ソニーが発売したWindows 8搭載の11.6型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」は、デジタル環境でイラストやマンガを描くユーザーにとって、かなり興味をそそられる製品ではないだろうか。
独特のスライド式ボディをたたむと、単体のタブレットデバイス感覚で使えるのに加えて、筆圧対応のデジタイザスタイラス(ペン)も付属している。見ようによっては、モバイルノートPC、タブレットデバイス、そして液晶ペンタブレットが1つにくっついてしまった製品といえる。
PCとしての全体像については既に詳細なレビュー(前編、中編、後編)を掲載しているが、今回は「絵描きの目線」から同モデルの感想を述べていこう。
まず最初に断っておくと、現状ではVAIO Duo 11の筆圧機能が使えるソフトウェアは限られている。さらに、ペンの仕様やサポートについては詳しく公開されておらず、現状では使えるソフトの全貌が分からない。お絵かきマシンとしてのVAIO Duo 11を考えたとき、一番のネックになるのがこの部分だろう。
例えば、VAIO Duo 11向けに用意されている付属ソフトやダウロード提供のソフトを試してみても、「Microsoft Office Home and Business 2010」に含まれる「PowerPoint 2010」や「OneNote 2010」、Windowsストアアプリのペイントツール「Fresh Paint」では筆圧機能が使えるが、手書きメモツール「Note Anytime for VAIO」や定番グラフィックスソフト「Adobe Photoshop Elements 10」では、現時点で筆圧機能が使えない(もちろん、ペンでの描き込み自体は問題なくできる)。
ソニーは公表していないが、VAIO Duo 11に採用されている電磁誘導式デジタイザスタイラスはイスラエルのN-Trig製のようだ(ペン自体は電磁誘導式のものを使っているが、電磁誘導で電力供給をしておらず、電波でペンの座標を認識しているため、正確には電磁誘導で駆動しているわけではない)。付属のデジタイザスタイラスにN-Trigのロゴが確認できる。
N-Trigのペン入力システムは、これまで複数の大手PCメーカーに採用されてきた実績がある。VAIO Duo 11ではこれに加えて、液晶ディスプレイの表面仕上げやペン先の硬さ、デバイスドライバのチューニングなど、独自に書き味を追求したという。
ただし、筆圧機能の対応については、どのメーカーのペン入力システムを用いているかで状況が異なる。
ペイントソフトなどで筆圧機能を実現するためのAPIには、「TabletPC」と「WinTab」の2種類があるのだが、VAIO Duo 11が採用するデジタイザスタイラスはTabletPC APIにしか対応しない。ワコムのタブレット製品や、PhotoshopなどのメジャーなグラフィックスソフトでサポートしているWinTab APIは利用できないのだ。そのため、TabletPC API対応のソフトのみで筆圧機能が使えるものと思われる。
このTabletPC APIに対応しているお絵かき系ソフトとしては、セルシスのイラスト制作ツール「IllustStudio」やマンガ制作ツール「ComicStudio」などが有名どころだ。実際にこの2つのソフトではVAIO Duo 11の筆圧機能が利用できた。今回はこのIllustStudioを使って、VAIO Duo 11の使い勝手を試してみよう。
ちなみに、IllustStudioで筆圧機能を使えるようにするには設定の変更が必要だったので、使う際には気をつけてほしい。環境設定を開き、「タブレット・デバイス」にある「使用できるタブレットサービス」を「Wintab」から「TabletPC」に切り替えることで、筆圧が反映されるようになる。
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