最大手のドコモは、Samsung電子製の「GALAXY S」(SC-02B)と「GALAXY Tab」(SC-01C)の投入を大々的に発表した。

Photo GALAXY S/Tabの発表会でその魅力を語るNTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏

 Android 2.2を搭載したSamsung製のGALAXY Sは、米欧では“iPhone追撃の象徴”のようなハイエンドモデル。Appleに何度も秋波を送りながらiPhoneやiPadの獲得に失敗してきたドコモにとって、GALAXYシリーズへの期待は大きい。記者会見でもNTTドコモの山田隆持社長が、「(GALAXY Sは)iPhoneとも十分渡り合えると確信している」と熱っぽく語った。

 ドコモの社長自らが“一押し”するのは無理もない。GALAXY Sは、最大の特徴である「4.0インチ ワイドVGA表示(480×800ピクセル)対応のスーパー有機EL(SUPER AMOLED)」を筆頭に、高性能な独自デバイスを満載。スペック的に見れば、今のスマートフォン市場の中でも間違いなくトップクラスだ。厚さを9.9ミリに抑えて、重量も約118グラムと軽量に作られている。GALAXY Sは自社のデバイス開発力や生産能力の高さを生かした“モノ作りの力”でライバルを圧倒しており、かつての日本メーカーの製品のようだ。「全世界での販売台数が500万台を突破している人気モデル」(山田氏)という実力は伊達じゃない。

 一方、GALAXY Tabは、巷間では「iPadの対抗馬」と見られがちだが、実際の使い勝手や印象はiPadとは別物だった。やはり違いが大きいのが、そのサイズ感。iPadの画面サイズが9.7インチであるのに対して、GALAXY Tabは7インチ。手にしたときの感覚は、iPadよりふたまわりほど小さい。厚さ12.1ミリ、重量約382グラムはポケットにいれて持ち歩くには少々無理があるが、女性がハンドバッグにいれてサッと取り出すには最適なサイズだ。1024×600ピクセルの画面解像度はiPadより低いものの、一般的なWebサイトを見るには必要十分。Flashにも対応しているため、インターネット端末としての使い勝手はよい。

Photo 左がSamsung電子の「GALAXY Tab」、右が「GALAXY S」

GALAXY Sの実力・店頭競争力は?

 周知のとおり、今の端末販売市場においてiPhoneの好調は根強い。特に激戦区である都市部の家電量販店での人気は著しく、「iPhoneの人気や注目度には衰えが見られない。ユーザーの認知度も高くなり、売りやすい商品になってきた」(家電量販店幹部)という。GALAXY Sは、この“iPhoneの1人勝ち”に対抗できる仕上がりになっているのだろうか。

 まず、GALAXY Sの機能・性能が高いことは間違いない。スーパー有機ELの色再現性はすばらしく、特に写真や動画で見比べると、ライバルに対する優位性は明らかだ。画面サイズが4インチと大きく存在感がある一方で、iPhone 4よりも薄く軽いというのは、店頭で見比べたときに有利な点である。もし仮にGALAXY Sが家電量販店やドコモショップで大量に実機展示されたら、この「ディスプレイ」の部分だけでも高い店頭競争力になるだろう。

 全体的な動作も速く、日本語入力も含めてキビキビと動く。画面の拡大・縮小やスクロール処理の速さやスムーズさも、iPhone 4にかなり追いついてきていた。今回は記者会見後に試用した程度なので、バッテリー駆動時間やアプリを導入しての評価はできなかったが、サクサク感や画面のきれいさは、これまでのAndroid端末の中でも随一だ。

 しかし、コンシューマー向けスマートフォンは機能・性能がすべてではない。デザインや質感がどれだけ優れているか、も重要である。

 このデザイン・質感の面で見ると、GALAXY Sは今ひとつパッとしない。高性能なデバイスを厚さ9.9ミリのスリムボディにまとめたパッケージング力はすばらしいが、その反面、触れたときの質感や見た目の高級感ではライバルに引けを取る。今のトレンドである金属パーツを使わなかったのはデザインコンセプトや軽量化の点で致し方ないにしても、塗装の質感や細部のパーツへのこだわりが、AppleのiPhone 4やHTCのDesire HD/Desire Zなどに比べて明らかに低いのだ。同じ樹脂製ボディだったiPhone 3GSと比較しても質感の低さは明らかであり、手に収めた時の心地よさや満足感で負けている。デザインにも強い個性がなく、iPhone 3GSを薄く伸ばしたみたいだ。せめてカラーバリエーションがあればよかったのだが、それもない。GALAXY Sはスペックが高い優等生だが、デザインで人々を魅了するには個性と洗練が足りないだろう。

 もう1つ、筆者が不満だったところがある。日本語まわりのUIだ。日本語フォントや日本語表示時の画面レイアウトが美しくなく、「日本語表示へのこだわり」を感じない。ベースがグローバルモデルなので赤外線通信やおサイフケータイへの対応ができなかったのは致し方ないとしても、日本語表示・日本語入力の部分は日常的な心地よさに直結する部分だけに、もっとしっかりと作ってほしかった。

 やや手厳しいことも書いたが、GALAXY Sの基本性能は高く、十分な実力を持っていることは間違いない。ただし、同機の優位性は“実機を触らないと分からない”のも事実である。そのため発売後の「売り場作り」や「店頭プロモーション」の重要性は高い。またGALAXY Sの特長であるスーパー有機ELの強みを生かすには、動画コンテンツ配信への注力も必要だろう。ドコモ側がどれだけGALAXY Sの魅力を引き出す環境整備ができるかが、成功の鍵と言えそうだ。

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