魅力あるケータイを低コストで開発、FMBC戦略で総合力を発揮――KDDIの2009年3月期決算夏モデルも自信アリ

» 2009年04月23日 23時34分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 KDDIは4月23日、2009年3月期の決算を発表した。連結ベースの売上高は前期比2.7%減の3兆4975億円、営業利益は前期比10.7%増の4432億円の減収増益となった。

 携帯電話事業の売上高は、前期比5%減の2兆7192億円と減収だったが、営業利益は10.2%増の5014億円を達成した。端末販売が前期比32%減の1081万台と大きく落ち込み、在庫65万台の調整などで257億円の特損を計上したが、販売手数料(奨励金)の減少もあり増益を果たしている。

 2009年3月末のau契約数は76万回線増の3084万回線で累計シェアは28.7%。ARPUは音声の低下があったもののデータの下支えがあり前期比7.3%(460円)減の5800円、解約率は前期比0.19ポイント低下の0.76%に改善した。WIN契約数も全体の74%へ増加し、パケット定額制の契約率も72%と高水準を維持した。

 設備投資額は4321億円にのぼり、うち新800MHz帯への対応費が2001億、2GHz帯への投資が1066億円とエリアカバレッジに関するものが大半を占めた。来期も同規模の基地局設備を行う予定だが、設備単価の低減により設備投資額は減少する見通しだ。

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KCP+の低コスト効果でニーズに即した端末を開発

photo KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏

 決算会見に臨んだKDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、「端末販売台数の低下で減収したが、同時に販売手数料の減少で増益となった。契約数も76万増でシェア30%に近づくなど、おおむね順調に成長している」と、2008年度を振り返った。来期への課題としてコスト構造の見直しによる事業基盤の強化を挙げ、携帯事業では競争力のある端末開発と的確な市場への投入、大企業向けの新ソリューション提供や中小企業向けの顧客開拓とフォロー体制の強化が重要だと付け加えた。

 08年度の端末販売台数は1000万台を上回ったものの、前期比32%減と急激な大きな落ち込みを記録。期末には在庫が169万台(前期比39万台増)へと積み上がった。KDDIでは廃棄損の計上とメーカーへの発注数、販売手数料単価をコントロールすることで、第3四半期はある程度持ち直したという。

 来期の端末販売目標はちょうど1000万台だが、小野寺氏は「景気後退の影響は大きく、来期1000万台も厳しい印象だ。1000万台という数字は携帯電話事業の1つの基準。これを下回らないように努力しないといけない」と、依然厳しいという見方を示した。店頭で0円/1円端末が復活しつつある現状については、「当社だけの価格戦略とはいえない。他社が0円/1円でやっている以上、手数料を増額するなどして我々も対応しなくてはならない。分離プラン導入の意義が問われるかもしれないが、現在の競争環境では対応せざるをえない」(小野寺氏)と苦しい立場を説明した。

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 また端末出荷の減速や開発コストの上昇を受け、ドコモが100億円規模のメーカー支援を行う点については、「メーカー支援とは言いたくないが、auの場合『KCP+』が当てはまるだろう。KCP+の開発費はKDDIが負担しており、メーカーは基本的なアプリケーションを開発しなくてもよい」(小野寺氏)とそのメリットをアピールした。また、当初は不具合が多発し、処理速度の遅さも指摘されたKCP+だが、小野寺氏は「ほとんどの問題は解決され、他社に負けているとは思わない」と自信を見せた。新モデルではディスプレイサイズの拡大やこれまでにないデバイスの搭載などで部材調達費の負担が増え、端末全体の開発コストは上がっているが、KCP+によるソフト開発のコスト低下は効果が出ているという。

 従来モデルに加えデザインを重視するiidaブランドを立ち上げられたのも、KCP+による恩恵が大きいとし、間もなく発表される2009年夏モデルについても多品種展開を続ける考えを示した。

 「春モデルもかなり自信のあるモデルを出したが、この夏モデルも良いものが出せると思う。出荷台数が減少していても、ニーズの多様化には応えなければならない。機種数やカラーバリエーションを、今よりも減らす必要はないと思う。かといって、極端に増えることもないと思う。結果として1機種あたりの販売数量は減るが、それを理由にメーカーへ特別な支援を行うことはない」(小野寺氏)

固定通信サービスを充実

 FTTHなどKDDIの固定系アクセス回線は、3月末に534万回線となり順調に増えた。今期に連結子会社化した中部テレコミュニケーションや、従来はその他セグメントに含まれていたJCNグループ、海外固定系子会社の実績を含めた結果、固定系の売上高は前期比18.1%増の8487億円を記録したが、営業費用も9053億円と大幅に増加し、通期で566億円の赤字となった。

 固定事業の中でも、法人向け事業、CATV、メタルプラス(直収電話)などは黒字化しているが、全体ではFTTHの赤字が大きく影響した。ただ、FTTHの純増数は着実に増加しており、KDDIが持つほかのサービスと組み合わせた場合のメリットを訴求することで普及を加速させ、早期の黒字化を図る考えだ。

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 「固定系の今期の課題は、FTTHの顧客基板拡大と固定費の削減。法人向けでは、固定と移動を問わないICTソリューションをグローバル規模でワンストップ提供する体制作りを目指す。100億200億とは思わないが、まずは黒字になることが大事だろう」(小野寺氏)

 固定系の充実は、携帯事業と組み合わせた「FMBC」(Fixed Mobile Broadband Convergence)サービスの強化につながるだけでなく、携帯電話販売の鈍化が著しい販売店対策にもなる。小野寺氏は「前期末から一部の店舗では固定サービスの販売を行っている。端末と違いFTTHは在庫が発生しないうえ、販売手数料も携帯電話よりも多い。販売店の中でも固定系の重要性について気が付いているところがある。auの携帯電話ではユーザーが販売店に足を運んでもらえる施策をいくつか行っており、来店機会の増加を促進している。こうしたユーザーに対して、固定サービスは魅力的な商材になるだろう」と説明した。

見通しが甘かった「チャレンジ2010」

 KDDIは2009年3月期の決算発表で、2010年3月期の業績見通しを明らかにした。来期は売上高3兆4800億円、営業利益は4700億円になる見通しだが、同社が2007年04月に発表した「チャレンジ2010」が定めた売上高4兆円、営業利益6000億円は下回る計画だ。

 小野寺氏は「自分の見通しが甘かったというしかない」と感想を述べ、携帯電話事業の減収減益が一番大きく影響したことを明かした。なかでも端末販売への分離プラン導入が「想定外だった」(小野寺氏)という。ただすべての目標が達成できないわけではなく、固定系の黒字化はなんとしても堅持すると明言した。

 積極的成長をうたったチャレンジ2010だが、2010年以降については持続的な成長を目指すとしている。すでに社内では2010年以降を目指したリポートに着手しているという。社長就任9年を迎える小野寺氏は自身の去就を交えて「後継者の育成は自分にとっても大きな課題。“チャレンジ2010後”へ向けた活動の中から、新しいリーダーが台頭することを期待したい」とコメントした。

 KDDIは2010年10月に発足10年を迎える。チャレンジ2010後の経営計画については、このタイミングで発表されるという。

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