11月30日、トリニティがWindows 10 Mobile搭載SIMフリースマホ「NuAns NEO」を発表した。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年12月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
背面部分がカバーとなっており、上下で違う素材を装着できるのが特長となっている。木材や東レのウルトラスエードや、クラレのクラリーノといったカバーが用意され、自分の好みに合わせて装着できる。
また背面にはICカードを収納できるスペースが設けられており、Suicaなどを入れておけば、そのまま改札を通ることもできる。ストラップホールも用意されるなど、日本のメーカーが、日本市場のニーズに合わせて作ったスマホに仕上がっている。
Windows 10 MobileはAndoridのようにユーザーインターフェースなどにオリジナルティが出しにくい。そのため、外観にとことんこだわるというのは至極、真っ当な戦略と言えるだろう。ユーザーが自由にカスタマイズできる発想は、本体カバーなどのスマホ周辺機器を手がけてきたトリニティならではだ。
ただし、ひとつ気になったのが、SoCにSnapdragon 617(MSM8952)を搭載してきた点だ。
トリニティでは「Continuumをサポートしたかったので、MSM8952を採用した」(星川哲視社長)という。しかし、現在、マイクロソフトでは、Continuumが使えるのはSnapdragon 808と810だけとしており、617が対応になっているかは明らかにされていない。
トリニティでは「617はまだ出荷されていないため、Continuumの検証対象になっていない。NuAns NEOでContinuumが動いているのは確認できているが、いまのところ『対応は暫定情報』という扱いになる」(星川社長)という。
これにより、多くのメディアで「NuAns NEOはContinuumに対応」という報道のされ方をしているが、個人的には正直言って「大丈夫かな」と思っている。
クアルコムのチップ、特に「初物」はこれまで端末メーカーが搭載するのに相当、苦労してきた話ばかりを聞いてきた。制御が上手くいかず、発熱したりと、性能を安定的に発揮するのが難しいと言われている。
あのサムスン電子でも、初物に関しては、クアルコム製を敬遠することもある。それをトリニティでは、世界のメーカーに先駆けてNuAns NEOで採用するという。
Snapdragon 617はハイエンドのラインナップではないため、そこまで心配する必要はないかも知れないが、初物となるSnapdragon 617と、まだ生まれたばかりのWindows 10 Mobileを組み合わせて、大丈夫なものなのか、かなり不安にさせられてしまう。
もちろん、明らかにレンジの違うSoCで、Continuumがきちんと使えるか、という点にも疑問が残る。Continuumは外部ディスプレイに出力し、キーボードとマウスを組み合わせて、パソコンのようにWindows 10が使えるという機能だ。相当なマシンパワーと必要とするのは間違いない。
GizmodoではSnapdragon 808を搭載した「Lumia 950」のレビューを掲載しているが「思ったほどスムーズに使えない」と酷評している。
マイクロソフト関係者に話を聞くと「アメリカでは、他のメーカーのスマホではなく、当然のことながらLumiaを全力でプッシュしている」という。
スペック的には非力だが、Continuum が使えるという点でLumiaをアピールしていくのだろう。一説には、「Surface Phone」も開発が進んでいるようで、「Continuumが安心して使えるハイエンドモデルはマイクロソフトが自社ブランドで作っていく」という戦略のようだ。
スペック的に厳しい感があるだけに、NuAns NEOとしては、あまりContinuum対応を訴求せずに「カスタマイズを楽しめるスマホ」というアピールに専念した方がいいのかも知れない。
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