NTTドコモが5月25日に発売する「arrows Be F-04K」。メーカーの富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)にとっては、3月30日にポラリス・キャピタル・グループの傘下に入ってから初めての新製品となる。
「arrows」ブランドのAndroidスマートフォン・タブレットを始め、「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」といった中高年向け端末を手がけてきたFCNT。資本構成の変更によって、arrowsやらくらくシリーズ、そして同社はどのような姿になっていくのだろうか。同社の高田克美社長が報道陣からの質問に答えた。その模様を体裁を整えてお伝えする。
―― 今回、(夏商戦向けの)新製品としてミドルレンジのarrows Be F-04Kを投入する。(ドコモ向けに端末を納入する)他のメーカーは主にハイエンドモデルを投入しているが、F-04Kの位置付けを改めて聞きたい。
高田社長 ドコモの方針で、ハイエンドモデルは(各メーカーで)1年に1回が原則。「夏組」と「冬組」に分けるとしたら、弊社は後者ということになる。
ドコモの料金プラン(docomo with)やMVNO市場の成長の影響もあり、今年(2018年)は(販売台数的な)ボリュームゾーンがミドルレンジ端末に寄ると考えている。市場の成熟期によくある傾向ではあると思うが、(現状では)ハイエンドよりもミドルレンジに注力したい。春に発売した(ドコモ向けの)「らくらくスマートフォンme F-03K」も、そのような考えのもと投入している。
より幅広いユーザー層に裾野を広げるように商品を提供していくということが、(FCNTの)基本的な考え方となる。
―― 3シーズン連続でdocomo with対象機種に(FCNTスマホが)選定されていて、対象機種に占める(FCNTスマホの)割合が高いようだが。
高田社長 我々はそうは思っていない。
個別の商品を見ると、「らくらくホンからスマートフォンへの移行に二の足を踏んでいるお客さまに、もっと買いやすい機種を」という要望をドコモから受けて開発した機種(F-03K)は、たまたまdocomo withの対象となった。
一方、今回のミドルレンジモデル(F-04K)は、ちょうど1年前に発売した機種(arrows Be F-05J)をモデルチェンジする、という通常のサイクルの中で生まれたもの。私はそう認識している。
―― docomo withが始まってから、端末の売れ行きは良くなったのか。
高田社長 さまざまな市場動向のデータにも表れている通り、間違いなく(販売台数は)増えている。ただし、ハイスペック系(端末の販売台数)は少なくなっているという印象もある。
―― ここ2年ほど、arrowsにおいて本当の意味でのハイエンドモデルが出ていない(※)。2018年冬モデルに期待して良いか。
(※筆者注:arrowsシリーズでは、2015年12月発売の「arrows NX F-02H」を最後にハイエンドモデル用プロセッサを搭載するスマートフォンをリリースしていない)
高田社長 今日はちょっとお答えしかねる。(端末の納入先である)ドコモの意向もある。ひとまず、現状では25日発売のF-04Kを含めた現行ラインアップ(の販売)に全力投球して、事業拡大につなげたい。
サービスやソリューションの事業展開において、ドコモの目指すサービス事業と関わりを持って進めたいものもある。
―― Googleは、Androidのセキュリティパッチ配信をしっかりやろうという方向に動いている(参考記事)。特にSIMロックフリーで販売しているメーカーブランド端末におけるセキュリティパッチやOSバージョンアップの配信をどのようにしていくつもりか。
高田社長 (端末の供給先)事業者の方針も関係することではあるが、OTA(ネットワーク経由)でのソフトウェア更新について、弊社には長年の経験があり、SIMロックフリー端末に対しても自前のサーバを使ってマネジメントしている。
(ソフトウェア更新の配信を)しっかりやることは、(キャリアやMVNOへの)端末の納入に当たっての前提条件とであると考えている。
―― SIMロックフリー端末といえば「arrows M04」以来、新機種が出てこないが。
高田社長 3〜4年前からMVNOが一気に市場に出てきて、(結果として)大手3キャリアからも対抗プランが出てきて、(低価格帯端末の)品ぞろえが増えた。「追いかけっこ」のようにして、MVNOの(端末の)品ぞろえは従来よりさらにワンランク低い価格帯(3万〜4万円台→2〜3万円台)中心になりつつある。
そうなってくると、投資効率を勘案した時に、我々の持つ商材が必ずしもMVNOの要求とミート(合致)しないケースも出てくる。さらなる低価格帯を要求されるのであれば、それに合ったスペックやものづくり(の体制)を再構築した上で提供していきたい。
現時点では、弊社のSIMロックフリー端末は手離れが良い、つまり故障(による問い合わせ)が少ないという評価を取り扱い事業者からいただいている。MVNOはサポートを第三者に委託していることが多く、(ユーザーからの)問い合わせが多くなると対応しづらくなる。
そのようなこともあり、(新端末を投入するように)熱烈なオファーをいただく機会も多いのだが、「それなりの品質で作り込むにはそれなりのコストがかかる」という話もしている。次のステップは、きっちりと組み立てていきたい。
―― arrowsはプロモーションで「国産(MADE IN JAPAN)」「国内メーカー」を強調している。国内生産や国内メーカーであることのメリットを改めて教えてほしい。
高田社長 先ほどの手離れの良さの話にもつながるが、我々のJEMS(※)のマザー工場では、修理の受け付けと修理作業をする部門を製品の量産部門と並列しているので、修理に要する時間が恐らく日本で一番短くなっている。このようなアフターサポートはアドバンテージになっていると思う。(修理部門と)量産部門とのシナジーもある。
今の時期、メモリなどの部材(の需要)が逼迫(ひっぱく)して先行的に部品を調達する必要がある。一方で、「端末がそれだけ(先行調達するだけ)の売れ行きを見込めるのか?」という話もある。そういう観点では、修理は部品の「受け皿」的な要素があり、3〜4年は少しずつだが活用できる。自前で(製造から修理まで)できるということは、ライフサイクル面で効率が高まるポイントの1つとなる。
故障モード(故障の状況や要因)を自分で蓄積できる面も大きい。第三者に修理サービスを委託すると自分たちでマネジメントできず、次の製品にフィードバックすることも難しくなる。
(※筆者注:ジャパン・イーエム・ソリューションズ。FCNT製端末を製造してきた富士通周辺機から携帯端末事業を分離して設立された会社で、FCNTと同じく3月30日付でポラリス傘下に入った)
―― arrowsの「割れにくさ」も、そのフィードバックに由来するのか。
高田社長 そうだ。
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