米Qualcommは7月1日(現地時間)、米国サンディエゴで開催された開発者向けイベント「Uplinq 2010 Conference」で、新たなAR(Argmented Reality、拡張現実)サービスを紹介し、デモを実施した。
これまでのARサービスは、「セカイカメラ」をはじめ、GPSやモーションセンサーなどを利用して端末の位置情報と方位を検出後、周囲の情報を閲覧し、タグなどを投稿できるアプリが定着している。位置情報を利用するARサービスが“現実の空間”に焦点を当てるのに対し、Qualcommが提案するARアプリは“目に見える特定のもの”に焦点を当てる。Qualcommは“vision-based”(視覚ベースの)ARと呼んでいる。
Qualcommは2010年初頭にオーストリアに研究所を設立し、ARとその関連技術の開発を進めている。Qualcomm CEOのポール・ジェイコブス氏は6月30日(現地時間)の基調講演で、2010年秋に新しいARのプラットフォームとSDKを提供することを明かした。さらに、米UnityがAR技術を使った3Dゲームの拡張ツールを提供し、開発者が容易にARゲームを制作できる環境を整える。
Uplinq 2010 Conferenceでは、QualcommのARプラットフォームと、Android端末向けUnityの拡張ツールを用いたゲームのデモが披露された。米MATTELが開発したゲームは、以前は玩具として発売されていたロボットのバトルゲームをAR化したもの。ゲームを遊ぶのに必要なのは、ARアプリをインストールした端末と、カメラで写し出す「紙」。この紙にはゲームの情報がインプットされており、カメラで写すとロボットのキャラクターが画面に現れ、リングの中でバトルが可能になる。カメラはオートフォーカスに対応している必要がある。また、Bluetoothで通信をすれば、2台の端末で対戦もできる。
なお、このMATTELのゲームはモーションセンサーには対応しておらず、端末を傾けてキャラクターを移動させるといったことはできない。これは「(端末を傾けることで)センサーがキャラクターを見失ってしまう恐れがあるため」(説明員)だという。
「ゲーム情報は紙の数千ものポイントにインプットされている」(説明員)とのことだが、端末を引いたり、角度を変えたりする必要があるなど、スムーズに読み取るには少々コツが要る印象だった。読み込む紙の大きさには制限はなく、A4程度の用紙でもOK。紙を携帯していれば、場所を選ばずにARアプリを楽しめる。説明員は「ボードゲームやカードゲームの代わりになるのでは」と話していた。
このほか、Unityの「PENELOPE」というデモゲームも紹介された。カメラでマップ(紙)を読み取るとキャラクターが画面に現れ、画面に触れると、マップの中にある仮想空間を自由に動ける。端末を紙から離したり近づけたりすると、マップのアングルが変わり、自分がマップ上のどこにいるのかを把握できる。
7月2日(現地時間)に開催されたARの講演では、Qualcommがアプリ開発者向けのコンテスト「AR Developer Challenge」を開催することも発表された。開発者には、SDKが提供される今秋からアプリ開発を進めてもらい、2011年1月までにアプリを提出してもらう。受賞者は2011年2月14日に開催予定の「Mobile World Congress」で発表される。受賞者の賞金はFirst prizeが12万5000ドル、Second prizeが5万ドル、Third prizeが2万5000ドルとなっている。
同社はゲームのほかに、メディアや広告、教育、ナビゲーション、ハウツーなどの分野にもARアプリの可能性は広がるとしている。
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