リクルートが提供するエンタメキュレーションアプリ「KOLA」、不動産情報アプリ「SUUMO」、ショッピングアプリ「ショプリエ」のiOS版がApple Watchに対応した。
Apple Watchは今日、4月24日に発売されたばかりの新しいウェアラブルデバイス。海の物とも山の物ともつかないものにチャレンジし、いち早く対応するのは並大抵のことではないはず。
そこで、各アプリに携わっている担当者に話を聞いた。今回、ご協力いただいたのは、KOLAを担当するリクルートホールディングス メディアテクノロジーラボ 新谷和久氏、SUUMOを担当するリクルート住まいカンパニー ネットビジネス推進室 ネットビジネス企画開発部 スマートデバイス戦略開発グループ 徳永優作氏、リクルートライフスタイル プロダクトデザインユニット UXデザイン3グループ 中村華江氏の3人。
―― まず、皆さんがどのようにアプリに携わっているかを教えてください。
新谷氏 エンタメキュレーションアプリ「KOLA」のUX(ユーザーエクスペリエンス)設計とクリエイティブ全般を担当しています。
:中村氏 来店するだけでリクルートポイントがたまる「ショプリエ」アプリのディレクターを担当しています。
:徳永氏 「SUUMO」アプリの企画を担当しています。新機能の追加やUI/UXを日々磨きこんでいます。
―― Apple Watchでは、どのような機能に対応しているのですか。
新谷氏 Apple WatchはiPhoneとユーザーの“前後”をつなぐ役割を果たします。具体的にはiPhoneで再生している音楽を操作したり、フォローしているアーティストのイベント情報を適時に表示したりします。
中村氏 通りかかった店のクーポンを受信したら、Apple Watchで表示して、(クーポンを)使うところまでできてしまいます。財布やiPhoneをカバンから出さなくても良いんです。
徳永氏 散歩しながら住まいと出会う機能が使えます。あらかじめ住まいの条件を設定しておけば、街を歩くだけで一定の距離ごとに条件に合致する近くの賃貸物件をApple Watchに通知してくれます。
―― Apple Watchは“初物”で、対応する上で苦労することも多かったと思います。そのあたりのお話を聞かせていただけますか。
新谷氏 ユーザーインタフェース面ですね。(Apple Watch対応アプリ開発上の)ガイドラインの解釈と、それに合わせた最適な表示を実現するのが大変でした。KOLAアプリは鮮やかなイメージがありますが、表示する情報量とバッテリーの持ちを考えて、Apple Watchでは黒基調の表示にしています。
中村氏 文字サイズの調整は苦労しました。あと、やりたいことをどこまで実現できるのか、というのも苦労した点です。例えば、iPhoneではチェックインしたときに音(ビーコン)を検知するのですが、Apple Watchではできません。まだ、やりたいことを全然実現できていないので、Apple WatchのAPI追加などを機会にして、「できること」をどんどん増やしていきたいです。
徳永氏 実は、(Apple Watchで)何ができるのかが明らかになっていない状態で企画を始めたのです。そのため、仕様が公開されたあとに「できること」に関する試行錯誤を繰り返したのが苦労した点です。結果、(4月24日に間に合わせるということもあり)まずは「通知」をキーワードとして企画や開発を進めていくことになりました。
―― さまざまな苦労があったんですね。そんな中でも発売日に対応が間に合った秘訣(ひけつ)は何ですか。
新谷氏 (Apple Watchへの)対応を決定したのは(2014年)12月下旬でした。「これに対応する価値がある!」と判断すれば、すぐ動くことができる(会社の)雰囲気があったから、発売日に間に合わせることができたのだと思います。
中村氏 アプリのエンハンス(機能拡張)で「何をする?」という話になったとき、その場で「Apple Watchに対応させたい!」と意見を出したところ、上司が即断して対応が決定しました。それが2月だったのですが、組織の風通しが良いので、スムーズに事が進みました。
徳永氏 私が所属するリクルート住まいカンパニーのスマートデバイス戦略開発グループは、Apple Watchに限らず、日々新しいものを取り入れ、いろいろなことを考え、企画のストックをたくさん持っています。実は10月ごろから、「Apple Watchに取り組んでみよう」と開発側とも話をしていたのです。上司から(アプリの企画に関する)権限委譲もあり、スムーズに進めることができました。
―― ITmedia Mobileの読者にはAndroidスマホユーザーも少なくありません。Android Wearへの対応はいかがでしょうか。
新谷氏 KOLAは最近Android版が出ました。iOS版におけるApple Watchと同様、Android版でもAndroid Wearに対応すべく開発を進めているところです。
中村氏 まずは、「ウェアラブルデバイスの大本命」といわれているApple Watchから始めました。アプリとしてはAndroid版もあるので、今後のAndroid版アプリのエンハンスの過程でAndroid Wearにチャレンジすることはあり得ます。
徳永氏 実は個人的にAndroid Wearを身につけているんです(笑)。今後はAndroid版SUUMOでのAndroid Wear対応も考えていきたいと思っています。
―― 最後に、Apple Watchを含めたウェアラブルデバイスに対する意気込みを聞かせてください。
新谷氏 今までになかったデバイスに出会うチャンスはそうそうありません。そういったものには「デフォルト」(標準)はありません。そこにチャレンジして経験を積み、新たなスタンダードを作っていきたいと思います。
中村氏 ショプリエは、リクルートの中でも新規事業という位置付けです。Apple Watch対応を始めとする新しいデバイスにチャレンジすることで、新しい知見を得て、ユーザーの皆さんに還元したいと思います。
徳永氏 ウェアラブルデバイスによって「能動」から「受動」という新しい体験ができるようになりました。この体験で、より良い住まい探しのお役に立ちたいと思います。
インタビューを終えて、リクルートグループ全体に貫かれている「チャレンジ精神」に非常に感銘を受けた。Apple Watchだけではなく、「Android TV」など、新しいものをどんどん取り入れ、サービスに生かしていくことは一朝一夕でなし得るものではない。リクルートのウェアラブルデバイスサポートは、今後も拡大していく予定だそうなので、期待したい。
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