やっぱり、孫社長は面白い。
8月8日、ソフトバンクは2014年度第1四半期の決算説明会を開催。
この説明会で、孫社長のスタンスがこれまでとは大きく違っていたのに驚かされた。「まるで別人か」と思わせるほど、発言内容はこれまでと180度異なっていたのだ。
ソフトバンクと言えば、長年、純増数ナンバーワンをアピールしていたが、今回、「純増数は追わないのか」という質問に対し、孫社長は「純増数は形骸化していた」と語り出した。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年8月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
続いて「純増数のカウントのなかに実態と合わないものがあると感じていた。M2MやMVNOで利益が出ないのも一つの純増。我々もみまもりケータイやフォトビジョンも1本と数えられる」と言い放ったのだ。
あれほど、純増数を追いまくり、フォトビジョンやみまもりケータイ、3G通信機能を搭載した体組成計まで作っていた過去は何だったのか。ソフトバンクショップの店員が聞いたら、ビックリしてアゴが外れてしまいそうだ。
総務省ではクーリングオフの導入を目指している。クーリングオフが導入される背景にあるのには、ショップで説明されたものの理解できずにそのまま契約してしまう事例や、フォトフレームなどの不要なものまで契約され、解約できないという状況を改善するという狙いがある。
クーリングオフが導入されれば、真っ先にソフトバンクに影響が出そうな感がある。
筆者は孫社長に「クーリングオフが導入されると、フォトフレームが売れなくなるのでは」と質問したところ、孫社長は「消費者保護の観点は必要ではないか」と、フォトフレームが売れなくなることも受け入れる構えを見せたのだった。
また、総務省ではSIMロック解除義務化の方針も明らかにしているが、孫社長はこれまで「SIMロック解除は需要がない」と頑なに拒否をしていた。
しかし、8日の会見では「SIMロック解除も、かねてより機能的にも提供すべきだと思っていた」と語ったのだ。
あまりに発言内容が過去と異なるため、改めて突っ込むと孫社長は「SIMロックを解除された端末をあえて欲しいと思っている人はいない。SIMロックが解除されたiPhoneはアップルから出ている。しかし、ほとんどそれは売れていない。
iPhoneを6〜8万を出して買いたい人はおらず、我々は2年契約で無料で売っている。SIMロック解除されたiPhoneで、SIMカードを出し入れている人がどれだけいるのか、数で証明されている。それはいまも昔も変わりません」と語ったのだった。
確かに正論なのだが、孫社長がSIMロック解除に理解を示したと言うことは、2年間の割賦払いを完了した端末について、SIMロックを解除してもいいという方針転換をした、ということでいいのだろうか。
今回の決算会見、ほとんどの記者が「T-Mobile US買収断念」について孫社長のコメントが聞きたくて集まったようなものだった。
しかし、孫社長は「特定の会社について、今まで一度も正式なコメントをしていない」と一蹴。確かに、自ら「T-Mobile US」という言葉は発していなかったのだが、「2強よりも3社体制のほうが健全な競争環境になる」と語っていただけに、もうちょっと突っ込んだ答えをしてくれても良かったように思う。
もしかすると、孫社長としては、コメントをするとなると買収断念の負けを認めるようで悔しいのかも知れない。
ただ、孫社長のような立場で、時流を読み、180度、発言内容を変えられるというのは立派な経営者のように思える。普通はプライドが邪魔をして、主張を変えたくても変えられないものだが、孫社長は実に小回りがきく感がある。
ただし、孫社長の発言を取材し、記事に起こすメディアの立場からすれば、これほどまで発言内容が変わってくると、発言一つ一つが信用できず、どうしてもうがった見方をせざるを得なくなってしまうのだ。
どのメディアでも、ソフトバンクに対しての記事が厳しめになる傾向が強いが、「孫社長の発言を鵜呑みにして大丈夫なのか」という記者の不安から来ているような気がしてならない。
本当に、孫社長の発言は、どこまで信用して読者に伝えたら良いのか、わからなくなってくるのだ。
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