加藤前社長がそば打ちを熱く語った「すきじかん」がわずか1年で終了――キャリアの副業ビジネスは、本当にユーザーのためになるのか石川温のスマホ業界新聞

» 2016年12月02日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 NTTドコモは11月21日、月額制サービス「すきじかん」を2017年6月30日で終了すると発表した。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年11月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 「すきじかん」は、カタログで様々な体験型サービスを受けられるというものだ。スパやエステ、楽器や陶芸、そばうち、フライトシュミレーター、クルージングなど約300のコースが楽しめるというものだった。利用チケットは月額1枚6000円もしくは2枚1万1000円というコースが用意されていた(現在は入会から3カ月間、月額料金が割引になるキャンペーンも提供されていた)。

 1回きりではなく、月額制で、マガジンから体験コースを選ぶというのが特長であった。毎月、6000円近くすることもあり、時間に余裕のある年配層がターゲットとされていた。

 2016年12月12日に新規申し込みが打ち切られ、2017年1月上旬にマガジンとチケットの発行が終わり、6月30日をもってサービスが終了となる。会員には、もともと、同サービスを実質的に提供していたソウ・エクスペリエンスの体験カタログが特別価格で提供されることになる。

 昨年秋に開催されたNTTドコモの発表会において、加藤薫社長(当時)が、わざわざ那須塩原まで出かけ、そば打ちを実体験してきた様子を熱くプレゼンテーションしていたのが印象的であった。それが、わずか1年、加藤前社長のそば打ちが、吉澤和弘新社長によって打ち切りにされたのだ。

 昨年、発表された当時から「月額6000円とは思い切ったサービスを始めるものだ」と思われていた。しかし、キャリアにとってみれば、端末ラインナップも料金プランも横並び。さらに端末が売れなくなっていくと言うこともあり、販売代理店の「新しい商材」という位置づけになるのであれば「そういうことか」という落としどころになっていた感がある。

 やはり、スマホ以外の商材が必要な販売代理店であっても、さすがにカタログによる体験型サービスは売りにくかったということか。客の立場からすれば、「なぜ、スマホを買いに来たのに、月額6000円のサービスを契約しなくてはならないのだ」と首をかしげたくなるだろう。昨今、格安スマホが注目されている中、キャリアに追加で6000円を支払うというのは、相当、無理があるのではないか。

 とはいえ、各キャリアとも、キャリアショップで保険や水、グルメ、IoT機器など、これでもかと副業に力をいれつつある。果たして、それは本当にユーザーが求めることなのか。「すきじかん」の早期撤退は、他のキャリアにとっても、他人事とはいえないのではないだろうか。

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