iPhoneは「格安SIM」がお嫌い?:MVNOの深イイ話

» 2015年08月10日 06時00分 公開
[堂前清隆,ITmedia]

 日本のスマートフォン市場の中で最も存在感が大きいのは、間違いなくiPhoneでしょう。「格安SIM」で盛り上がるMVNOサービス利用者の間でも、iPhoneはもちろん注目を集めています。特に2014年9月のiPhone 6/6 Plusの発売時に、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアと同時にAppleストアで正式な「SIMロックフリー版iPhone」が発売されてからは、MVNOのSIMカードとiPhoneを組み合わせて利用する人がとても増えています。

 そんなiPhoneですが、残念ながらMVNOのSIMカードと組み合わせた場合に不思議な動作をすることがありました。この記事を執筆している現在は大きな問題にはなっていませんが、過去に実際にあった事例では「MVNOのSIMでは通信ができなくなった」ことや、「iPhone本体はLTEに対応しているはずなのに、なぜか3Gで接続されてしまい、LTEが使えない」ということが発生していました。こういうトラブルは、3大キャリアの契約では起こりません。どうしてMVNOのSIMカードでだけこんなことが起こるのでしょうか?

photo iPhoneにMVNOのSIMカードを挿すと、うまく通信できない場合が多い

iPhoneを取り扱うということ

 日本の3大キャリアは、AppleからiPhoneの供給を受け、自社のショップで通信契約とセットでiPhone本体を販売しています。各携帯電話会社は、単にiPhoneを販売するだけでなく、Appleとの間でiPhoneについての詳細な情報交換を行っていると思われます。例えば、iPhoneの通信部分についての詳しい仕様の開示を受けたり、発表前の製品やiOSを入手して自社の通信設備と問題なく通信が行えるかの事前確認です。場合によっては、このような情報を元に自社の通信設備の修正を行うこともあるようです。

 また、iOSの中には各携帯電話会社固有の設定が埋め込まれています。これは、携帯電話会社が提供した情報を元にAppleがとりまとめているもので、「キャリア設定」と呼ばれています。iPhoneにSIMカードを取り付けると、SIMカードを発行した会社に合わせた設定が自動的に読み込まれるようになっています。

 こういった情報の交換や設定の埋め込みは、日本ではiPhone取り扱いキャリアのみが可能であり、MVNOでは行われていません。この点が3大キャリアととMVNOで異なるポイントです。

photo ドコモ回線を利用したMVNOのSIMカードを挿入すると、ドコモのキャリア設定が自動で読み込まれる

キャリアとMVNOの違い

 ここまでの説明を読んで「MVNOが使っているSIMカードはキャリアのものと同じだから、問題ないのでは?」と感じられた方もいらっしゃるかと思います。その指摘は正しく、MVNOのSIMカードをiPhoneに取り付けた場合、MVNOが利用しているキャリアのSIMカードと同じ設定が読み込まれます。ところが、これが逆に混乱をもたらしているのです。

 MVNOの通信設備はキャリアの設備と一部が別になっているため、通信のための設定も一部が異なります。例えば「APN」という項目は、MVNOであるIIJmioのSIMカードを利用する場合「iijmio.jp」としなければなりません。しかし、先程の「キャリア設定」からドコモの設定が読み込まれてしまうため、それだけではMVNO用の設定が行えません。このため、各MVNOが配布する「APN構成プロファイル」というファイルを読み込ませて、設定を上書きする必要があります。

photophoto 「キャリア設定」からドコモの設定が読み込まれてしまうため、APN構成プロファイルを読み込ませる必要がある

 ところが、この「APN構成プロファイル」を読み込ませても、通信が安定しないということがありました。冒頭に書いたとおり、通信が全くできなかったり、LTEで接続されなかったりという現象です。この現象は、長らく原因が分からなかったのですが、2015年7月になって、「キャリア設定」に含まれているキャリア向けの設定が想定外のところで有効になっていることが原因であると分かりました。また、APN構成プロファイルにパラメータを追加することで、その問題を回避できることも分かり、ようやくこれで安定して通信ができるようになりました。

 MVNOでもこうした問題を少しでも解決するために、独自に調査、解析を行っていますが、キャリアと比べるとできることが限られます。また、仮に問題が見つかったとしても、iPhoneを取り扱っていないためAppleとの情報交換が行えず、問題の修正がすぐには行われないこともあります。こうした事情があって、MVNOのSIMカードでiPhoneを使うときにトラブルが発生しがちなのです。

iPhoneのトラブルが目立つわけ

 このような通信に関する問題は、iPhoneだけで起こっているわけではありません。Androidスマートフォンでも類似の問題が発生していることが、私たちIIJの調査で分かっています。

 iPhoneはAndroidと比べると、1つの機種の普及台数がとても多いのが特徴です。このため、ひとたびiPhoneで何か問題が発生すると、とても多くの方に影響が出るため、皆さんの話題に上りやすいという傾向があります。

 また、iPhoneは発売後に行われるOSのアップデートがAndroidと比べて頻繁です。OSのアップデートにより新しい機能が追加されるのは喜ばしいのですが、アップデートの際に、今までに起こらなかったトラブルが新たに発生してしまうこともあるようです。

 MVNOのSIMカードでiPhoneを使いたい方には少し心配な状況ですが、MVNOによっては自社のSIMカードをiPhoneで使う場合の動作確認状況を公開していますので、そういった情報を参考にすることでトラブルを回避することができます。

著者プロフィール

photo

堂前清隆

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 技術広報担当課長

「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手がけてきました。


基本情報から価格比較まで――格安SIMの情報はここでチェック!→「SIM LABO」

格安SIM、SIMロックフリースマホのすべてが分かる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月09日 更新
  1. 資産3000万円以上が対象 MUFG「エムット」最上位サービスと“年会費無料”アメックス・プラチナの魅力とは (2026年10月08日)
  2. 楽天モバイルの「ローミング継続」条件は本当に「エリア外」だけ? 2社のマップから見えた“食い違い” (2026年10月08日)
  3. 「iPhone 18 Pro Max」を試して分かった進化と課題 想像以上に“使えた”可変絞り搭載カメラ (2026年10月09日)
  4. 新コード決済「teppay」はどこで使える?  エキナカ施設からコンビニ、ファミレス、ECまで一挙案内 (2026年10月07日)
  5. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  6. ソニーが小型マイク「ECM-AX10」発表 スマホに挿して立体的で臨場感のある音の収録を (2026年10月09日)
  7. 富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは? (2026年09月22日)
  8. Boseが有線イヤフォン市場に再参入 ノイキャン搭載で約1.7万円の「Bose Noise Cancelling Wired Earbuds」 (2026年10月08日)
  9. KDDIのローミング縮小でも「やめる理由にはならない」 楽天モバイルユーザー4人が語る本音と“経済圏”の囲い込み (2026年10月05日)
  10. フリービット創業者の石田宏樹CEOが辞任 子会社の株式取得で「利益相反」などの指摘を受け (2026年10月07日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー