リクルートの内定者“ミラクル☆ガールズ”が開発――プレゼント動画アプリ「MINMOO」ありそうでなかったアプリ

» 2014年02月08日 01時30分 公開
[田中聡,ITmedia]

 リクルートホールディングスが2月2日、プレゼント動画を作成できるiPhoneアプリ「MINMOO(ミンムー)」を配信した。利用料金は無料。

 このアプリの特徴は、離れた場所にいる友だちや家族がアップロードした動画をつなげて、1本の動画を作成できること。動画の作成前にFacebookの「友達を招待する」で友だちを選ぶと通知が行き、その友だちは、自分が撮影した動画を追加できる。1人1人が動画をアップするだけで1本の動画にできるので、面倒な編集作業はいらない。

 アプリには「誕生日」「送別会」「その他」のテンプレートが用意されており、自分やみんなが撮影した動画とテンプレートをつなげると、アニメーション付きの動画作品が出来上がる。

 1人が撮影できる動画は「5秒」か「10秒」で、1本あたりの動画で作成できるのは、最大で3分弱。5秒の動画なら、30人ほどが参加できるので、送別会用に、クラスや部署全員の動画を作成することもできそうだ。なお、端末に保存済みの動画は選べず、あらためて撮影する必要がある。

 最後に動画のタイトルと、招待した友だちが動画をアップする締め切りを決める。締め切りの日時になったら動画は自動で完成となる。完成した動画はアプリトップの「完成済み」に表示され、カメラロールに保存したり、Facebookにシェアしたりできる。

photophotophoto テンプレートを3つの中から選ぶ。実は「その他」が一番人気があるという(写真=左)。Facebook経由で、動画をつなげたい友だちを誘う(写真=中)。1人あたりが撮影できる動画は5秒か15秒(写真=右)
photophotophoto 動画のタイトルと締め切りを決める(写真=左)。動画を追加して完成(写真=中)。本体に保存したり、Facebookにアップしたりできる(写真=右)
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 通常ならここで記事は終わりだが、このアプリには面白いバックグラウンドがある。

 実はMINMOOは、リクルートの内定者4人がゼロから手がけたアプリなのだ。リクルートには、「ニューリング」と呼ばれる新規事業提案制度があり、年に1回、社内で新規事業を提案することができる。もともとは社員向けの制度だったが、現在は内定者にも開放しており、2013年の内定者で手を挙げた女子大生4人のアイデアが見事に採用された。

 MINMOOを開発しているチーム名は「ミラクル☆ガールズ」。え、ミラクル……ガールズ? アイドルも顔負けなチーム名だが、れっきとしたアプリ開発のチーム。彼女たちはコードも書けば、サーバも自分たちで管理しているし、営業や広報もこなす。

photo 「ミラクル☆ガールズ」のメンバー。左上から古川愛さん(ブルー)、平田淳さん(グリーン)、王夢さん(イエロー)、丹下恵里さん(レッド)。戦隊ものを意識して衣装や決めポーズにもこだわった。頭に装着しているのは「ねこガール」の猫耳

LINEのグループチャットで呼びかけて集まった

 ミラクル☆ガールズのメンバーは、東京大学 文学部 4年の丹下恵里さん(レッド)、中央大学 理工学部 4年の古川愛さん(ブルー)、東京大学大学院 学際情報学府 修士2年の王夢さん(イエロー)、津田塾大学 学芸学部 情報科学科 4年の平田淳さん(グリーン)の4人。リーダーの丹下さんが広報や営業を含む、全体のマネージメントを担当する。古川さんはサーバの管理、王さんはアプリの開発を行う。そして、3人が「スーパーエンジニア」と呼ぶ平田さんは、サーバに上がった動画をつなげる、いわばMINMOOの肝ともいえる部分を担う。唯一、外部スタッフを起用したデザイナーも、古川さんの友人である大学生を起用した。

 4人が集まったのは全くの偶然で、内定者が登録しているLINEのグループチャットで、丹下さんが「今日が(ニューリングの)締め切りだね。やりたい人、いる?」と呼びかけたところ、ほかの3人が手を挙げたそうだ。このときは2013年8月半ばごろで、半年ほどでアプリの配信にこぎ着けた。「お互い何ができるか、何に関心があるか、何も知らない状態でチームを組みました。でも、組んでみたら、意外とバランスがよかったんです」と丹下さんは振り返る。

photophoto プロデューサー/UXデザイナーの丹下さん(写真=左)。サーバエンジニアの古川さん(写真=右)
photophoto iOSエンジニアの王さん(写真=左)。iOS&サーバエンジニアの平田さん(写真=右)

地元の友だちに、結婚式を祝ってもらいたい

 なぜメッセージ動画に着目したのか。丹下さんは「私たち、全員が地方出身なんですけど、東京で結婚したら、地元のみんなが結婚式に来てくれるかどうかが心配で……という世間話がきっかけです。遠くにいても祝ってほしいので、サービスを立ち上げました」と話す。ほかに「ネット上のサブ結婚式」アプリも考えたそうだが、最終的に動画に決めたのは「お祝いに特化した動画サービスが、あまりなかったから」(丹下さん)

 一番苦労したことは、全員が「卒論との両立です」と声をそろえる。「アプリ開発が佳境を迎えた12月から1月にかけては、卒論も追い込みの時期だったので、大変でした」と古川さんは苦笑いする。

正直、めちゃくちゃ評判はいい

 2月2日に晴れてApp Storeで配信となったMINMOO。「正直、めちゃくちゃ評判はいいです」と丹下さんは満面の笑顔。「みんなで動画を作ってメッセージを集めるニーズは、大学生で特に大きいんです。特に今の時期は、先輩が卒業するとか、お疲れ会をやったりとか、使われやすいですね」と話す。自分たちが大学生だからこそ、学生がスマホアプリで求めることを察知して具現化できた。編集いらずで動画をつなげられる“簡単さ”も受け、高校生にもよく使われているそうだ。

 「離れた場所にいる友だちがアップした動画をつなげるサービスが、ほかにはなかったんです。『ありそうでなかった』とみんな言ってくれますね」(丹下さん)

MINMOOの今後は?

 4月以降、彼女たちはリクルートホールディングスの社員になる予定だが、MINMOOアプリの今後はどうなるのか。広報部 社外広報グループの三宅諒氏は「ニューリングの一次審査で4人の作品が通過したので、ひとまずリリースした形です。ここから先は、ユーザーの反応や結果を見ながら、どこまで事業として注力していくのかを検討していきます」と話す。

 「今回は間に合いませんでしたけど、遠くに住んでいる祖父母や親戚に送るための、年賀状のテンプレートも考えていました」と王さんが話すように、テンプレートの増加や、Android版の開発(現時点では未定)などにも期待が募る。彼女たちの次の“ミラクル”も見てみたい。

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