「タッチは感情を表現する手段」──ワコムが新世代Bambooで実現したかったこと(1/2 ページ)

» 2009年10月30日 16時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

ユーザーが技術を主導するワコムの製品開発

ワコム コンシューマー製品担当グローバルプロダクトマネージャーのイエンズ・クルーガー氏

 ワコムが2009年9月24日に発表した「Bamboo Pen & Touch」では、それまでの“ペン”に加えて、“指先”を入力手段として加えることになった。

 ワコム代表取締役社長の山田正彦氏は、Bamboo Pen & Touchシリーズの発表会で、「直感的で分かりやすい表現方法を生かす新しい製品を開発した」と述べたように、タブレットの入力手段に指先によるタッチを採用したことは、ワコムのこれから進む新しい方向を示しているという。指先で利用するタブレットの登場で、ユーザーのPC利用環境はどのように変わっていくのだろうか。

 Bambooシリーズなどのコンシューマ向けラインアップを担当するコンシューマー製品担当グローバルプロダクトマネージャーのイエンズ・クルーガー氏に、タッチとタブレットが目指す世界を聞いた(Bamboo Pen & Touchの概要と製品発表会における山田氏の発言についてはワコムからマルチタッチ対応の「Bamboo Pen & Touch」シリーズが登場を参照のこと)。

 クルーガー氏は、指先のタッチ操作を取り入れたBambooの登場は、ワコムにとって大きなマイルストーンで、コンシューマ市場のPCユーザーに対するワコムの新しいアプローチだと語る。もともと、ワコムのデザインポリシーには「ユーザー主体」という考えがあって、ユーザーが直感的にタブレットの操作が行えることを目指して、日々の研究が進められている。そういう意味で、指先を使うタブレットの登場は、ワコムのポリシーに沿った順当な進化といえる。

 最近では、仕事でPCを使う以上に日常生活でPCを利用するユーザーが増えてきたことで、誰もが使えるシンプルな使いやすいタブレットが求められるようになってきたと、クルーガー氏は分析する。ワコムがタッチ操作を導入した理由も「ユーザー主体」の考えから来ている。キーボードがいらないタッチ操作でPCがみんなで使えるものになる、というのがワコムの考えだ。

 「身振り手振りのゼスチャーは、コンピュータが分からない人間でも使うことができる。覚えるのも使うのも簡単だ。これを技術に統合するとどうなるか。その答えが、タブレットでタッチ操作を利用することにつながった」(クルーガー氏)

 ワコムの製品開発では、製品のターゲットとなるユーザープロファイルを具体的に、かつ、細かく設定して、そのプロファイルを持つユーザーが、どのようにPCを使い、タブレットにどのような機能を求めるかを調査する。タッチ操作を取り入れるBambooの開発にあたってワコムが想定したユーザープロファイルは、Webページやブログ、または、SNSで発信する情報の表現ツールとしてタブレットを使う普通のユーザーだったという。

 積極的に情報を発信するコンシューマユーザーにとって、Bamboo Pen & Touchは「自分の感情を表現しやすくする入力ツール」になるとクルーガー氏は説明する。もちろん、Windows 7でサポートされるマルチタッチを利用したPCの操作をカバーする入力デバイスとしてもユーザーに提案していきたいとワコムは考えている。

 ただ、それとともに、クルーガー氏は「Bambooは、キーボードとマウスと比べるものではない。入力用デバイスとしてキーボードとマウスは優れている」という考えも示している。Intuosシリーズが、クリエータたちの創作活動における表現手段であるように、Bambooは「感情をインターネット経由で発信するために、感情を直接表現できる指を使う入力ツールとして、コンシューマユーザーに使ってもらいたい」と、ワコムがこれまで取り組んできた「創造活動を支援するデバイス」として考える“タッチ”操作の意義も説明している。「“気持ち”をそのまま表現できるデバイスを開発して、ユーザーに提供していきたい」(クルーガー氏)

ワコムがBamboo Pen & Touchの発表会で示したメッセージには、すべてのPCユーザーが直感的にタブレットを使えるようにすることで、自分の感情を簡単に表現できることを“タッチ”で実現するとしていた

タッチを快適に実現するハードウェアリソースとは

 タッチパネルを搭載したPCで、ジェスチャー機能を利用するとき、よく体験するのが「指の動きに画面の動きがシンクロしない」という現象だ。指を滑らしても画面がスクロールせず、焦って操作を繰り返すとはるかかなたまで表示エリアが移動してしまったり、2本指でズームをかけてもすぐに反応せず、繰り返したらとんでもない画面が表示されてしまったりと、直感的で快適なはずのタッチ操作でストレスを覚えることも少なくない。指の動きと画面の動きがシンクロしてストレスのないタッチ操作を可能にするには、PC側にも高いパフォーマンスが必要なのではないだろうか。しかし、Bamboo Pen & Touchシリーズにハードウェアの推奨構成は特に示されていない。

 クルーガー氏は「ワコムの検証作業で、タッチ操作と画面の動きに目立った遅延は確認されていない」という。ちなみに、ワコムの検証作業で用いているシステムのパーツ構成を調べてみると、CPUには、Pentium 4/3.4GHz、Pentium 4/2GHzといった古いモデルから、Core i7-920(2.66GHz)やPhenom II X4 920(2.80GHZ)といった新モデルまで使われている。メモリ容量も、Core i7-920システムで4Gバイト、Pentium 4システムで512Mバイト〜1Gバイトとそれほどハイエンドの構成ではない。なお、GPUはGeForce GTX 260、Radeon HD 4870とハイエンドのモデルを使っているが、その一方で、ノートPCプラットフォームを採用しているヒューレット・パッカードの「HP Touchsmart IQ 500」でも検証を行っていて、こちらは、Core Duo T5850、4GバイトのDDR2メモリ、チップセットに統合されたGeForce 9300Mという構成だ。

 クルーガー氏がいうように、検証作業でタッチ操作が快適に行えたとすると、上記のように旧型のCPUや1Gバイト程度のメモリ容量、チップセットに統合されたグラフィックスコアでも、問題なくタッチ操作を利用できる環境が構築できることになる。

マルチタッチ機能を利用したジェスチャー操作でよく見られるのが2本指を使ったズーム機能だ(写真=左)。しかし、指の動きと画面の動きがシンクロせず、繰り返し指を動かして必要以上にズームさせてしまった経験をしたユーザーも多いのではないだろうか(写真=右)

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