NTTドコモが広告視聴でデータ通信量がもらえる訪日外国人SIMカード投入――GSMAの水面下で進む「ローミング料金撤廃」の動き石川温のスマホ業界新聞

» 2017年07月07日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 NTTドコモは訪日外国人向けのデータ通信専用プリペイドSIMカード「Japan Welcome SIM」を7月1日より提供開始した。

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 利用期間は15日間。プランは3つ用意され、下り最大682Mbpsで500MBと128kbpsが無制限に使える月額1700円の「プラン1700」、128kbpsが無制限で月額1000円の「プラン1000」、このサービスの特徴ともいうべき「プラン0」は128kbpsの無制限だが、さらに広告動画を閲覧したり、アンケートを行うことでデータ容量がもらえるようになっている。

 すでに訪日外国人向けのプリペイドSIMカードは、数多くのMVNOが手がけており、飽和状態だ。NTTドコモとしては無料でSIMカードを配布しつつ、広告ビジネスにつなげていくことで差別化を図りたい考えだ。

 ただし、動画広告を見て、データ容量をもらうのだが、デモでは30秒の動画に対して、10MBしかもらえないという、ちょっとケチ臭い設定になっていたのが気になった。もちろん、動画を見るにはWi-Fi環境が望ましく、「日本に来る前に、Wi-Fi環境で動画見て、データ容量を貯めておく」というようになっている。また、dアカウントを作らなくてはいけないなど、実際に使うにはかなりハードルが高い。

 このままの仕様なら「こんなに面倒なら、素直にお金を払って、他のプリペイドSIMカードを入手する」という訪日外国人が増えそうだ。

 実は、いまモバイル通信業界で、水面下で進んでいるのが「ローミング料金を安価にしよう」という議論だ。すでにヨーロッパはローミング料金を撤廃したが、その動きが世界的に広がろうとしている。

 今週、中国・上海で「Mobile World Congress Shanghai」が開催されたが、世界のキャリア幹部によって「ローミング料金の低廉化」が議論されたという。

 その場に参加したという某キャリア社長は「世界的にローミング料金がなくなる方向で議論されている。アメリカなどの一部キャリアや、世界的に展開しているキャリアは反対していたが、今後も議論が継続する予定で、実現に向けて動き出している」と語った。

 日本では2020年に向けて、さらに訪日外国人が増える見込みだが、そのころには、訪日外国人が安価にローミングで自分のスマホを使ってネットに接続できる環境も整いそうだ。もしかすると、訪日外国人向けの無料Wi-FiスポットやプリペイドSIMカード、ルーターレンタルといったビジネスは、2020年を前にして下火になるかもしれない。

 奇しくも、ソフトバンクの孫社長が「無料Wi-Fiスポットは無くしていくべき。安価なローミングを実現すればいいのではないか」と株主総会で語っていた。実はGSMAのこうした動きを知っていた上で、孫社長は、他社に先駆けて「ローミングでいいじゃないか」という主張をしていたと思われる。

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