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» 2009年12月31日 12時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:キーワードは「停滞と変化」――2009年のモバイル業界を振り返る(後編) (1/2)

携帯電話の進化はとどまるところを知らない。2009年は、イー・モバイルやUQコミュニケーションズによる“非携帯電話”分野も大きな発展を遂げた。後編では、これら新興キャリアの動向と2010年への期待をまとめる。

[神尾寿,ITmedia]

 「携帯電話」市場全体の流動性が低下し、閉塞感が漂う中で、堅実な成長を遂げたのがデータ通信市場だ。とりわけイー・モバイルとUQコミュニケーションズは、高速・大容量通信の"モバイルブロードバンド"をセールスポイントにし、小型・低価格なノートPC市場の拡大と歩調を合わせて成長した。

 Mobile+Views年末特別企画の後編では、これら新興キャリアの動向を振り返りつつ、2010年の注目ポイントや期待についても述べたいと思う。

データ通信市場の拡大が追い風になったイー・モバイル

 誤解を恐れずにいえば、2009年は「非携帯電話」分野がおもしろかった。「iPhone 3GS」などスマートフォン市場の芽吹きはその1つであるし、ネットブックなど小型ノートPCの市場が予想外に伸びたことも今年の特徴的な出来事といえる。

 そして、この小型ノートPC市場の成長を追い風に、存在感を増したのが新興キャリアであるイー・モバイルだ。同社はデータ通信を重視したキャリアとして2007年からモバイル市場に参入し、2008年からデータ通信端末とセットでノートPCやネットブックを割引販売。家電量販店を通じて、さまざまなセット商品やキャンペーンでデータ通信端末を販売し、この分野での地歩を確立した。また、HSDPA/HSUPAの高速化やHSPA+の導入も積極的に行い、今年に入ってからも好調に契約者を獲得している。

 イー・モバイルの強みは、データ通信を重視した特化型キャリアであることを生かして、積極的かつ集中的なマーケティングを行うところにある。昨年話題になった(そして物議を醸した)「100円PC」や、Wi-Fiルータ「Pocket WiFi」とニンテンドーDSやiPod touchとのセット販売はその一例といえる。

 また同社のデータ通信サービスはISPサービスとセットになっており、初期設定や利用が比較的簡単であるなど、初心者向きであることも特長だ。最近の小型ノートPC市場の拡大で増えた、カジュアルなユーザー層にぴったりなのだ。

 一方、これまでイー・モバイルの課題であったサービスエリアは、今年1年でずいぶんと改善された。筆者は仕事柄、全国あちこちを移動しているが、今年は政令指定都市級の市街地はもちろん、郊外やリゾート地でもイー・モバイルが使えるようになったと実感した。また屋内へも予想以上に電波が浸透しており、窓がある部屋ならば圏外になるということはほとんどなかった。しかし、その反面、東京都内のオフィス街や繁華街では、時間帯によって実効通信速度が著しく落ちることもあった。これはイー・モバイルのユーザーが急増していることの証左であるが、ここでしっかりと混雑対策ができるかどうかが重要な課題になっている。

 そしてもう1つ、2010年に向けたイー・モバイルの課題が「スマートフォン」や「電話機型端末」のテコ入れだろう。これまではサービスエリアの拡大中であったこともあり、音声サービスを軸にした端末は、データ通信端末ほどの伸びが見られなかった。しかし、キャリアとしての収益拡大や事業モデルのバランスを考えると、データ通信サービス専業での成長は限界がある。とりわけ今後は、3G分野でドコモとの競争がさらに激化し、一方でUQコミュニケーションズが展開する「UQ WiMAX」の存在感も強くなってくる。音声サービスをしっかりと訴求し、大手3キャリアの中に独自のポジションが築けるかが、2010年の注目ポイントと言えそうだ。

2009年は準備期間――今後が期待のUQコミュニケーションズ

 今年のデータ通信市場で、イー・モバイルの躍進と並んで注目だったのが、新たに割り当てられた2.5GHz帯の周波数を用いてモバイルWiMAXでのデータ通信サービスを展開するUQコミュニケーションズの新規参入だろう。同社のUQ WiMAXは、3G系のモバイルデータ通信サービスを超える実効速度と、PCとの親和性の高さがポイント。インテルが後押ししていることも手伝い、早いタイミングからモバイルWiMAXモジュール内蔵のノートPCが登場するなど、これまでの3Gキャリアとは異なるアプローチでデータ通信市場に参入してきた。

 しかし、通信キャリアの常であるサービス開始初期の「エリアの狭さ」はUQ WiMAXでも例外ではない。とりわけサービス開始直後は基地局の制御ソフトウェアが安定しなかったことにより、通信品質はお世辞にもよい状態ではなかった。だが、今年10月頃からは都内のエリア品質が目に見えて向上しており、次第にビジネスシーンでも使えるサービスになってきた。UQコミュニケーションズによると、基地局設置のペースは上がってきており、エリア拡大は順調に進んでいるという。来年には屋内設置可能な小電力出力リピータも投入される予定なので、ドコモやイー・モバイルに大きく後れを取っている屋内エリアの拡大も進みそうだ。

 UQ WiMAXのサービスはつながれば高速で快適であり、初期設定や接続の手順もシンプルで簡単だ。今後、エリア問題が解消していけば、カジュアルなモバイルインターネットの通信手段として広がる可能性がある。モバイルデータ通信のユーザー層を拡大し、市場の裾野を広げることができそうなのだ。そのためにもUQコミュニケーションズには、エリアの拡大と通信品質の向上をいち早く実現してもらいたいと思う。

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