「タイプA」「通話定額」「フルMVNO」――IIJの注目トピックをじっくりと聞くMVNOに聞く(1/4 ページ)

» 2016年11月11日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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 3分または5分間の通話が定額となる「通話定額オプション」、KDDIのネットワークを借りた「タイプA」、HSS/HLR(加入者管理装置)をNTTドコモから借りて「フルMVNO」に進化することなど、ここ数カ月、IIJは新サービスやロードマップを矢継ぎ早に発表している。MVNOの普及を受け、早くから事業を展開してきた同社が、“次の一手”を模索しているようにも見える。

IIJmio 10月1日から、KDDIの回線を使用した「タイプA」を提供している。料金はドコモ回線を使った「タイプD」と同じ

 こうしたサービスの狙いはどこにあるのか。IIJのネットワーク本部技術企画室 担当課長 佐々木太志氏と、広報部 技術広報担当課長エンジニア 堂前清隆氏にそれぞれのサービスを提供した背景や、今後に向けた取り組みを聞いた。記事内の価格は税別。

タイプAがVoLTE SIMのみ対応となった理由

IIJmio IIJの佐々木太志氏

――(聞き手:石野純也) 最初に伺いたいのが、auのネットワークを使った「タイプA」のことです。このサービスを始めた理由を教えてください。

佐々木氏 (深いため息)

―― 苦労があったようですね(笑)。

佐々木氏 基本的には、お客さまのニーズがあったからです。昨年(2015年)4月に法人向けということでKDDIさんのSIMカードの取り扱いを始めましたが、始めた直後からIIJmioでも提供していただきたいという強い要望がありました。もちろん、われわれとしてもKDDIさんのSIMカードを取り扱うのであれば、お客さまにメリットがないといけない。ちょっと変わったSIMカードが出てきたというのではなく、こんなスマホでこんな利用方法があるとういことが説明できるまでは、出す意味がないと思っていました。

 ただ、ここにきて、VoLTE対応を銘打ったSIMフリーのスマートフォンが拡充されてきました。auのSIMロックを解除した一部の端末でしか使えないところから、新品のSIMフリー端末を買ってお使いいただけるようになってきた。機種が増えたという意味で、いいタイミングだったと思います。

―― auユーザーを狙い撃ちにしたというわけではないんですね。

佐々木氏 必ずしもそうではありません。auのお客さまもSIMロックを解除すればお使いいただけますが、そこだけにしかマーケットがないわけではありません。例えば、エリアの問題があり、どうしてもドコモさんの電波が入りにくいといった方や、これまでずっとauを使ってきたので信頼感があるという方もいます。

―― VoLTE対応のSIMカードのみに絞った理由はどこにあるのでしょうか。

堂前氏 auの(MVNO向け)SIMカードは2種類あるという前提でお話しますが、VoLTE非対応SIMに関しては、これを導入することで幸せになれる端末がかなり限られてきます。具体的には、過去にauが販売した一部機種が対象ですね。ただ、これらは流通こそしていますが、AndroidのOSバージョンも4.X系のままのものが多く、どんどんアウトしていきます。新たな投資をしても、これから細るしかないところをやるかどうか考えたとき、やらないという判断になってしまいます。

―― iPhoneはいかがですか。

堂前氏 5sや6をVoLTE以外で使うというケースは確かにありますが(※iPhone 6以前の機種はタイプAに対応していない)、そこだけのためにやるべきか。確かにiPhoneのOS更新期間はAndroidより長めですが、それだけでいくべきなのかは考えました。いずれは手じまいしなければいけないサービスですし、始めることのハードルもある。終わらせなければいけないことまで考え、判断しました。

―― それで接続料が安くなる……ということはないんですよね。

佐々木氏 そこは変わりません。単純にSIMカードが違うだけですね。

―― 投資とおっしゃっていましたが、それは設備投資のことでしょうか。

佐々木氏 CDMA2000 1Xのネットワーク(データ網)はMVNOに開放されていないので、われわれとして持つ設備は変わりません。

堂前氏 どちらか言うと、物流の問題ですね。

佐々木氏 Webでの販売だと、このSIMカードはこの端末、このSIMカードだったらこっちというように、コンサルティングもできません。ショップで端末を見ながらであれば多少複雑なこともできますが、それをやるにしても、先の見えているサービスでやるのはあまり健全ではありません。

堂前氏 付け加えると、法人サービス自体は以前からやっています。ですから、個人向けのために、ものすごく大きな投資をしたわけではありません。法人の設備を有効活用しながら、最小限のコストで対応できる範囲を対応したという側面もあります。

タイプAは“お好きな方”が契約している

IIJmio IIJの堂前清隆氏

―― この後うかがおうと思っていたHSS/HLRで、ドコモとauのデュアルネットワークということも見越した上でのサービスだったりするのでしょうか。

佐々木氏 HSS/HLRの開放で合意しているのは、あくまでドコモさんとだけです。現状の設備だと、1枚でKDDIさんとドコモさんの両対応にすることは、まったく視野に入っていません。それは関係ないですね。

―― MVNOが混み合うお昼休みでも、タイプAは比較的高速ですが、それを売りにしていくおつもりはありますか。

堂前氏 確かに今は快適にご利用いただけていますが、それを売りにタイプAにしてくださいと言うつもりはありません。あくまでタイミングの問題で、中長期的にはタイプDと同程度に落ちてきてしまうことも考えられる。これについては、タイプAもタイプDも、通信品質を改善していく長期的な取り組みをしていきたいと考えています。

―― MVNEとしても、タイプAを生かした支援をしていくのでしょうか。

堂前氏 今すぐにお伝えできる情報はありませんが、タイプAのSIMカードを取り扱いたいというパートナーさんには、ぜひ供給していきたいですね。

―― サービスを開始してみて、手応えはいかがでしょうか。

堂前氏 今はまだ始まって1カ月弱なので、最初は何と言ったらいいか……お好きな方が買われています(笑)。

―― MVNO好きな人たちですね(笑)。

堂前氏 IIJmio meetingの会場に行くと、何でみんな持っているんだろうと(笑)。いつもお会いする面々や、Twitterを見ていると買っている方が多く、今はそこが主要な購買層で、変な意味でスタートダッシュが効いてしまっています。ただ、これを見て今後を占うのは、さすがに難しいですね。

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