7月30日と31日に開催された「mineoファンのイベント」は、ゲストとして登場したIIJのエンジニア、佐々木太志氏と堂前清隆氏とのトークセッションも見どころの1つだった。「両社の関係」「MVNO市場の展望」「端末・ネットワーク」という3パートに分けて話が進み、各パートの後半では参加者(一般ユーザー)からの質問も受け付けた。31日の東京会場(渋谷)で開催された様子をお届けしたい。mineo側は、ケイ・オプティコム 事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏、モバイル事業戦略グループ モバイル事業戦略チーム チームマネージャーの森隆規氏、経営本部モバイル事業戦略G モバイル事業戦略T マネージャーの杉野浩司氏が加わった。
まずはお互いの印象から。mineo(ケイ・オプティコム)から見たIIJ、またIIJから見たmineoは、どのようなものなのだろうか。
上田氏 IIJさんに対しては「教えてください」というスタンスで、いろいろ技術的なことも教えていただいている。例えるなら、IIJさんはよく勉強ができる長男みたいなもの。われわれは末っ子で、勉強を教えてもらいつつ、何ができるだろうか、ひそかに抜かしたろうかなと思っている。
佐々木氏 2年前、ケイ・オプティコムさんがmineoをやると聞いたときに、非常にビックリした。それまで何社か格安SIMに参入していたが、auさんの回線を使うと聞いて、「よくそんなビジネスが成立できたなぁ」と、心の底からビックリした。独自性は非常に重要なので、mineoが勝ち取って、そういうビジネスを成功させて伸びている。そこについては、すごいなと感嘆の思いでいる、今後、さらに手ごわいライバルになっていくんじゃないかと思う。
mineoにとって、IIJが絡んだ大きなエピソードは、iOS 8でau系SIMを利用可能にする糸口を、IIJが発見したことだった。
上田氏 一番大きいのはiPhone問題で、iOS 8以上の5sと5cが動かなくなる事件があった。私も当時(個人で)mineoを使っていた。どうしようというときに、IIJさんから神の手のような、技術的な提案をいただき、そのおかげで私たちの端末も使えるようになった。
佐々木氏 いくつかパートナーシップはあると思っている。MVNO委員会でもケイ・オプティコムの存在感は高い。MVNOはいろいろな会社がある中で意見が一致しない。ともすれば合意が無理じゃないかとなったときに、ケイ・オプティコムが果たされている影響は大きい。いろいろな側面で一緒にビジネスをやっていくことはあり得ると思っている。
mineoとIIJで、一緒にやってみたいことはあるのだろうか。ケイ・オプティコムからは具体的な提案が挙がった。
上田氏 市場自体が大きくなるのは大歓迎。イベントをやる、総務省に物申すとか、そういうことを一緒にできたらと思う。今回も、なぜmineo主催でトークセッションをすることになったのかというと、前任の津田が、お2人(佐々木氏と堂前氏)と飲み会で盛り上がって、やろうやろうと、思いつきで始まったのがきっかけ。私が来たときには決まっていた(笑)。今後とも、私もIIJmio meetingに出させていただいたりとか、両方で盛り上げていったらいいなと思う。
堂前氏 mineoさんを含めて、MVNOには顔見知りが多いるので、一緒にやっていきたい。mineoさんはわれわれとカラーが似ているので、一緒にやりやすい。MVNOも日本の中で認知されてきたので、やらなければならないことが増えている。子供に対する安全安心の取り組みなども、一緒にお話をしたこともある。
森氏 IIJmioとmineoでパケットを贈り合うといったこともできればいいなと。われわれのシステムはレディーの状態なので(笑)。
参加者 音声サービスをどう差別化していくのか。例えばMVNOが結託してサービスを作れないのか。
佐々木氏 音声の利用は減っていてシュリンク(縮小)している市場であるにもかかわらず、MVNOが音声SIMを出し、初めて(大手キャリアと同じ)舞台に上がれたので、矛盾は感じている。音声の差別化が難しいので、何かしらMVNOが技術的なブレークスルーを出していかざるを得ない。
森氏 佐々木さんがおっしゃる通り。例えばVoLTEをうまくコントールできるようになれば、サービスの幅が広がる気もする。今の枠の中では制限がある。
佐々木氏 mineoさんは「LaLa Call」をやっている。固定でもIP電話をやられていて、われわれよりもずっと先を行っているので、われわれが頭を下げてお願いすることもあるかもしれない。
参加者 (自前の加入者管理装置を持ち独自にSIMを発行できる)「フルMVNO」を一緒にやることは考えられる?
佐々木氏 フルMVNOというワードがあちこちで聞かれるようになってきた。何かしら技術的にやらないといけないという問題意識は持っているが、ガイドラインを改正しようと総務省がおっしゃったのが2015年秋なので、やっと議論を深めていく環境が整ってきたところ。あとは各MVNOがキャリアさん相手に協議をしないといけない。実現は先の話になるとみている。
森氏 auとドコモの回線や、海外での利用を1枚のSIMで、という思いはあるので、まさに勉強している。
格安SIMは、個人向け需要を中心に拡大し、2017年3月末には820万回線、2018年3月末までには1170万回線に達するとの予測もあるが、MVNO市場の展望と課題について、両社はどのように考えているのだろうか。
佐々木氏 MVNO市場は非常に伸びているといわれていて、現にわれわれのビジネスも、成長を続けている。ただ、MVNOは現在200社ほどいて競争が厳しくなり、差別化が難しくなっている。これから数年間は、MVNOは順調に伸びていくと思っているが、海外だと(シェア)15%ぐらいまで伸びると息切れがあったり、MVNOがMNOに買収されたりして、頭打ちになっている。
今、日本のMVNOは5〜6%のシェアで、まだまだ伸びる余地はあっても、新しいビジネスモデルや成長を考えていかないと、苦しい時代になる。フルMVNOの話も、そういう文脈の中で、MVNOが真面目に考えて、キャリアから何かを勝ち取っていかないといけない。
森氏 おっしゃる通り。競争が激しくなっていて、IIJさんは技術という太い幹があるので、技術を核とした新しいサービスは、IIJさんから生まれてくると思っている。
佐々木氏が話す通り、日本では数多くのMVNOが存在するが、脅威に感じる競合他社はあるのだろうか。
堂前氏 そりゃmineoさんは怖い。mineoさんは2年前に始められてから急速に伸びているので、私たちにとってもライバルのような感じで、いいサービスだと思う。mineoさんを参考にして、自分たちのことを振り返っていくことも必要だと思っている。
佐々木氏 mineoさんを除くなら、各社の調査でわれわれは(格安SIMのシェアで)2番手のようなので、1番手(OCN モバイル ONE)を倒さないとだめという意味では競合だと思っている。それはともかく、MVNOの中にはやんちゃで乱暴な方もいらっしゃって、消費者の皆さんがとハッピーになるか分からないビジネスをされているところに対しては、脅威に感じているところはある。
森氏 私たちは、IIJを業界の大黒柱と感じているので、脅威や競合というレベルではないが、われわれが持っていない強みを持っている事業者さんは怖いなと。大きな顧客基盤を持っていて、その人たちにすぐリーチできる手段のあるところは強いと思いつつ、同じ土俵で勝負しても仕方ないので、違う軸でカスタマーエクスペリエンスを高めていきたい。
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