Windows 10の登場からやや遅れる形で、ついにWindows 10 Mobileが、その姿を見せようとしている。マウスコンピューターが開発した「MADOSMA」の登場まで、長らくWindows Phone不在の状況が続いていた日本市場でも、動きが顕在化している。今回は、Windows 10 Mobileの今後の展望と課題をまとめていきたい。
「Windows Phoneは、ここ数年展開してこなかったが、社長に就任してから、一番多い質問の1つが、『スマートフォンをどうするのか』というものだった。今回、晴れてその時期が来た」
大きなサプライズとして受け止められたこの発言は、日本マイクロソフトの平野拓也社長から飛び出したもの。同社は、Windows 10搭載デバイスをお披露目する記者会見で、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの展開を発表した。
もともと、Windows 10 Mobileを搭載したスマートフォンは、FREETELブランドでおなじみのプラスワン・マーケティングなどが開発を表明していたが、これらに加えて、新たに3社が名乗りを上げた。長らく不在だったWindows Phoneだが、ここにきて、一気に6社がそろう格好になった。
新たに加わるメーカーは、PCメーカーとしてソニーからスピンオフしたVAIO、海外ではWindows Phoneを展開しているAcer、そして、iPhone向けの周辺機器などを手掛けてきたトリニティ(Trinity)だ。端末の詳細は未定ながら、各社とも開発は進められており、遅くとも2016年早々には端末が登場する見込みだ。また、平野氏が「ほかのメーカーさんも関心を持っている」と語っているように、6社以外にも、Windows 10 Mobile搭載端末を出すメーカーが出てくる可能性もある。
Windows PhoneやWindows 10 Mobileを搭載した端末が急増した(する)背景は、以前この連載でも取り上げたとおり(→「MADOSMA」に続くスマホも――日本で再びWindows Phoneが登場した理由)。Microsoftが端末の開発に必要な要件を大幅に緩和し、Android端末とハードウェアを共通化できるようになった上に、PCとスマートフォンの両方で動作するユニバーサルアプリが加わり、アプリのエコシステムが強化される見込みが立ってきたというのが、主な理由だ。特に、Windowsは法人市場では圧倒的なシェアを持つだけに、スマートフォンとアプリを共用化できるメリットは大きい。
日本特有の事情としては、2014年から急拡大しているMVNOと、その回線で使うSIMロックフリー端末の市場ができつつあるという点が挙げられる。これに伴い、大手家電量販店ではSIMロックフリー端末を扱うコーナーが増え、MVNO自身も端末を取り扱うようになった。市場規模という点ではまだまだ小さいが、キャリアからの販売がほぼ唯一の販路だったころよりも、メーカーにとっての自由度は格段に増している。
実際、VAIOは「当社初のスマートフォンで、法人向けの、シンプルなスマートフォンとしてやっていく」(同社広報)とのことで、まずは法人市場に狙いを定めていることが分かる。日本通信製でVAIOのブランドを使ったAndroid搭載の「VAIO Phone」は、「格安スマホのど真ん中」として華々しくデビューした(そして、それゆえにネガティブな反響も大きかった)が、それとは一線を画した端末になるようだ。
Acerも、こうしたSIMロックフリー端末の市場拡大を受け、日本に参入する1社だ。同社は、10月21日にAndroidスマートフォンの「Liquid Z530」を発表。その記者会見で、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンを投入する計画を明かしている。Acerは、9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAで、ハイエンドなWindows 10 Mobile搭載端末の「Jade Primo」を“チラ見せ”していたが、発表会では、改めてこの端末も披露した。Jade Primoは「近いうちに出荷する予定で、日本もターゲット国の1つ」(スマートプロダクトビジネスグループ S.T.リュウ氏)だという。
ハイエンドモデルだけでなく、Acerは幅広いWindows Phone、Windows 10 Mobile対応スマートフォンをラインアップに抱えている。もともとAcerは、比較的安価なAndroidのスマートフォンを欧州やアジアで展開していたが、先に挙げたように、Microsoftが要件を緩和した結果、Windows Phone、Windows 10 Mobileでもそれを“使いまわせる”ようになった。
同社はJade Primoを披露したIFAで、ローエンドな「Liquid M330」「Liquid M320」を発表、ブースに展示していたが、こうしたモデルも日本で販売される可能性があるという。日本エイサーの代表取締役社長 ボブ・セン氏は、「パートナーの都合もある」としながら、「弊社としては、Windows Phoneはエントリーモデル1つと、より上位のモデル1つというふうにしていきたい」と語っている。
既存のスマートフォンにはないデザインを目指し、開発されたトリニティの「NuAns NEO」も、注目の存在だ。既存の端末にはない、思わず使ってみたくなるようなデザインを目指しており、「リファレンスデザインは使わず、ゼロから作った」(トリニティ 星川哲視社長)。同社はクリエイティブユニットのTENTとタッグを組み、NuAnsという周辺機器ブランドを立ち上げている。スマートフォンの詳細はまだ明かされていないが、端末単体ではなく、周辺機器と組み合わせた世界観のようなものを見せてくれることが期待できる。
このほか、プラスワン・マーケティングも、発表済みの「KATANA01」「KATANA02」を投入する予定。また、すでにWindows Phoneを投入しているマウスコンピューターや、ドスパラなどPCショップでおなじみのサードウェーブデジノスも、端末の開発意向を表明している。
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