店頭向けスタンダードモデルでは、CPUにCore i3-370Mを採用して価格を抑えている。ただ、TDP35ワットモデルなので、動作クロックは2.4GHzになる。これは、Let'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディションで搭載していたCore i7-640UMの1.2GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大2.26GHzより高速で動作する。ただ、データストレージは160GバイトのHDD、システムメモリの容量は標準構成で2Gバイトに抑えられている「12万円前後」のLet'snote J9がどの程度のパフォーマンスを発揮するのか、気になるところでもある。
そこで、やや旧モデルになるが、2010年1月に登場したLet'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディション(動作クロック1.06GHz、Turbo Boost Technology有効時で2.13GHzのCore i7-620UM、DDR3メモリ4Gバイト、250GバイトのHDDを搭載)と、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデル、そして、マイレッツ倶楽部限定プレミアムエディションで測定したベンチマークテストの値を比較してみた。
なお、OSが異なる(Let'snote J9スタンダードモデルは32ビット版 Windows 7 Home Premium、Let'snote J9マイレッツ倶楽部プレミアムエディションとLet'snote R9は64ビット版 Windows 7 Professional)のと、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデルとプレミアムエディションがどちらも評価用試作機で製品版と測定結果が異なる可能性があるなど、厳密な比較にはならないため、参考値として考えていただきたい。
ベンチマークテストの結果 | Let'snote J9 スタンダードモデルstandard | Let'snote J9 プレミアムエディション | Let'snote R9 | |
---|---|---|---|---|
PCMark Vantage Build 1.0.2.0 | PCMark | − | 10064 | 3622 |
memories | − | 5075 | 1991 | |
TV and Movies | − | 3520 | 2439 | |
Gaming | − | 5472 | 1985 | |
Music | − | 13289 | 3878 | |
Communications | − | 10223 | 4410 | |
Productivity | − | 14286 | 2957 | |
HDD | − | 22656 | 3009 | |
PCMark 05 Build 1.2.0 | PCMarks | 5096 | − | 3914 |
CPU | 6466 | 8096 | 4490 | |
Memory | 5250 | 6474 | 4431 | |
Graphics | 2230 | 2256 | 1840 | |
HDD | 4307 | − | 4646 | |
3DMark 06 Build 1.0.2 | 1280×768ドット、nonAA、nonAniso | 1304 | 1390 | 1213 |
CINEBENCH R10 | Rendering(Single) | 2636 | 4558 | 2218 |
Rendering(Multiple) | 5906 | 7757 | 3542 | |
CrystalDiskMark3.0 | read Seq | 55.84 | 190.6 | − |
Read 512 | 23.64 | 174.3 | − | |
Read 4 | 0.323 | 13.92 | − | |
Read 4KQD32 | 0.705 | 16.34 | − | |
Write Seq | 55.49 | 171.2 | − | |
Write 512 | 24.47 | 153.4 | − | |
Write 4 | 0.761 | 22.32 | − | |
Write 4KQD32 | 0.767 | 34.02 | − | |
FINAL FANTASY XI Offical Benchmark 3 | LOW | 3658 | 4212 | 2416 |
High | 2271 | 2615 | 1623 | |
Let'snote J9は、スタンダードにしてもプレミアムエディションにしても、Let'snote R9の結果を明らかに上回る。TDP35ワットCPUの高クロック動作が効いているようだ。データストレージ関連のテスト結果については、256GバイトのSSDを搭載するLet'snote J9 プレミアムエディションが群を抜いているが、160GバイトのHDDを搭載するスタンダードモデルは250GバイトのHDDを搭載するLet'snote R9を下回る。しかし、メモリ関連のテストでは、2Gバイトと不利な条件のスタンダードモデルの結果が、4Gバイトを搭載するLet'snote R9を超えている。
このように、価格を抑えるために、CPUやメモリ、HDDのスペックを抑えたLet'snote J9の店頭向けスタンダードモデルでも、従来のLet'snote R9を超えるパフォーマンスを発揮する。これは、TDP35ワットの高クロックCPUを搭載しているおかげだが、消費電力の大きいCPUを搭載しているので、バッテリー駆動時間が心配になるかもしれない。しかし、Let'snote J9 マイレッツ倶楽部プレミアムエディションをBBench 1.01(海人氏・作)で「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」「無線LAN常時有効」「電源プランはバランス」(ただし、液晶ディスプレイの輝度は手動で20分の10レベルに設定)の条件で測定した結果は6.98時間と、コンパクトモバイルのノートPCとしては良好な結果を出している。
Let'snote J9は、低価格で購入できるラインアップを追加するために、これまでのLet'snoteで重視してきた路線を思い切って変更したモデルだ。Windows 7 Home Premiumの採用、vProの非対応、そしてボンネット天面の廃止と堅牢性能の軽減など、Let'snoteの存在理由としてきた仕様やスタイルを大胆に変えている。
デザイン的な理由のほかに、堅牢性能を維持するために着用が前提とされるジャケットを外すとコンパクトな印象となるが、「Let'snoteの個性がなくなって別なPCメーカーのノートPCにも見えてしまう」という声が多い。
見た目では厳しい意見が多いLet'snote J9だが、実用的な評価では、解像度が1366×768ドットの10.1型ワイド液晶ディスプレイやキーボードの使い心地などかなりいい。ほかのLet'snoteシリーズが1280×768ドットにとどまっているだけに、画面回りの印象は一番いい感じだ。見た目で「マイナススタート」だったLet'snote J9だが、使う時間が長くなるほどに印象はよくなっていった。
最初は外見に驚くかもしれないが、12万円の低価格モデルでも1366×768ドットという高解像度とLet'snote R9を超えるパフォーマンスが利用できるLet'snote J9。見た目だけで判断してはいけないノートPCだ。
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