M2Mの採用で普及率が3倍増――在宅医療をサポートする「HOT見守り番 TOMS-M」:MCPC アワード 2011

» 2011年05月12日 09時00分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 医療技術の進歩と社会保障制度の見直しにより、従来は入院が必要だった治療を自宅で行う在宅医療が進んでいる。MCPC award 2011のグランプリ(大賞)にノミネートされた帝人ファーマの在宅医療モニタリングシステム「HOT見守り番 TOMS-M」は、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)で用いられる家庭用酸素濃縮器の遠隔管理に使われるシステムだ。MCPC award 2011の会場では帝人ファーマの峠真一氏が最終プレゼンテーションを行なった。

photo 帝人ファーマの峠真一氏

 在宅酸素療法とは、慢性的な呼吸器疾患の患者などが受ける治療法。自宅に酸素濃縮器を設置し、睡眠時や階段を上り下りしたあとなど、酸素不足が起こる際に高濃度の酸素を送る。かつての酸素療法は保険の適用外であったり、入院が必要など患者の負担が大きかった。在宅化が進んだ現在は、国内で約15万人が在宅の酸素療法を受けており、半数以上の約8万人が帝人ファーマの酸素濃縮器を利用している。患者の負担は大きく減り、仕事や趣味が再開できるようになったなど喜ばれる声が多いという。

 一方で、新たな課題も生まれた。HOT用の酸素濃縮器は患者の命に直結する機器であり、家庭で使われるためメンテナンスなどの保守業務には細心の注意が必要になる。帝人ファーマでは24時間体制のコールセンターを設置しているが、機械の操作に不慣れな高齢者や目や耳が不自由な患者へのサポートが難しく、また核家族化や独居化が進んだことで、機器の経年劣化や不具合、故障に気が付かない恐れがあった。

photophoto HOTとは在宅酸素療法のこと(左)。帝人ファーマの酸素濃縮器を遠隔監視する「TOMS」(右)

photophoto 在宅酸素療法への不安の声(左)。固定回線を使っていた旧TOMSの課題とM2Mを採用した「TMOS-M」の利点(右)

 帝人ファーマは1999年から、固定回線を通じて酸素濃縮器を遠隔監視する「TOMS」(Teijin Oxygen-concentrater Monitoring System)の運用を開始したが、ドアホンやADSL、FTTHなど患者宅の多種多様な固定回線に合わせた工事が必要なため、あまり普及していなかった。この回線工事を容易化して機器の普及を目指したのが、携帯電話網を介して機器をモニタリングするTOMS-Mだ。

 TOMS-Mは担当営業が患者宅を訪問し、酸素濃縮器にM2Mモジュールを取り付けるだけで設置が完了する。その簡単さから、運用を開始した2010年7月からの10カ月間で設置数が3倍以上に増加。当然、作業コストの削減にも貢献した。

 TOMS-Mは運転履歴を1日1回、ドコモ網を使うVPN回線で帝人ファーマのサーバに送る。このデータは機器のメンテナンスに役立てるのはもちろん、リポートを医師に提供することで、患者が正しく酸素療法を行っているかの指導も可能になったという。利用内容としては固定回線を使うTOMSと同じだが、利用できる患者が増えたことで、患者本人はもちろん、その家族や医師からの評価が上がった。

 またTOMSの基盤技術は、ほかの医療機器への展開もできるよう設計されている。在宅医療で使われる機器は増えており、酸素濃縮器同様に遠隔監視・操作のニーズも高い。M2Mの導入で一定の普及が見込めたため、ほかの機器を接続してのモニタリングプラットフォームとしての利用も考えられる。

photophoto 「TMOS-M」の概要(左)と導入後のメリット(右)

photo 東日本大震災では、TOMSの通信履歴をもとにサポートの優先順位付けを行った

 さらにTOMSは、今回の東日本大震災で一定の役割を担った。帝人ファーマでは災害などで停電が起きた際、患者宅に訪問してバッテリーや代替となる酸素ボンベを提供している。今回の震災では地震や津波の影響のほか、計画停電も入れると約2万人の患者が影響を受けたが、あまりに被害が大規模なため、同時にすべての対応を行うことは不可能だった。

 そこで、TOMSの通信履歴を患者の優先順位付けに利用し、停電や通信障害などで送信履歴がない地域を中心に対応を進めたという。とはいえ、多くの患者宅で遠隔監視が停止したため、人海戦術で対応せざるをえなかった面も強い。帝人ファーマでは災害対応を課題の1つととらえ、今後の改善が必要としている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年11月05日 更新
  1. ダイソーで1100円の「PD対応20Wモバイルバッテリー」を試す 手頃な価格でそこそこ高速にスマホを充電可能 (2026年10月31日)
  2. 情報漏えいの「おわびメール」が毎日届いてうんざり……漏れた情報別に“最低限やること”をまとめた (2026年11月04日)
  3. 12月から変わるahamoの新料金を検証 165円値上げでも“実質値下げ”になる人は? 他社とも比較 (2026年11月04日)
  4. ドコモだけ鳴らなかった「緊急地震速報」、前田社長がエリアメール不具合を謝罪 (2026年11月04日)
  5. GMOインターネットの情報漏えい事案で総務省が業界団体に「ブロッキング要請」との報道 NTTは動いた? (2026年11月05日)
  6. ドコモは「つながって当たり前」をどう実現? 「置局」業務の舞台裏を紹介 (2026年11月04日)
  7. 「有料放送や配信コンテンツが永久に無料!」──怪しい動画ストリーミング機器に総務省が注意喚起 サイバー攻撃の踏み台に悪用されるおそれ (2026年03月10日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. PayPay、セキュリティ対策は「万全を期すべく総点検している最中」と中山社長 (2026年11月04日)
  10. 【ワークマン】2900円の「エックスシェルター断熱αバックパック」予約販売中 特殊な断熱シートで外気の影響を防ぐ (2026年11月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー