“ビックE”登場!──6コアな新世代ハイエンドモデル「Core i7-3960X」を全力で走らせるイマドキのイタモノ(3/3 ページ)

» 2011年11月14日 17時00分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]
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SandraやCINEBENCHでケタ違いのスコアを見せつけるSandy Bridge-E

 今回の評価機材として用いるのは、CPUが最上位モデルのCore i7-3960Xで、マザーボードはインテルのDX79SIだ。比較機材としては、ハイエンドセグメントのCore i7-990XとIntel X58 Expressの構成、メインストリームの最上位モデルとしては、Core i7-2600KとIntel Z68 Express環境、さらに、AMD FX-8150とAMD 990FX+SB950環境を加えた。各環境の機材の詳細は以下の表を参照してほしい。

評価システム構成
CPU AMD FX-8150 Core i7-2600K Core i7-990X Core i7-3960X
動作クロック 3.6GHz 3.4GHz 3.46GHz 3.3GHz
マザーボード ASUS:CROSSHAIR V FORMULA MSI:Z68A-GD80(G3) ASUS:P6X58D-E Intel:DX79SI
Chipset AMD 990FX+SB950 Intel Z68 Express Intel X58 Express+ICH10R Intel X79 Express
Memory "G.Skill F3-14900CL9Q-16GBXL(DDR3-1866 4GB×4)" "CFD W3U1333Q-4G(DDR3-1333 4GB×4)" "CFD W3U1333Q-4G(DDR3-1066動作 4GB×3)" "G.Skill F3-14900CL9Q-16GBXL(DDR3-1600動作 4GB×4)"
GPU Radeon HD 6970
GraphicsCard ASUS:EAH6970/2DI2S/2GD5
HDD WD5000AAKS(500GB/7200rpm/16MB)
OS 64ビット版 Windows 7 Ultimate SP1

PCMark 05 Build 1.2.0
PCMark 7 Build 1.0.4(その1)
PCMark 7 Build 1.0.4(その2)

Sandra 2011.SP4c(17.77):Processor Arithmetic
Sandra 2011.SP4c(17.77):Processor Multi-Media

Sandra 2011.SP4c(17.77):Cryptography
Sandra 2011.SP4c(17.77):.NET Arithmetic
Sandra 2011.SP4c(17.77):.NET Multi-Media

Sandra 2011.SP4c(17.77):Memory Bandwidth
Sandra 2011.SP4c(17.77):Cache and Memory

CINEBENCH R11.5
MediaEspresso 6.5
消費電力

3DMark 11 Build 1.0.2
Lost Planet 2(DirectX 11)
Crysis 2(DirectX 11)

 PCMark 05は、Core i7-3960XがOverallでトップスコア。CPUスコアでは13364というスコアを出し、同じ6コアのCore i7-990Xに対してもリードしている。一方、Core i7-990XとCore i7-2600Kでは、Core i7-2600Kが上回っているが、これはPCMark 05がシングルスレッド中心のテストであるため、Turbo Boost Technologyによってより高クロックとなるCore i7-2600Kが優位に立つからだ。しかし、Core i7-3960Xの動作クロックはさらに上回ることから、Core i7-2600Kを超えたと考えられる。また、メモリスコアも10000の大台に載せている。

 PCMark 7は、こちらもわずかにCore i7-3960Xがトップだ。ただし、高スコアなのはProductivityやCreativity、Computationといったあたりだ。LightweightやEntertainment、System storageといった項目はほかの環境に劣っている。特に気になるのがSystem storageで、このテストだけ、ほかの環境を大きく下回っている。なお、DX79SIでは、Serial ATAドライバとしてRapid Storage Tecnology Enterpriseが用いられる。Enterprise向けのものとみられるが、これがまだパフォーマンスを出し切れていないといった印象だ。

 CPUとメモリにフォーカスして、Sandra 2011の結果を見ていこう。プロセッサ性能では、Dhrystone SSE、Whetstone SSEがCore i7-990Xに対しても大幅に向上し、AMD FX-8150に対してはそれぞれ約2倍に達する。Multi-Media Int x32、Multi-Media Float x16、Multi-Media Double x8に関しても、それぞれ向上しており、Multi-Media Float x16、Multi-Media Double x8に関しては2倍近く向上している。一方、.NET関連のテストはそこまでではなく、場合によっては劣るテストも見られる。Cryptographyは、AES256-ECB Cryptographic、SHA256 Hashing Bandwidthともに大幅に向上している。特に、AES256-ECB CryptographicはCore i7-990XやCore i7-2600Kの結果に対し2倍近い。

 Sandra 2011のMemory Bandwidthは、これも従来のプラットフォームに対し2倍以上のスコアになった。やはり、クアッドチャネルとDDR3-1600の効果は絶大といえるだろう。Cache and Memoryは、コアの数、高い動作クロック、大容量な3次キャッシュメモリと合わせて16Mバイト Blocksまで100Gバイト/秒超の値を示している。なお、3次キャッシュメモリ構造にフォーカスしてみると、Core i7-990Xの4Mバイト Blocksが54.75Gバイト/秒であるため、Core i7-3960Xは2倍以上の帯域と見ていい。また、Core i7-3960Xの16Mバイト BlocksとCore i7-2600Kの4Mバイト Blocksがほぼ同じスコアである点も、Sandy Bridgeアーキテクチャの傾向と見ることができる。その先の容量に関してはMemory Bandwidthで示された通り、30Gバイト前後のスコアで推移する。

