総務省が2015年9月に公表した情報によると、MVNO(仮想移動体通信事業者)の通信サービスの契約件数は997万件で、移動系通信サービス全体に占めるシェアは6.3%となった(※)。イノベーター理論でいうところの「アーリーアダプター層」での普及段階にあるといえるだろう。
※大手通信事業者(MNO)がMVNOとなって提供するサービス(例:KDDIと沖縄セルラーにおける「WiMAX 2+」、ソフトバンクにおける「AXGP(SoftBank 4G)」)は含まない
MVNOサービスの多くは「格安SIM」という言葉で認知されている。MMD研究所が2016年1月に実施した調査によると、その認知度は76.5%に達したという。同じ調査では、格安SIMの「利用検討」段階にいる人が15.1%いることも分かっている。ここにいるアーリーアダプター層を取り込むことが、2016年のMVNOサービスの「主戦場」(MMD研究所の吉本浩司所長)となりそうな状況だ。
アーリーアダプター層の取り込みにおいて、重要な鍵となるのが“女性”だ。MVNOサービスの契約者は男性が多くを占めている。さらなる普及のためには、女性ユーザーをより多く獲得する必要がある。一方で、それを実現するには解決すべき“不安”や“課題”がある。
MMD研究所は3月2日、「格安SIMの女性利用の拡大について」と題するメディア向け勉強会を都内で開催した。この会で、NTTコミュニケーションズの岡本健太郎氏とビッグローブの河口清華氏は、女性ユーザーが持つMVNOサービスに対する不安と、その解決に向けた取り組みを解説した。
「OCN モバイル ONE」を提供するNTTコミュニケーションズの田中氏は、女性ユーザーは「情報認知経路」「消費価値観」「格安SIMに関して」の3点において大きな特徴があるという。それを要約すると、次の通りとなる。
これらを踏まえて、NTTコミュニケーションズではさまざまな取り組みを行っている。まず、情報を知り、興味を持ってもらうきっかけを作るために、MVNOサービスとしては珍しくテレビCMを使ったプロモーション活動を行っている。
また、Webでの情報収集の参考となるように、SIMカードのそもそもから契約・設定方法までを解説する「はじめてガイド」を新設した。このガイドではOCN モバイル ONEの特徴も解説することで、単に安いだけではないという安心感を与えられるように工夫している。
それでも残る購入や設定に関する不安に対しては、「即日受け渡しカウンター」の設置店舗の拡大を進めることで応えている。
今後も、NTTコミュニケーションズでは女性ユーザー拡大に向けた取り組みを強化していくという。まず、より積極的に情報を発信をすべく、キュレーションメディアとの連携、コミュニティーサイトの活用、女性向け勉強会の開催を計画しているという。女性向け勉強会は、この3月中に開催する予定だそうだ。また、より安心して使えるようにすべく、端末やサービスをオールインワンで提供する取り組みも行う予定だ。
他のMVNOとのより一層の差別化を図るべく、2016年度はコンテンツ事業者との連携やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)への取り組みも強化する方針だ。
「BIGLOBE SIM(BIGLOBE LTE・3G)」を提供するビッグローブの河口氏は、ユーザーサポートの現場に近いところにいた経験を踏まえてMVNOサービスの契約を検討している人が持つ不安について語った。分かっているであろう初歩的なことがことが案外伝わっていないために、MVNOサービスの契約、あるいは移行をためらってしまうというのだ。端的にまとめると、「格安SIMや格安スマホにして、今までと同じように使えるのか」「(格安SIM・スマホに)変わった後に困ることはないのか」という疑問・不安が阻害要因となっているのだ。具体的には、以下のような声がよく寄せられるのだという。
音声通話に関しては、「(大手キャリアとは)全く違うサービスを提供しているのではないか」という疑問を寄せられることもあるという。品質面については、NTTドコモと同じ設備を使っているので変わりないことを説明しているという。1月28日(法人向けは2月1日)からは留守番電話と割込通話の提供を開始することで、より安心して使えるように取り組んでいる(参考記事)。また、通話料金に対する不安にはプレフィックス型の通話サービス「BIGLOBEでんわ」を利用することで負担を軽減できることを説明しているという。
通信容量や動画視聴に関する疑問に対しては、使う容量に合わせて4つのプランを用意していることや、「BIGLOBE 光」や「BIGLOBE Wi-Fi」を組み合わせて使うことで、自宅や外出先でBIGLOBE SIMの通信容量・料金を節約できることを案内しているという。Androidスマホ・タブレットには無線LAN(Wi-Fi)への接続を自動化できる「オートコネクト」アプリも用意している。ただし、女性のWi-Fi利用率はオートコネクトアプリを入れていても高くないようで、どのようにWi-Fi接続に誘導するかは、今後の課題となりそうだ。
LINEやFacebookの利用に関しては、機種変更時の手続きが大変だと思っている人が多いという。アプリについては、同じものを使えることを案内しつつ、電話やリモートサポートを活用してデータの引き継ぎをバックアップできる体制を整えている。
家族での利用に関しては、「ライトSプラン」と「12ギガプラン」において最大で4枚のSIMカードを追加できるオプションサービス「シェアSIM」を案内。「条件が合えばiPhoneでも使える」ということを知らない人も多く、それも合わせて案内しているという。
今後、ビッグローブでは、スマホを使わない人向けにもBIGLOBE SIMサービスの展開をする計画だ。その一環として、企業向けに小型Androidスマホ「BL-01」の提供を開始した(ニュースリリース)。このBL-01などを通して、IoTを使った取り組みを強化する方針だ。
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