通信回線から端末、販売までを一手に手掛け、「キャリア型MVNO」を目指すフリービット。8月7日には、新たな一手として、東京に販売店を作ることを発表した。また、これに合わせて端末も一新。5型から5.5型にディスプレイを大型化し、バッテリーも2000mAhから2500mAhに増量した「PandA 3rd Lot」を発売した。
freebit mobileは、インターネット事業を手掛けるフリービットがMVNOとして提供する通信サービス。ドコモから回線を借り受け、3G網でサービスを提供している。料金は月額1000円。3Gながらデータ量に制限がないのも特徴だ。IP電話サービスがセットになっているほか、回線交換方式の電話を利用できるオプションも用意されている。
端末はこれまで2機種wo
発売しているが、これも自社で企画したもの。初代PandAは11月に発表されており、3月にはデザインや筐体はそのままに、CPUなどのスペックを上げたセカンドロットに置き換えられていた。これらに続く端末が、PandA 3rd Lotとなる。同社は販売店のことを「ATELIER(アトリエ)」と呼び、端末と同様、プロデュースを建築家の迫慶一郎氏が行っている。12月には福岡に、5月には名古屋に、そして満を持して東京の渋谷に「ATELIER freebit渋谷スペイン坂」をオープンさせた。
冒頭述べたように、フリービットは通信回線、端末、販売を一手に手掛けており、ここを強みとしている。代表取締役社長の石田宏樹氏は、「詳しい人には(端末と回線を別々にするのも)いいが、車に例えるとエンジンと車体をバラバラに調達して、それを量販店で売っているようなもの」と、既存のMVNOの取り組みに対して疑問を投げかける。
一方で、回線を貸し出す側のキャリアは「(新料金プランが出て)いろいろな言葉が乱発されているが、本当に安くなっているのか」と石田氏が言うように、料金の高止まりする傾向にある。既存キャリアの特徴である分かりやすさと、MVNOの低廉な料金を両立させたサービスがfreebit mobileというわけだ。
サポートにも力を入れる。同社はサポートセンターから端末を遠隔操作できる「SiLK Touch」と呼ばれる仕組みを整えており、これによって実験的にテレビショッピングも行った。アカウントの初期設定から遠隔操作で行えるため、初心者でも気軽にスマートフォンを使い始められる。石田氏も「70歳を超えるうちの母が自分で電話を買い、端末のセットアップを遠隔で終了させた」とそのクオリティに自信をのぞかせる。こうした取り組みを通じて、freebit mobileは「3年以内に120万契約」を目指す。
ただし、まだ課題もある。1つは回線が3Gであること。通信回線や端末がLTEに対応していないなど、世界有数の都市である東京でどのような成果がでるのかは未知数だ。通信の快適さを考えると、現在LTEを利用しているユーザーが3Gに戻るのは考えにくい。特に都市部では、3Gの混雑度が高いためユーザーの不満につながる恐れもありそうだ。
フリービットのサービスがLTEに対応しないのは、主に「端末のバッテリー」のためだという。端末も月額1000円で提供できるよう、価格が抑えられているため、「バッテリーの持ちをよくしようとすると、端末のコストが上がって非効率的になってしまう」。石田氏が「3GとLTEの切り替えがもう少しでなくなる」と話しているように、ドコモのLTEエリアがもう少し広がった段階で、LTEのみに対応した端末を提供していく考えだ。
また、東京進出に伴いテレビCMにも力を入れているが、「どれだけ知っていただけるかが重要。知ってもらえないと選択肢に上ることができない」と述べているように、知名度向上も今後の課題だ。とはいえ、MVNOが乱立する中、回線、端末、販売、宣伝のそれぞれが差別化されており、明確な特徴は打ち出せている。今後の動向に注目しておきたいMVNOの1社と言えるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.