課題解決に向けた論点とは――総務省、携帯料金タスクフォースの第4回会合を開催(2/2 ページ)

» 2015年11月28日 10時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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検討課題に対する論点整理

 タスクフォースでは、「利用者のニーズや利用実態を踏まえた料金体系」「端末価格からサービス・料金を中心とした競争への転換」「MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進」の3点を大きな検討課題としている。今回の会合では、それぞれの課題における論点整理を行った。

課題1:利用者のニーズや利用実態を踏まえた料金体系

 携帯電話のデータ(パケット)通信量は全体としては増加傾向にある。容量別のユーザー数を算出すると、7Gバイトの利用が一番率が高い一方で、1Gバイト未満の「ライトユーザー」も多数存在している。しかし、MNOでは小容量の料金プランは提供していないか、提供していても契約者の年齢あるいは対応端末を制限している。

 また、通話の少ないユーザー向けの料金プランも登場したものの、組み合わせられるデータ通信プランに制限を設けることで月額料金を「つり上げる」方向性にある。

 これらのようなこともあって、平均すると「高くもなく安くもない」日本の携帯電話料金が、ライトユーザーに絞ると世界的にも割高であることが現状で、それがスマートフォン普及の妨げになっているという指摘もある。

 このような現状を踏まえて、料金体系に関しては以下の3つの論点が提示された。(以下、引用部はタスクフォース資料の原文を一部体裁を整えて掲載)

  • 大手携帯電話事業者の現在のスマートフォン向けの料金は、ライトユーザにとって割高なものとなっていないか
  • スマートフォンのライトユーザ向けプランは年齢層や対象機種が限定されているが、スマートフォンのライトユーザ向けの料金プランの在り方について、どう考えるか
  • IoT時代に向けた国民の生活インフラとしてスマートフォンを普及させるため、どのような料金プランが必要か

 この課題については、「MVNOサービスの低廉化・多様化」とも大きく関わる。いわゆる「格安SIM」として販売されることの多いMVNOサービスの普及を促進して、ライトユーザーの選択肢を増やすべき、という意見もある。しかし、MVNOサービスが「格安」なのは、主に通信面やサポート面でコストをかけていないためで、サポートが必要となった場合の窓口が近くにない可能性が高いという問題もある。そこで、MVNOほどの安さではないにしても、「MNOのライトユーザー向けプラン」はどうあるべきか、ということが検討されるものと思われる。

日本と諸外国のスマートフォン・フィーチャーフォン保有率 日本は諸外国と比べると個人のスマホ保有率が低く、2台(以上)持ちを含めても55%に満たない。世帯保有率(世帯に1台以上スマホがある率)の伸びも鈍化している(タスクフォース事務局資料より)

課題2:端末価格からサービス・料金を中心とした競争への転換

 日本では、先述の通りMNP契約者に対するインセンティブが特に大きく、長期間同じ機種を使う人や回線単体で契約する人との間の不公平が生じている。それを緩和するために、MNOは長期利用者に対する割引や特典を拡充しているが、「MNP優遇」と比べると大きな差があることも否定できない。この措置がMVNO普及の妨げとなっているという指摘もある。

 端末購入で通信料金を割り引く形式を取っているために、 端末価格と通信料金の具体的な負担額が分かりにくいという指摘や、割引条件の周知不足によるトラブルも生じている。

 このような現状を踏まえて、競争転換に関して5つの論点が提示された。

  • 端末を購入した者が、端末を購入しない者よりも低い負担となる場合もある端末購入補助の現状は、日本独自のものであり、端末を買い換えない長期利用者や、端末を購入せずに通信サービス契約だけを行う利用者にとって、著しく不公平なものとなっているのではないか
  • 端末購入補助について、大手携帯電話事業者において行き過ぎは是正すべきとの認識が共有されている。一方、事業者間の競争がある中、その適正化を実現するため、事業者団体による取組、行政からの働きかけによる取組について、どう考えるか。また、その際に、価格 カルテルや再販売価格の拘束との関係について、どう考えるか
  • 端末購入補助の行き過ぎの是正により、MNPによる顧客獲得競争が弱まるおそれがある ことについて、どう考えるか
  • 発売から期間が経過した「型落ち端末」に対する端末購入補助について、どう考えるか
  • 端末の価格や通信サービス契約を解約した際の負担について、利用者が理解して契約できるような方策について、どう考えるか

 2〜4つ目の論点は、非常に大きな問題を抱えているもので、タスクフォース構成員からも活発な意見が出された。

 2つ目の論点は、「行政からの働きかけ」が適切なものなのかどうか、という問題がある。行政指導あるいは法改正でインセンティブを制限または禁止した場合、独占禁止法に抵触する「カルテル(企業協定・談合)」や「再販価格の拘束」につながる恐れがある。また、2010年の韓国における販売奨励金の上限規制でもあったように、規制に実効性がないか、それに近い状態になることも考えられる。

 3つ目の論点は、法による規制に踏み切った韓国で現実問題として起こっていることでもある。現状では、端末代金やキャッシュバックを目当てにMNPするユーザーが圧倒的に多いと思われる。また、4つ目の論点とも関連して、販売現場では在庫整理も兼ねて旧機種(前シーズンの機種)のMNP優遇をより手厚くする、という手法も取られている。インセンティブの制限・禁止によって、事業者間競争がなくなるだけではなく、端末供給事業者の死活問題にもつながってしまう可能性もある。

 この課題は、一番議論が難しいものになるだろう。

独占禁止法の抜粋独占禁止法における行政指導の考え方 行政指導が行き過ぎると、独占禁止法で禁止されているカルテルや再販価格制限を誘発してしまう可能性がある(タスクフォース事務局資料より)
消費者保護の充実・強化 通信サービスの理解を深める措置については、総務省令や告示によって改善を進めている(タスクフォース事務局資料より)

課題3:MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進

 MVNOサービスは、以前と比べると認知度が上がり、普及速度も増しているものの、リテラシーの高い人や都市部に住む人など、利用者層はまだまだ限られている。先述の通り、一方で「安さ」から来る通信・サポート品質への不安もある。サービス多様化の面では、加入者管理機能(HLR/HSS装置)の自前設置についてMNOとの協議が遅々として進まない現状もある。

 このような現状を踏まえて、MVNOサービスの競争力強化に向けた3つの論点が提示された。

  • MVNOの費用の相当部分を占める接続料の在り方について、どう考えるか
  • MVNOの様々なサービスの多様化を可能とする加入者管理機能の開放について、どう考えるか
  • 新規加入・MNP等の受付処理をワンストップで実行可能とする、MVNOと携帯電話事業者の顧客システムのオンライン連携について、早期の実現を促すべきではないか

 1つ目の論点については、接続料の算定基準や接続約款に記載すべき接続機能などを明確化することが決まっており、12月10日まで意見募集を行っている。

 2つ目と3つ目の論点については、タスクフォースの議論を踏まえた「MVNOに開放すべき機能」の提示を行う考えが高市早苗総務大臣から発表され、11月27に公表された。こちらに関しては、11月28日から12月25日まで意見を募集する。

電気通信事業法の改正内容総務省令・ガイドラインの改正案 2015年5月22日に施行された電気通信事業法の改正で、接続料を設定する機能やその算定方法を総務省令で定められるようになった(写真=左)。それに伴う総務省令・ガイドラインの整備を進めている(写真=右)(タスクフォース事務局資料より)
高市早苗総務大臣 会合に最初から最後まで参加した高市早苗総務大臣
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