インタビュー
» 2013年01月01日 09時00分 UPDATE

新春インタビュー:スマートフォン普及後をめざし、総合サービス企業化を加速する――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く (2/3)

[神尾寿,ITmedia]

ドコモサービスのマルチキャリア化とユーザー導線の再設計

―― 昨年からドコモは「サービサー化を進める」という経営戦略を採っていますが、これは2013年になってさらに加速するのでしょうか。

加藤氏 当然それは進めていきます。すでに2012年の段階で土台ができてきていますし、手応えも感じています。

―― そこで注目しているのが、こうした“サービサーとしてのドコモ”におけるマルチプラットフォーム/マルチキャリア戦略です。2012年に投入された「dゲーム」では、ドコモとしては初めてAndroidだけでなくiOSをサポートし、ドコモユーザー以外も利用できるようになりました。今後、ドコモのコンテンツ事業やサービス事業において、このようなオープン化は進んでいくのでしょうか。

加藤氏 まずドコモ(回線)のお客様がメインであることは変わりませんが、今後は他キャリアのお客様やPCユーザーの皆様にも、ドコモのコンテンツや各種サービスをお使いいただけるようにしていきたいと考えています。APIの開放や(他社との)連携スキームの構築をどうするかといった部分も含めて、戦略的にオープン化は行っていきたいですね。

―― 今回はdゲームというソーシャルゲームから始まりましたが、今後はdマーケットVIDEOストアやアニメストア、さらにはドコモクラウドの根幹であるメールサービスなども、マルチプラットフォーム/マルチキャリア化の対象になっていくのでしょうか。

加藤氏 そうですね。そして、その時に大事なのが「docomo ID」です。(ドコモの)メールがポータビリティを持った時にどういう意味になるのか。GoogleのGmailのような位置づけになれれば、それはそれでいいことだと思うのですけれども、これは一足飛びにはいかないと思います。しかし、いずれにせよ、ドコモの上位レイヤーであるサービスはオープン化の方向に進んでいきます。

―― そういった上位レイヤーでの競争では、他キャリアとは別の競合相手も出てきますね。そこでドコモの優位性・競争力をどこに据えていくのかが重要になります。

加藤氏 品ぞろえや(グローバルでの)顧客規模では、GoogleやApple、Amazonといった企業に有利な部分があります。一方でドコモには、リアルなお客様との接点があり、(お客様との間に)積み上げられてきた信頼があります。「ドコモが提供するから」という安心・安全の部分が、我々の優位性になると考えています。特にドコモのお客様に対しては、ドコモブランドの信頼感が訴求力になるでしょう。

―― eコマースに関して見ても、Amazonや楽天は信用できない、インターネットでクレジットカードを使うのは不安という層が少なからずいます。ITリテラシーの高い人があたりまえに利用しているサービスに対して、警戒感や不安感を持つ人はかなり多い。そこにドコモという“顔が見えるブランド”の安心感はありますね。

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加藤氏 その手応えはすでに感じています。例えば、dマーケットVIDEOストアですが、ネット上には類似の(映像配信)サービスはいくつもある中で、後発でも我々のVIDEOストアが伸びている。それはなぜかというと、ネット上に数多あるサービスから自分に合ったものや信頼できるサービスをきちんと探し出せる人ばかりではない、ということなんです。そのような中で、ドコモがサービスを用意し、ドコモショップなどのリアル店舗を通じて対面でお勧めしていく強みがあるのです。

―― 確かに、豊富な選択肢から自分にあったものを細かく選択していく自由を求める人がいる一方で、面倒だから自分にあったものをリコメンドしてほしいという人も少なくありません。

加藤氏 おっしゃるとおりですね。自由というものが、不自由につながることもあるのです。お客様の選択肢を豊富にするのは大切だと思いますが、これからはお客様が求めるものを選びやすいようにしてリコメンドしていくことが重要になっていくでしょう。

―― ドコモの経営にとってコンテンツや(eコマースなどの)各種サービスが重要になればなるほど、ストアのUI、とりわけユーザー導線の設計をどうするかが重要になります。AppleやGoogleなど他社のストアを見ても、このユーザー導線の部分は課題や問題点がとても大きい。

加藤氏 そのとおりです。ストアのUIやユーザー導線の再設計は、今後積極的に行っていきたいと考えています。その中でも我々が重視しているのが、「しゃべってコンシェル」に代表されるエージェント機能です。非常に曖昧な条件で、友達に尋ねるように(自然言語で)ニーズを伝えて的確なコンテンツやサービスが答えとして提示されるようにしていきたい。ここは継続的に研究開発やノウハウの蓄積を行っていきます。

端末ラインアップは「選択と集中」で絞り込む

―― コンテンツ/サービス分野への取り組みが強化される中で、2013年のドコモの端末ラインアップの戦略はどのように変化していくのでしょうか。

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加藤氏 まず、ドコモとして「Androidスマートフォンが主軸である」という方針は変わりません。その上で端末ラインアップがどうなるかと言いますと、モデル数がむやみやたらと20機種近くもあるといった状況は改めます。モデル数を絞り込み、明確なセグメント化をしていく。

―― ラインアップの「選択と集中」ですね。その時の規模感としては、どのくらいのものになるのでしょうか。

加藤氏 あまり厳密には言えませんが、スマートフォンとタブレットなどを合わせて10〜15機種くらいのイメージでしょうか。また商戦期に対する考え方も、戦略的に見ていかなければならないでしょう。

―― 個人的には、1年を待たずに同じメーカーから似たようなコンセプトのモデルがどんどん出てくるのはよい傾向ではないと考えています。ケースを始めとする周辺機器市場のことを考えても、新機種が発売されたら1年間は市場で陳腐化しないようにすることが重要ですね。

加藤氏 私も同感ですね。半年ごとに目先が変わっていくというのもいいのですけれども、それが負担となるデメリットもあります。AndroidのOSや各種デバイスの進化のスピードと、市場側やお客様に求められるスピードのバランスはよく見ていかなければなりません。

―― これは毎年の新春インタビューで伺っているのですが、歴史的に見てドコモは1つのOSプラットフォームに依存しすぎないことをポリシーにしていました。しかしスマートフォン時代になって、ドコモは事実上のAndroid依存状況になっている。そうしますとAndroid vs. iOSのような市場トレンドの変化の影響を受けたり、OS側のリスクがキャリアとしてのドコモのリスクにもつながるような状況になってしまう。ドコモが事実上のAndroid依存状態にあることについて、加藤社長はどうお考えですか。

加藤氏 (スマートフォンの)黎明期・立ち上がり期においては、Androidに集中して投資していくという方針は間違っていなかったと思います。しかし、1つのOSプラットフォームに依存するリスクは承知していますので、我々のビジネスモデルを展開しやすいOSであれば新たに採用することは十分に考えられます。

 といいますか、それは「iPhoneをいれますか?」と聞いてますよね(笑)

―― ええ(笑) それでは、ずばり伺いましょうか。ドコモは今、iPhoneについてどう考えていますか。

加藤氏 (ドコモとAppleの)どちらにも条件がありますから、具体的にどうなるかは言えません。しかし、iPhoneは魅力的な端末だと思いますし、海外だけでなく日本でも(スマートフォン市場で)大きな実績を残しています。ドコモ側の立場では、ラインアップの中にiPhoneを持つという選択肢はあると考えています。

 また、ここで1つ申し上げたいのは、我々は「iPhoneは扱わない」とは言っていないということです。魅力的な端末ですし、私の頭の中にはいつも(iPhoneのことが)あります。

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