「1契約あたりの投資額」をコントロールしてシェア1位の楽天モバイル――「フリーテル35万契約を36億で買収」ということは1契約1万円?石川温のスマホ業界新聞

» 2017年12月08日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 12月1日、楽天モバイルは事業概況説明会を開催した。

 店舗展開やマーケティング、CS活動、フリーテルのMVNO事業継承など様々な話題があったが、そのなかで特に印象的だったのが「1契約あたりへの投資額」への言及だ。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年12月2日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 楽天モバイルでは1契約あたりの投資額の内訳を「TVCM」「WEB広告」「端末割引」「その他」としている。2016年8月にはWEB広告とTVCMが投資額の半分を占めていたが、2017年8月にはそれらが4分の1程度に縮小する一方、端末割引の割合が大幅に増えている。

 広告を減らす代わりに、楽天スーパーセールで、端末を大幅に割り引くことで、客を引き寄せ、契約につなげているのだという。

 実際、楽天スーパーセールでは6日間で7000台以上の端末が完売し、タイムセールにおいては550台の「HUAWEI Mate 9」が45秒で完売するほどの人気だという。新規契約のうち、58%がスーパーセールをきっかけに申し込みをしたというデータもあるという。

 さらに興味深いのが、楽天モバイルは42都道府県で181のリアル店舗を展開しているが、オンライン契約とリアル店舗での契約を比べると、1契約あたりの投資額はほとんど変わらない。

 すでに契約者数の比率においても、オンラインとリアル店舗を比べると店舗申し込みが52%までに達している。

 オンライン契約と比べても、リアル店舗の出店が経営の負担にはなっておらず、ビッグデータなどを活用することで効率よく、出店できているのも強みなのだという。

 では、実際のところ、この「1契約あたりの投資額」というのはいくらなのだろうか。

 楽天モバイルは、フリーテルのMVNO事業を36億円で買収している。これによってフリーテルの契約者である35万人が、楽天モバイルにカウントされることになった。この買収で見れば、「1契約あたりの投資額」はだいたい1万円ぐらいになるだろう。つまり、楽天モバイルとしては、1契約を獲得するのに、1万円の投資は充分に許容範囲のようだ。

 楽天モバイルとしては、新たなMVNOの買収についても、前向きな発言をしている。今回、説明会で登壇した大尾嘉宏人氏に「さらに楽天モバイルにうちのMVNO事業を買い取って欲しいという人が来たりしていないのか」と聞いてみたところ、ノーコメントな反応であった。

 格安スマホ市場全体が厳しくなると言われる中、今後、経営に行き詰まった格安スマホ事業者が「1契約1万円」で、楽天モバイルにユーザーを売り払うようになっていくのかもしれない。

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