 CINEBENCH R11.5では、Multi CPUとSingle CPUともに大きく向上している。なお、Core i7-2600KとSingle CPUの結果で比べてわずかに高スコアなのは、Turbo Boost Technology有効時の最大クロックの違いと見ることができる。

 トランスコードテストのMediaEspresso 6.5でも、Core i7-3960Xは最短をマークしている。なお、今回のテストでは、Core i7-2600KのQuick Sync Videoは利用していない。Quick Sync Videoが有効であるならば、Core i7-2600Kが最短ということもある。ただし、ソフトウェアエンコードで高画質を追求するユーザーには、Core i7-3960Xの、とにかく高い演算性能がより望まれるはずだ。

 3D関連のテストでは、3DMark 11でトップスコアではあるものの、CPU性能が影響するPhysicsテストで大きくスコアを伸ばしたのがOverallに影響しているようだ。Graphics、Combinedのスコアも悪くはないが、まだリリース直後ということもあり、すでに実績を積んだCore i7-2600KとIntel Z68 Express環境に及ばない。Lost Planet 2、Crysis 2に関しては、各CPUで大きな差は出ていない。比較的CPUの影響が出やすい低解像度でも、Core i7-990Xに対しては若干高く、あるいは、Core i7-2600Kと同じ程度のスコアだ。実際のゲームでクアッドコア以上を使う機会は少なく、Core i7-2600Kで十分ということも考えられ、性能差が出るとしたら、より高性能なGPUを組み込んだ場合、それも、マルチGPUのように使用するPCI Expressレーン数が影響する場合などだろう。

 消費電力の測定では、マザーボードが異なるためある程度の誤差を読み取る必要があるが、まず、アイドル時の消費電力に関して、同じSandy BridgeのCore i7-2600K+Intel Z68 Expressと大きく変わらず、Core i7-990X+Intel X58 Expressと比べると大幅な省電力化を実現している。また、全スレッド動作時の消費電力でも、Core i7-990X+Intel X58 Express環境に対して15ワットというオンボード機能の違いだけとは考えにくい差が生じている。これはシングルスレッド時も同様だ。

 なお、Core i7-990X+Intel X58 Expressからは若干電力面の制約が減ったとはいえ、Core i7-2600K+Intel Z68 Express環境に対しては、高負荷時でそれぞれ60ワットと40ワットの差があり、自作では、引き続きひとクラス大容量な電源ユニットが求められることになる。また、Core i7-3960X+Intel X79 Express環境はAMD FX-8150+AMD 990FX環境に対し、全項目でより低い消費電力値を示している。

群を抜く演算性能で電力効率も上がった。が、移行コストは覚悟せよ

 Core i7-3960Xは、演算性能に関しては現時点のコンシューマー向けCPUで最強だ。グラフィックスレンダリングのCINEBENCH R11.5やトランスコードのMediaEspresso 6.5のように、演算性能の影響が大きいアプリケーションでは十分に効果を発揮する。一方、もっと一般的な用途、ビジネスソフトやゲームなどでは、6コアを生かし切れないアプリケーションも多い。Turbo Boost Technology有効時の動作クロックが3.9GHzと高く、今回比較したCore i7-2600Kに対しては“100MHz分”のアドバンテージも示しているが、対Core i7-2700Kでは同じクロックとなってアドバンテージも薄れてしまうはずだ。クアッドコア以上のCPUで発揮できる優位性は、現状で「アプリケーションのマルチスレッドへの最適化次第」となってしまう。

 インテルは、Core i7-3000シリーズで訴求するのは、コンテンツクリエーションや映像プロシューマ、あるいは、トップランキングを目指すオーバークロッカーなどという。ここまでのベンチマークテスト結果を見れば、そうした方向性を打ち出す理由も分かる。あるいは、Core i7-3000シリーズ導入を機に、そうしたアプリケーションの世界に脚を踏み入れるのもいいかもしれない。

 いずれにしても、自分でシステムを構築する場合、そのコストは意識しなければならない。CPU、マザーボード、そしてメモリ、CPUクーラーユニット、場合によってはSerial ATA 6Gbps対応機器など、自作PCの載せ替えテクニックを駆使したとしても、かなりのコストがかかるはずだ。特にメモリを使いまわすのが難しいというのは想定外だろう。Core i7-900の3枚単位と今回の4枚単位では、枚数が合わないし、そもそも動作クロックが違うため性能を引き出せない。また、いくらメモリが安いとはいえ、クアッドチャネルの4DIMM、または、8DIMM構成は相性がシビアだ。安定動作を考慮すればそれなりのクラスのモジュールが必要になる。

 もちろん、CPUの価格も“ハイエンド”だ。1000個受注時価格がCore i7-3960Xで7万6860円、Core i7-3930Kで4万3090円だ。しかし、最高の性能を手に入れるための価格として妥当と思うユーザーは、間違いなく“買い”となるはずだ。

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