“真のHDR撮影”が可能――ドルビーが「JPEG-HDR」ベースの新画像技術を公開:Mobile World Congress 2012

» 2012年03月07日 00時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 ドルビーラボラトリーズが、スマートフォン/タブレット向けの新しい画像技術をMobile World Congress 2012で発表した。同社は「JPEG-HDRを基にしたドルビーの新画像技術」と説明しており、ブランド名などは設けていない(現在未定)。HDRの正式名は「ハイダイナミックレンジ」。明るさの異なる複数の写真を合成してダイナミックレンジ(明暗の範囲)を広げることで、白く飛んだり黒くつぶれたりせず、人間の視覚に近い写真を撮影できる。HDR撮影自体は多くのデジタルカメラやiPhone 4/4Sをはじめとするスマートフォンでも採用されているが、ドルビージャパン 事業開発部 マネージャーの勅使川原智氏は「現在のHDR撮影は真のHDRではない」との認識を示す。では、ドルビーの技術にはどんな新しい特長があるのか。

 ドルビーのHDR撮影は、モルフォの「Morpho Full HDR」という合成技術を採用しているのが特長1つ。通常のHDR撮影では露出の違う3枚程度の画像を合成することで明暗を調整する。Morpho Full HDRも3枚程度の画像を合成するのは同じだが、これに加えて手ブレでぼやけた画像の位置を正確に合わせる「位置合わせ機能」(手ブレ補正)と、被写体の動きを検出して輪郭が重ならないようにする「ゴースト除去機能」(被写体ブレ補正)を採用している。モルフォはケータイやスマートフォンのカメラに採用されている手ブレ補正技術を開発していることでも知られ、この技術を生かした形になる。なお、Morpho Full HDRはTexas Instruments製アプリケーションプロセッサ「OMAP」に対応しており、モルフォはスマートフォンへの搭載を目指すとしている。

photophoto ドルビーのHDR撮影技術には、モルフォの合成技術「Morpho Full HDR」が使われている(写真=左)。画像の位置を正確に合わせる機能(写真=右)
photophotophoto 撮影中に動いた被写体の輪郭をブレないように補正する「ゴースト除去機能」も備える
photo 現状のHDR撮影の課題

 もう1つの特長が「フォーマット」だ。現行のHDR撮影でJPEG保存するには、トーンマッピング処理により、RGBの各色で16ビット(6万5536階調)強から8ビット(256階調)に減らす必要がある。一方、「JPEG-HDR」フォーマットを採用する新技術では、後述するドルビー独自のエンコードとデコードにより、既存のJPEGファイルと互換性を持ちながら、RGBそれぞれで16〜32ビット(1677万7216階調)という人間の視覚に近い出力が可能になる。「新フォーマットはJPEGと互換性を確保しつつも、HDRのデータを余すことなく保存して、結果として通常のJPEGでは実現できない本来のダイナミックレンジを保存できる」と勅使川原氏は説明する。

 ドルビーの新技術では、まずMorpho Full HDRによって撮影したHDR画像(32ビット)をエンコードし、ベース画像(8ビット)と、輝度比率や(本来の色に戻すための)色差を含む残差画像を保存する。20〜30%ほどに圧縮することで、トータルのファイルサイズは1.2〜1.3倍ほどで保存できるという。勅使川原氏は「非常に幅広いダイナミックレンジを持ちながら、大きなサイズにならずに保存できる」と胸を張る。その後、独自アルゴリズムのデコードによって最大32ビットのHDR画像が出力される。MWCのデモでは、保存された写真をタップすると、その部分の露出が自動補正され、HDR画像が出力された。つまりユーザーは撮影→保存→表示という3ステップを踏むことになる。出力した画像を別途保存/共有するなど、その後の使い方は端末メーカーに委ねられる。

photophoto 他社のHDR撮影対応スマートフォンと、ドルビーの新技術を比較(写真=左)。「JPEG-HDR」フォーマットは2004年に発表されている。現在はドルビーが知的財産権を所有し、研究開発を続けることで商用化に至った(写真=右)
photophoto ドルビーが開発したエンコードとデコードによって最大32ビットのHDR画像を表示できる(写真=左)。撮影→保存→表示という3ステップでHDR画像を見る(写真=右)
photophotophotophoto MWCのDolbyブースには、HDR撮影専用カメラとビュワーを備えた端末が展示されていた(写真=左端、左中)。画面をタップすると明るさが補正される(写真=右中、右端)
photophoto タブレットのデモも行っていた
photo 新画像技術のメリット

 ドルビーはこの新技術を端末メーカーにライセンス提供する。2012年内に同技術を搭載したスマートフォンを投入できるよう「すでにメーカーとの話し合いは進めている」(勅使川原氏)とのこと。MWCに出展していたこともあり、国内外を問わず、幅広いスマートフォンメーカーへの採用を目指す。端末メーカーはスマートフォンの標準カメラアプリに同技術を組み込む形になり、ユーザーはHDR撮影をするのに専用アプリを使う必要はない。HDR画像を見るためには専用のビュワーが必要で、これはメーカーがプリセットすることになる。ビュワーのない端末では、8ビットのベース画像が表示される。このほか、アップロードした画像をサーバ側でデコードしてHDR画像をさまざまな機器で見られる、クラウド連携サービスの提供も視野に入れている。

 既存のスマートフォンにアップデートなどで新技術に対応させることは、「カメラのハードウェア制御を最適化する必要があるため厳しい」(勅使川原氏)とのこと。JPEG-HDRを表示できるビュワーアプリのみを提供することは可能だという。

 2012年後半のスマートフォンからの搭載が予想されるドルビーのJPEG-HDRベースの新技術。写真の撮影、閲覧、共有をさらに発展させる新たなトレンドが生まれるかもしれない。

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