インタビュー
» 2012年08月16日 08時30分 公開

ソーシャルがインフラとなる日:ウェザーニュースタッチ 「空でつながる」コンセプトの真相(後編) (2/2)

[松村太郎,ITmedia]
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人の感覚をビッグデータに変え、分析可能にする

 ウェザーニューズは企業として、どのようなプラットフォームを目指しているのだろう。ここにも、ウェザーリポートによって蓄積しているノウハウやコミュニケーションが関係してくる。大きな流れで見れば、人の感覚と数値という気象予報のトレンドのよりもどしのような感覚かもしれない。

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 「数値による天気予報は、始まって100年ほどになります。それまでは天気予報は空を見て予測し、長期予報は虫や植物を見て予測しました。五感をフル活用して観察しながら天気を知ってきた時代から、人の感覚を気象観測のデータにアウトソースして精度を高めてきたのがこの100年の出来事です。ビジネスとして、より詳細な観測データによって気象予報の精度を1%向上させるためにこれからの10年間を使うより、前に挙げたコミュニケーションの充実によって、気象そのもののダイナミックさ・危険さ・美しさを人々が知る10年にすべきだと考えています」(石橋氏)

 アプリで空を見るよう促すコミュニケーションも、より空に敏感な人を増やしていくための施策と言える。しかし、モバイルによって集められる人の感覚は確実に気象予報を変えつつあるという。例えば、ゲリラ雷雨では危険な現象に発達しそうな雲を事前に発見して詳しく解析する材料になっているし、ある種類のリポートが2キロ四方の範囲内に集まっていたら天気に何%の変化が生じる、という相関を数値的に見出すまでになってきているそうだ。こうした観察者の情報が1日に3万件集まるようになると、データが質を作りその精度を高める。

 数値をベースにした予報を否定するわけではなく、これまで持っていなかったデータとマッシュアップさせることで、より分析の精度を上げ、早い危機予測を可能にすることにつながっているという。しかしただ単に数値解析を行うだけでなく、観察する部分、そして集まってきた情報を分析する部分でそれぞれユーザーと気象予報士の手が介在する。

 空を見る、というコンテキストを持った人々を育てると同時に、観測データだけでなく生の人の声から気象を解析する気象予報士を育てなければならず、「楽をしてはならない世界」と石橋氏は指摘する。同時に、独自のセンサーなどを配布して3000カ所の観測点をユーザーの手で運営してもらっている。人と機械で良いデータを作ろうという発想は、ビッグデータの1つの方向性になるのではないか。

 例えば、ゲリラ雷雨を起こしそうな雲を捕らえたウェザーリポートが集まったエリアにあるセンサーの紫外線量の変化を調べてみたところ、今まで気付かなかった相関関係が発見できたという。雲が厚くなるため、紫外線量が急激に減っていたのだ。こうした気づきが日々もたらされ、たくさんのビッグデータ解析のための仮説が生まれ続けている。ただデータを持っているだけでなく、こうした土壌を作ることが、ビッグデータを生かすビジネスにつながる。

気象プラットフォームとしてのイノベーションを世界に

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 ウェザーニューズのウェザーニュースタッチは、モバイル、スマートフォン、ソーシャル、クラウドソーシング、ビッグデータといったトレンドのキーワードを抑えて成長しているサービスとみることもできるが、今後は気象データを有するプラットフォーマーとしての展開も考えているという。特に、米国の政府機関が持っているデータを積極的に公開する「Government 2.0」の動きや、Google、Apple、Amazonなどの世界を席巻するプラットフォーマーの動きにも注視している。

 ウェザーニューズは、船舶向けに気象情報の提供と航路のアドバイスを行うBtoBビジネスを中心に、ケータイサイト、Webサイト、アプリなどで個人向けに気象情報やさまざまな減災情報を提供するBtoCビジネスを展開しているが、今後は、天気予報だけでなく、気象を切り口として地球の息吹を感じ、自然と共生するといった価値観をリードしていく役割も重要になると考えているという。空や自然の変化を見ることで、かつて人間が体感や経験から得ていた気象の変化の兆しを、多くの人が感じられるようになってほしいと石橋氏。現在日本で展開しているモバイル向けサービスを、海外向けにも展開することを検討しているのも、四季と梅雨があり、地震や火山が多い日本だからこそできる提案だと石橋氏は語る。

 人が介在するビッグデータを持つウェザーニューズは、これまでBtoBでも結びつきが少なかったスマートグリッドやスマートホーム、スマートヘルスケアといった分野の企業とのプロジェクトの検討も進んでいるそうだ。同時に、ウェザーニューズが持っているさまざまなデータを、他の企業やユーザーが活用できるようにする仕組みにも期待したいところだ。地域ごとの特性や、アプリ、UI(ユーザーインタフェース)の視点からこれらのデータを取り扱うアプリが増えることもまた、プラットホームの強化につながるはずだ。

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