筆者はモバイル環境でノートPCを使い始めてずいぶん経つが、Windows 2000時代より未使用時はハイバネーション(休止状態)で運用するようにしていた。メモリの内容をHDDに保存するのでハイバネーション移行も復帰も多少の時間はかかるが、復帰はOSをコールドスタートするより速く、それでいてスリープと違い、バッテリー消費はほぼない。ノートPCでは1カ月以上再起動することがない──そんなことも珍しくはなかった。
一方、OSを再起動せずに使い続けるといろいろ細かい不都合が出てくるのも、PC USER読者であれば経験されていることだろう。長時間の動作を大容量のバッテリーでというより、CPUを中心としたデバイスの省電力化で実現する方向性のモバイルノートPCは、特定のサービスやドライバなどの不安定動作が消費電力に与える影響が意外に無視できない。アプリケーションの中には一度起動するとサービスが常駐しつづけるものもある。
こちら、当然手動でサービス自体を強制的に終了させるのもいいがそれは手間だし、そのことが違うトラブルのもとになる可能性も否定できない。前PCとなるCULVノートPCを使い始めた2009年ごろから消費電力をモニターできるソフトを活用しつつ、いつもより消費電力が高いなと分かった時は素直にOSを再起動するようにしたが、末期は再起動に2〜3分も要するようになっていた。3分って、自宅ではいざ知らず、モバイル環境ではかなり苦痛になる数値であり、OS起動時はPCがほぼフルパワーで動作する状態なので、バッテリーも余計に消費してしまう。結局どっちつかずなのだが……モバイルでの業務環境をできるだけ良好に整えるため、昨今のユーザーであれば気にしないであろうことを最近まで実施し、余裕を装いながら実はあれこれ苦労していたのだ。
で、dynabook R632に乗り換えたらどうか。先ほど「苦労していた」と過去形で述べた通り、その苦労はきれいさっぱりなくなってしまった。
本機は高速SSD搭載などによりそもそもOS起動(通常起動)が高速なのだが、それ以外に「東芝高速スタート」と呼ぶ東芝独自の機能も用意する。高速スタートモードでWindowsを“終了”すると、次回起動時にハードウェア構成が変更されていないことを前提にBIOS処理やOSの起動処理を最適化し、起動時間をカタログ値で約10秒短縮するというものだ。挙動を見ると電源がオフになった直後に再度SSDへちろちろアクセスしているので、OS起動時のメモリイメージをあらかじめ作成してSSDにイメージとして保存し、起動時に利用することでムダを省いているといった仕組みだろう。
ともあれ高速スタートモードは、とても効果がある。筆者のdynabook R632はすでにさまざまなソフトウェアがインストール済みだが、通常起動でWindows 7のログオン画面表示まで約17秒、一方の高速スタートモードなら約8秒で表示される。ここからすぐログオンすれば、ほんの30秒ほどで常駐アプリ起動なども含めたクリーンな状態でフル起動できる。
ちなみにハイバネーションからの復帰だと、デスクトップの表示まで20秒ほど。あまり差がないので、数分〜2、3時間の休止なら即復帰するスリープを、それ以外であればバッテリー消費的に安心で、かつクリーン状態で起動できる「高速スタートモード」を活用するようになった。
というわけで筆者は、高速スタートモードをdynabook R631の「プレゼンテーションボタン」に割り当てて使っている。高速スタートモードはアプリケーションの1つで、「C:\Program Files\TOSHIBA\Power Saver\THyboot.exe」として存在しているので、この実行ファイルを割り当てるだけ。こうすれば、電源ボタンと同じように、特別な機能としてではなく普通に日々活用できるようになる。
うん、「東芝高速スタート」は確かにジミだが……あればじわじわ効いてくるのだ。
(続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.