習熟の対象となる項目にはどんなものがあるだろうか。
それらを短期間で習熟させていくためにはどんな方法があるだろか。それぞれの習熟度は、どのようにして観測・測定できるだろうか。習熟のための期間は、どのような考え方で、どのようにスケジュールの計画に反映させているのだろうか。
これは分かっているようで、実際の場では意外とキチンとはされていない。“10日遅れている”という現状だけで済ませてしまっている場合が多い。「完了はいつになるか?」という観点から、現状を見てみる必要がある問題だ。
もし、現時点で予定の速度に戻っていれば、最終時点でも10日の遅れのままになる。じりじり速度が落ちてきているようなら、最終的な遅れはもっと大きくなる。
逆に速度が予定より上がってきているようなら、10日の遅れくらい取り返せる可能性もある。現状が深刻な状況か、それほどでもないかは、全体の最終目標への影響度からの評価が必要になる。
工数や時間で解決できる“量的”問題の対策はまだ考えやすい。
新たな作業力の投入やスケジュールの延長が主な対策になるが、新しいメンバーを加える場合には、その人たちへの説明や教育などに負荷が発生するため、多くの場合、短期的にはさらに遅れを発生させる。
つまり、増員を判断する際には、その後の計画全体を見直したうえで決定する必要がある。
対応ベースでの要員の逐次投入は、絶対避けるべき施策だ。勝てる戦いも勝てなくなる典型的負け戦のパターンに陥る。
また、ポイントは、“量”に起因する問題には“量”の対策、“質”に起因する問題には“質”の対策をすることだ。
しかし、“質”の問題に“量”で対応しようとするなど、現実はそのようになっていない場合が多くある。
遅延した原因を取り除いても、遅れは戻らない。作業スピードは戻っても、元のスピード以上には速くならないからだ。
さまざまな調査結果によると、多くの企業では、ある一定以上の規模のプロジェクトでは工期遅れ(従ってコストオーバー)が常態化している。そのプロジェクトの関係者は「最初から無理な計画」という。その課題で無理でない計画なら、どこがどう違っていただろうか。あるいは、本当に自由度がなかったのだろうか。
一般的には、工期(納期)とコストは所与だろう。仕様は大まかなものはあっても、それほど具体的ではないのが普通だ。仕様は、最初から、工期やコストに合わせて作るという考えはないのだろうか。
かつてのベテランのSEの中には、「そんなことまでやると、コストがオーバーするよ」とユーザーをどう喝(?)して、スリムなシステムを予定の工期・コストで納めていた人がいた。システムの全体イメージとコストが一体となって頭の中にあったのだろう。
いま、仕様の取りまとめをするときには、工期やコストは頭の中になく、仕様を取りまとめてから、工期やコストを見積もりした結果、さらに悪い場合は作業を進めてみて、その結果に慌てる。そして、慌ててユーザーに仕様の“切り捨て”をいい出すという、ユーザー(顧客)を敵に回す「負け戦パターン」に陥っているのではないだろうか。
結果的には、最初の話より、工期は延び、コストは膨らんでいるケースが多い。それなら、なぜ最初から、適正な内容の計画で着手できないのだろうか。
公江 義隆(こうえ よしたか)
情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)
元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる
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