iPadの次の目玉がスペックと、その搭載ソフトウェア、そして新サービス「iBookstore」だ。スペックについては1GHz駆動のApple A4という謎のプロセッサを搭載しているとのことだが、iPhone OSやアプリがそのまま動作していることを考えて、中身的にはARMベースの最新プロセッサだとみられる。
大型で高機能版iPhone/iPod touchという印象のiPadだが、注目すべきはマルチタッチに対応した9.7型IPS液晶ディスプレイと、10時間動作を可能にするバッテリー容量の大きさだ。事前に電子ブックリーダーとしてのiPadの話があった以上、ディスプレイでの文字の読みやすさとバッテリー駆動時間は重要なポイントとなる。その問題をクリアできるだけのスペックを実現した点は高く評価したい。
iPadではiPhone OSがそのまま動作するが、これが意味するのはApp Storeのアプリ資産の継承だ。14万以上というアプリがそのまま使えれば、それだけでiPadは魅力的なプラットフォームになる。ただご存じのように、320×480ピクセルという比較的低解像度の固定サイズスクリーンで3世代にわたってiPhone/iPod touch製品がリリースされ続けてきたこともあり、多くのアプリはこの固定長サイズの画面を基準に作られている。
そこでiPadでは既存アプリのピクセルを2倍に引き延ばすことで、比率や基本解像度そのままに画面の大型化を行っている。これはハードウェアとOS側で処理されるため、既存アプリはそのままの状態でiPadの大型スクリーン環境を利用できる。もちろん、XGA(768×1024ピクセル)というiPadの新しいスクリーンサイズを利用できたほうがいいわけだが、それは今後開発者側が2つのプラットフォーム向けに異なる表示方法を採用したアプリをリリースすることで対応していくだろう。
イベント同日、Appleは最新のiPhone OS 3.2 SDKを発表しており、このエミュレータを使って、実際にiPadがリリースされるまでの期間、さまざまな新アプリ開発や動作検証を進めていくことになる。
だが、一部デベロッパーに対してはすでにiPadや新SDKを渡して対応アプリ開発を依頼しており、ステージ上のデモではゲームなどを中心に、iPadのフルスクリーンサイズや3点タッチなどの新機能を活用した例が見受けられた。iPad専用アプリという意味ではiWorkが面白い。MacユーザーにはおなじみのiWorkのiPad版だが、タッチ操作やバーチャルキーボード前提にかなり改良が加えられている。まず動きが非常にスムーズで“ぬるぬる”なこと、タッチ操作前提のUI、バーチャルキーボードの使い分けなど興味深いものだ。ここで登場したのがiLifeではなく、あえてiWorkという点でiPad用デモとしての特性を感じることができた。値段が1種類あたり9.99ドルと安価なのも好感度が高い。
そして最後の目玉が電子ブックアプリ「iBooks」と、その配信サービスである「iBookstore」だ。残念ながらハンズオンで用意されたデモ機ではiBookstoreが動作しなかったため、値段や配信方法、検索システムなどサービス概要については不明だが、iTunes StoreやApp Storeですでに好評を得ているAppleなので、ある程度以上期待できるものになるだろう。
むしろ問題はコンテンツの充実度のほうで、リーク情報の段階でも多くの出版社や新聞社と交渉にあたるAppleの様子が散見できた。Amazon.comのレベルに最初から追いつくとは思わないが、評判を得て少しずつパートナーを増やしていく形態が理想的だ。ちなみにiBooksはiPadからも直接購入可能ということで、このあたりはiPhone/iPod touchのiTunes Music StoreやApp Storeと同じ位置付けだろう。
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