こちらは、基本的に道具であるPC機器の動作に必要なもの。昨今のノートPCであれば、バッテリーによる長時間動作を実現するモデルのラインアップが増えているので、モバイルオフィス環境を整えたいのであれば、まずは自分の業務に必要な時間から、その時間を満たす仕様のPCを選ぶのが最初の手段となろう。
想定内の使用法であれば、それで普段は問題ない。ただ、ここではノートPC本体のバッテリー動作時間を超えた場合の対処法も考えたい。半日以上に渡り、モバイルオフィス環境でPCを動作させなければならない場合、どうすればよいか。どのような手段があり、これを行えばどの程度動作させることができるかのポイントを紹介していく。
有線しかネットワーク手段がなかった時代はさておき、2011年現在はさまざまな無線通信手段が整備されている。
かつてのPHSデータ通信や公衆無線LAN環境を経て、最大数Mbpsで通信できる3Gのデータ通信も月額数千円の定額制プランの登場でかなり身近なものとなり、さらに3Gのデータ通信より高速なWiMAXなど、新世代の無線通信手段も登場している。ただし、それぞれに一長一短がある。無線通信サービスの利用形態や業務に必要な帯域などの面から、それぞれに合った無線通信手段はどれだろうか。
そしてもし特定の通信手段が不通となってしまった場合、どう対応すればよいか。バックアップ手段の確保も含めて、ビジネスの内容によってはそうした対処法も検討しておかなければならないと思う。
作業データに関しては、そのアクセス方法とバックアップの両方をともに考慮する必要がある。
バックアップに関しては、過去に予算不足などの理由でそれを怠ったために何度か業務データを失ったことがある。筆者はそれを教訓に、現在の環境では2重のバックアップから、3重のバックアップへと切り替えている。アクセスに関してはセキュリティを意識した扱いを考慮すべきなので、それなりのエンタープライズ向けソリューションに任せるのが妥当かもしれない。今回はフリーランスの立場から、どのような手法があって、どのようなことができるか説明していく。
ここで言うコミュニケーションというのは、相手と業務上の意思疎通ができるかどうかということである。普段は電話やメールが一般的だが、万一時は電話は輻輳(ふくそう)や通話規制によってつながりにくくなり、メールも万一時は確実性に欠けるところはある。そこでさらなるバックアップとして、電話とメール以外のネットワーク上で行える第3、第4のコミュニケーション手段も確保しておきたい。
ちなみに、どうしても当人同士が接しなければならない事案もあるだろう。しかし、これが遠距離での在宅勤務の場合、そして交通機関がマヒしたような情況でどのような手段を講じればよいだろうか。この章では、普段のバックアップとして準備しておきたいネットワークサービスの紹介や利用シーンを紹介していく予定だ。
モバイルオフィス環境におけるネットワーク手段は、そのほとんどを公衆無線サービスを利用することになる。昨今は、さすがに接続した際に他のPCが見えてしまうようなずさんなネットワークサービスは減ったものの、オフィス内あるいは家庭内のネットワークとは異なるものであると心得たい。また、重要なデータを取り扱う場合はもちろん、普段も紛失や盗難のリスクには最大限に備えなければならない。
これは「データ」の章にも関わってくるが、外部からサーバに接続する際にはSSL-VPNのようなセキュリティ性の高いプロトコルも踏み込んで検討したいし、社内クラウドならまだしもオープンなクラウドサービスを利用する場合、そのクラウドサービスがどの程度信頼できるかを念頭に対策をとらなくてはならないと思われる。
さて、ここまで挙げた5つのポイントは、同時に企業内においては“リスク回避”のために待ったがかかるポイントでもあったりする。
ノートPCがあるといっても、バッテリー動作時間が短いデスクトップ代替のA4ノートPCでは結局は電源の有無に縛られてしまう。そして、インターネット通信手段がなければほとんどの場合オフィス業務は進行できない。また、データ共有やアクセスのルールを定めていなければ会社のデータはアクセスできないだろう。コミュニケーションは電話とメールがあるにしても、音声と文字だけで意思疎通がとれるのか。そしてセキュリティはどうだ──など。先とまったく同じプロセスだ。
ビジネスのダウンタイムを最小限に留めるためには、場所に捕らわれていたこれまでの業務スタイルを見直すことも必要だ。「想定外だった。仕方なかった」で済むものであればよいが、可能なところから少しでもモバイルオフィス環境の比率を高めていくことが万が一に対する備えになると筆者は考えている。
もちろんここで紹介するのはモバイルPCライターが実践する一般的なモバイルの心得であり、大企業レベルのソリューションを紹介するわけではない。しかし、「万一の備え」としてモバイルオフィス環境の比率を高めようと検討するビジネスユーザーにとって、何かのヒントになれば幸いだ。
(次回に続く)
次回より、上記で述べた項目のポイントや具体例を詳細に展開していく予定です。
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