クーリングオフ、2年縛り……販売代理店が抱える問題とその対処法とは?ワイヤレスジャパン 2015

» 2015年05月30日 21時01分 公開
[佐野正弘ITmedia]

クレーム撲滅を目指す全携協の取り組み

photo 全携協の竹岡氏。ティーガイアの代表取締役社長でもある

 ワイヤレスジャパン3日目の5月29日に実施された「携帯電話代理店向けビジネスセッション」では、携帯電話の販売代理店ビジネスを展開する企業や団体の代表者によって、代理店ビジネスが抱える課題や問題対処に向けた取り組みなどについて議論がなされた。

 最初に登壇したのは、携帯電話販売代理店最大手であるティーガイアの代表取締役社長執行役員であり、2014年12月に発足した全国携帯電話販売代理店協会(全携協)の会長に就任した竹岡哲朗氏。全携協の代表としての立場から、その設立の経緯と全携協の取り組みについて説明した。

 全携協が設立した背景にあるのは、総務省が2014年、携帯電話販売に関する苦情が増えていることを受け、ショップの店頭で販売している携帯電話に対してもクーリングオフを導入しようとしたことだ。結果的にクーリングオフの導入は回避されたものの、そもそもそうした方針が打ち出された要因として竹岡氏は、総務省やクーリングオフを検討していたワーキンググループの人たちに、携帯電話ショップの運営スタイルや仕組みを知る人がおらず、販売の現場が見えていなかったことが大きかったと話している。

 そこで携帯電話の販売現場を見える化し、どのようなクレームが寄せられているのか販売する側で把握することで、増え続けている携帯電話関連のクレームに対し改善を進めていくため、全携協が設立されたのだという。それゆえ全携協の運営において重要なのは、加盟しているショップに寄せられる苦情を収集し、分析することでクレームを減らしていくことになるそうだ。

 実際、移動通信サービスに関する苦情・相談件数は年々増え続けており、2014年は1万8642件にも達していることから、この苦情を減らすことが全携協の大きな目標となる。ただしその中身を見ると、携帯電話の買い方相談など必ずしも苦情とは限らないことから、まずは苦情を集めて分析するところから始めているとのことだ。実際、2015年3月から加盟各店舗から寄せられた苦情をデータベースにまとめる作業を進めており、データが集まり次第分析を進め、どのような形で公表していくかを話し合っていくとのことだ。

photo 移動体通信に関する苦情は毎年増え続けており、それがクーリングオフ導入の議論へとつながった
photo 全携協では現在、各ショップからの苦情をデータベースに蓄積しており、今後それらの分析を進め改善を進めていくとのこと

 ちなみに全携協の設立時点では会員が12社で、キャリアショップ全体に占める割合が48%だったが、6月に実施される第1回社員総会時には42社、全体の56%にまで増える予定とのこと。さらに「2015年度末には100社以上、割合にして70%以上の参加を見込んでいる」と竹岡氏は話す。

photo 全携協は設立当初12社が参加したが、2015年度中に100社以上の加盟を目標にしているそうだ

日本一のドコモショップの運営ノウハウとは

photo ホンダ自動車販売の斎藤氏は、ドコモショップ富士吉田店の店長を務めていた経験もある

 続いて登壇したのは、ホンダ自動車販売の執行役員 ドコモ販売部長である斉藤光一氏。同社はドコモショップの多くのコンテストなどで“日本一”の実績を誇る「ドコモショップ富士吉田店」を運営しており、その運営ノウハウについて説明がなされた。

 斎藤氏は、ドコモショップ富士吉田店がショップ運営で大きな実績を残しているものの、そこに何らかのテクニックがあるわけではないという。キャリアショップ業界は、働いている人のうち女性が6割を占めるなど、ほかの業界にはない特徴があるのに加え、多くの人が最初からショップスタッフを目指して入社しているわけではないという。それゆえ給与などのハード的要因ではなく、いかに内在的な取り組みで社員のモチベーションを上げる環境構築をしていくかが重要だとしている。

photo ドコモショップ富士吉田店は、全国コンテストなどで多くの好成績をおさめている

 斎藤氏が挙げた施策の1つが、結果だけでなく努力を“見える化”すること。通知表を作って数値で評価できない業務以外での頑張りを店長らが文章で評価したり、「尊敬」「協調性」などでスタッフの内面を評価し、それを昇進へとつなげることで「見てもらえている」という信頼感を与えながらスタッフのモチベーション強化につなげているのだそうだ。

photo スタッフの業績だけでなく、日常の気づきや内面性をコメントで評価することにより、信頼性を高めつつモチベーションを上げることにつなげている

 もう1つ、斎藤氏が重視しているのが、スタッフ同士を巻き込むことによる二重管理体制の構築だという。「新規」「店頭販促」など店内での重要な施策ごとに“班”スタッフを配置する一方、各施策を横断したスタッフで“チーム”も結成。担当が異なるスタッフ同士がチームを組むことにより、チームの目標を達成するため各分野で協力体制を敷くなど、スタッフ同士を巻き込んで協力しながら仕事を進めることで、上司に指示されて仕事をやらされているのとは異なり、自主的に考えて仕事をするようになるのだそうだ。

photo “班”と“チーム”によってスタッフを二重に分類し、それぞれに目標を持たせることによって、チーム内で互いを巻き込みながら協力して仕事ができる仕組みを用意

ショップ側は“2年縛り”の問題をどう考えているのか

 会場では最後に、野村総合研究所のICT・メディア産業コンサルティング部 上席コンサルタントの北俊一氏と、登壇した2氏によるパネルディスカッションが実施された。中でも多くの時間が割かれていたのが、キャリアのいわゆる“2年縛り”に関するもの。総務省が2年縛りに関する非公開のタスクフォースを立ち上げるなど、2年縛りの存在自体に対する風当たりが強まっている昨今。実際に商品やサービスを販売している代理店の側は、2年縛りについてどのように考えているのだろうか。

 斎藤氏は、2年縛りに批判が集まる理由として、「やはりユーザーが2年縛りを理解していないことが大きい。店頭でユーザーとしっかり対話してその内容を伝えていけば、ネガティブなところだけに目が行ってしまうことはないのではないか」と話し、ショップ側がユーザーと対話を進めながら2年縛りのケアもしていくことで、問題解決につなげられると話している。

 竹岡氏も同様に、「やはりユーザーに理解してもらうことが重要。2年縛りには高額な端末が安価に購入できるメリットもある。そうしたメリットとデメリットをきっちり話して、選択できるようにすることが重要だ。我々が合意形成のプロセスをより丁寧にやっていかなければいけない」と話している。やはりショップという現場でのコミュニケーションの在り方が、2年縛りの与える印象を大きく変える鍵になるといえそうだ。

photo パネルディスカッションでは“2年縛り”の問題や、キャリアショップのあり方などについて議論がなされた

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