進化か?退化か?──Let'snote J9の真価を問う見た目で判断してはいけない(4/4 ページ)

» 2010年09月28日 15時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

ベンチマークテストで考える“12万円”Let'snoteの“使える度”

 店頭向けスタンダードモデルでは、CPUにCore i3-370Mを採用して価格を抑えている。ただ、TDP35ワットモデルなので、動作クロックは2.4GHzになる。これは、Let'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディションで搭載していたCore i7-640UMの1.2GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大2.26GHzより高速で動作する。ただ、データストレージは160GバイトのHDD、システムメモリの容量は標準構成で2Gバイトに抑えられている「12万円前後」のLet'snote J9がどの程度のパフォーマンスを発揮するのか、気になるところでもある。

 そこで、やや旧モデルになるが、2010年1月に登場したLet'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディション(動作クロック1.06GHz、Turbo Boost Technology有効時で2.13GHzのCore i7-620UM、DDR3メモリ4Gバイト、250GバイトのHDDを搭載)と、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデル、そして、マイレッツ倶楽部限定プレミアムエディションで測定したベンチマークテストの値を比較してみた。

 なお、OSが異なる(Let'snote J9スタンダードモデルは32ビット版 Windows 7 Home Premium、Let'snote J9マイレッツ倶楽部プレミアムエディションとLet'snote R9は64ビット版 Windows 7 Professional)のと、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデルとプレミアムエディションがどちらも評価用試作機で製品版と測定結果が異なる可能性があるなど、厳密な比較にはならないため、参考値として考えていただきたい。

ベンチマークテストの結果 Let'snote J9 スタンダードモデルstandard Let'snote J9 プレミアムエディション Let'snote R9
PCMark Vantage Build 1.0.2.0 PCMark 10064 3622
memories 5075 1991
TV and Movies 3520 2439
Gaming 5472 1985
Music 13289 3878
Communications 10223 4410
Productivity 14286 2957
HDD 22656 3009
PCMark 05 Build 1.2.0 PCMarks 5096 3914
CPU 6466 8096 4490
Memory 5250 6474 4431
Graphics 2230 2256 1840
HDD 4307 4646
3DMark 06 Build 1.0.2 1280×768ドット、nonAA、nonAniso 1304 1390 1213
CINEBENCH R10 Rendering(Single) 2636 4558 2218
Rendering(Multiple) 5906 7757 3542
CrystalDiskMark3.0 read Seq 55.84 190.6
Read 512 23.64 174.3
Read 4 0.323 13.92
Read 4KQD32 0.705 16.34
Write Seq 55.49 171.2
Write 512 24.47 153.4
Write 4 0.761 22.32
Write 4KQD32 0.767 34.02
FINAL FANTASY XI Offical Benchmark 3 LOW 3658 4212 2416
High 2271 2615 1623

 Let'snote J9は、スタンダードにしてもプレミアムエディションにしても、Let'snote R9の結果を明らかに上回る。TDP35ワットCPUの高クロック動作が効いているようだ。データストレージ関連のテスト結果については、256GバイトのSSDを搭載するLet'snote J9 プレミアムエディションが群を抜いているが、160GバイトのHDDを搭載するスタンダードモデルは250GバイトのHDDを搭載するLet'snote R9を下回る。しかし、メモリ関連のテストでは、2Gバイトと不利な条件のスタンダードモデルの結果が、4Gバイトを搭載するLet'snote R9を超えている。

 このように、価格を抑えるために、CPUやメモリ、HDDのスペックを抑えたLet'snote J9の店頭向けスタンダードモデルでも、従来のLet'snote R9を超えるパフォーマンスを発揮する。これは、TDP35ワットの高クロックCPUを搭載しているおかげだが、消費電力の大きいCPUを搭載しているので、バッテリー駆動時間が心配になるかもしれない。しかし、Let'snote J9 マイレッツ倶楽部プレミアムエディションをBBench 1.01(海人氏・作)で「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」「無線LAN常時有効」「電源プランはバランス」(ただし、液晶ディスプレイの輝度は手動で20分の10レベルに設定)の条件で測定した結果は6.98時間と、コンパクトモバイルのノートPCとしては良好な結果を出している。

実は使い勝手に優れた「できる」モバイルノートPC

 Let'snote J9は、低価格で購入できるラインアップを追加するために、これまでのLet'snoteで重視してきた路線を思い切って変更したモデルだ。Windows 7 Home Premiumの採用、vProの非対応、そしてボンネット天面の廃止と堅牢性能の軽減など、Let'snoteの存在理由としてきた仕様やスタイルを大胆に変えている。

 デザイン的な理由のほかに、堅牢性能を維持するために着用が前提とされるジャケットを外すとコンパクトな印象となるが、「Let'snoteの個性がなくなって別なPCメーカーのノートPCにも見えてしまう」という声が多い。

 見た目では厳しい意見が多いLet'snote J9だが、実用的な評価では、解像度が1366×768ドットの10.1型ワイド液晶ディスプレイやキーボードの使い心地などかなりいい。ほかのLet'snoteシリーズが1280×768ドットにとどまっているだけに、画面回りの印象は一番いい感じだ。見た目で「マイナススタート」だったLet'snote J9だが、使う時間が長くなるほどに印象はよくなっていった。

 最初は外見に驚くかもしれないが、12万円の低価格モデルでも1366×768ドットという高解像度とLet'snote R9を超えるパフォーマンスが利用できるLet'snote J9。見た目だけで判断してはいけないノートPCだ。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
  1. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  2. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  5. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  6. 日本HP、個人/法人向けノート「Envy」「HP EliteBook」「HP ZBook」にCore Ultra搭載の新モデルを一挙投入 (2024年03月28日)
  7. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  8. そのあふれる自信はどこから? Intelが半導体「受託生産」の成功を確信する理由【中編】 (2024年03月29日)
  9. 天空がポータブルPC「AYANEO Flip」の予約販売を開始 実機を国内でお披露目 ハンズオンで作りの良さを実感 (2024年03月29日)
  10. 日本HP、“量子コンピューティングによる攻撃”も見据えたセキュリティ強化の法人向けPCをアピール (2024年03月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー