米国サンフランシスコに本社を構える「Nextbit」は、GoogleやHTCの元従業員が起業したベンチャースマートフォンメーカーだ。同社が開発したAndroidスマートフォン「Robin(ロビン)」は、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で目標の2倍以上となる136万2343ドルの出資を獲得し製品化された。
現在、同社のWebサイトやソフトバンクのIoT支援プラットフォーム「+Style(プラススタイル)」で購入することができる。特に+Styleでの販売分は1000台限定の特別価格ながら3万9980円(税・送料込)と割安感もある。
一部の個人ブログやWebメディアでは、2016年3月の出荷開始時点でRobinが「技術基準適合証明等(技適など)」を取得済みであることが話題となった。日本国内で携帯電話として利用するために必要な認証を取得済みということは、最初から日本での販売を想定していたようにも思えるが、どうなのだろうか。そもそも、GoogleやHTCの「中の人」だった人たちが、わざわざ起業してスマホを作ることにしたのはなぜなのだろうか。
5月27日に開催された+Styleの記者向け説明会(参考記事)に合わせて、同社のトム・モスCEOが来日した。同氏はGoogleでAndroid事業に2010年まで携わった後、Theree Laws of Mobility(3LM)を創業し、翌2011年にはMotorolaに同社を売却した、という経歴の持ち主だ。
筆者は、そんな彼にインタビューをするチャンスを得た。そこで、NextbitやRobinに関して疑問に思っていたことをあれこれ聞いてみることにした。
なお、筆者は英語でインタビューするつもりで予行演習をした上でモスCEOのもとへ行ったのだが、同氏が流ちょうな日本語話者であることが判明したため、インタビューは日本語で行っている。
――(聞き手:筆者) 今日はよろしくお願いいたします。まず、Nextbitという企業について教えてください。
モスCEO はい。Nextbitは米国のサンフランシスコにあるGoogleとHTCに勤めていた人が立ち上げたベンチャー(企業)です。
―― 従業員は現在、何人ほどいるのでしょうか。
モス社長 サンフランシスコでフルタイムで働いている人は35人います。(それを含めて)世界中で働いている人は、コントラクト(業務委託)やフルタイムを合わせて70人ほどです。
―― 日本には業務上の拠点はあるのですか。
モスCEO 日本には、現地法人(ネクストビット・ジャパン)を設置して、そこからサポート業務を行っています。
―― 日本で本腰を入れてやっていくと。
モスCEO はい。そうです。そこまでの期待が、日本にはあります。
―― ちなみに、日本以外に拠点を設置している国はあるのですか。
モスCEO 現在、サポート拠点は米国、インドと日本に設置しています。
―― ということは、日本は相当に優遇されているんですね。
モスCEO その通りです。ぜひとも、ITmedia Mobileの読者の皆さんにも(Robinを)買って頂きたいです(笑)。
―― 3月にあった+Styleの発表会で、私が「4万円切る価格であればインパクトがありますね」という話をしたら、その通りになりました。為替レートを考えたら、結構大変な決断だったのではないでしょうか。
モスCEO はい、その話は覚えていますよ。その場に私もいましたから(笑)。日本では(スマホの)デザインを気にしている人が多いでしょうし、今のスマホに飽きてしまっている人もいるでしょう。5年ほどかかるでしょうが、日本は(Nextbitにとって)大きな市場になると思います。まずはきちんと台数を出さないと、と思って頑張りました。
―― そもそも、Nextbitという会社を作ったきっかけは何でしょう。
モスCEO (スマホやタブレットの)機種変更の時に、ゲームのデータをクラウド(オンラインストレージ)に載っけることができず、ゼロからやり直す羽目になって「なんだこりゃ?」と思ったのが最初のポイントです。
タブレットを買って、ゲームをインストールして、またゼロからやる――それで結局タブレットを使わなくなってしまったんですよね。全部がクラウドに保存されていれば、好きな画面から自分のもの(コンテンツ)にいつでもアクセスできる。そういう“夢”を実現するために、Nextbitを作ったんです。
―― その理想を追い求めた結果が、Robinなのですね。
モスCEO その通りです。我々にとって、これ(Robin)は最初の一歩です。クラウドやマシンラーニングでできることは、これからもっとたくさん出てきます。
iOSもAndroidも、クラウドやマシンラーニングといった技術が出る前に作られたものです。しかし、AppleやGoogleは自動車、テレビ、ウェアラブルやAR・VRに意識が向いているので、スマホのOSそのものにこういった新しい技術を取り入れようという気持ちはないと思うのです。
我々は、クラウドやマシンラーニングによって、スマホのOSをより良いものにできるはずだと考えていて、もっとスマートなやり方でスマホを良くしよう、という気持ちが強くあります。
―― ということは、しばらくの間はスマホ(Robin)に注力するということでしょうか。
モスCEO そうです。
―― 先ほど、スマホのOSの話が出ましたが、RobinはAndroidをOSとして採用していますよね。元のソースからはあまり手を加えていない、と考えて大丈夫でしょうか。
モスCEO そうです。素に近いです。
―― しばらくはAndroidを使って、理想をより実現するためにゆくゆくは独自OSを……なんていうプランはお持ちでしょうか。
モスCEO 我々はアプリのエコシステムまで作るつもりはありません。なので、OSはAndroidのままで行きたいと思っています。
今のOSは、OSというよりはアプリのエコシステムになっていると思うのです。MicrosoftやTizenのように新たなエコシステムを作ることは難しいでしょうし、ユーザーにとってもメリットがないでしょう。我々はAndroidのエコシステムにいながら、自社独自の機能を作り込みたいと思っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.